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元幼馴染に更に心を傷つけられました


 妙なめぐり合わせから学食で別クラスの美少女と一緒に食事をとる事となってしまった。学食には既に大勢の生徒が座っておりそれぞれ楽し気に談笑しながら食事をしている。

 その光景を見ていると嫌でも自分と天音がこの食堂で同じように仲良さげに過ごした記憶がぶり返してしまう。


 「はあ……」


 もう二度と戻ってこない日常に落胆していると隣の席に座っている愛美が話し掛けて来た。


 「ちょっと聞きたいんだけどさ、あんたっていつも学食で昼食を取っているの?」


 「え、まあそうだけど。もしくは購買かな…」


 「ふ~ん…そうなんだ……」


 質問の意図が分からず首を傾げる龍太。


 別に僕が学食だろうが購買だろうがどんな形で昼食を済ませているかなんて彼女には関係ないと思うけど……。


 そもそも未だにこの少女が何を考えて必要以上に自分に関わって来るのか龍太には分からなかった。自分と彼女はあくまで昨日の1件で少し関わった程度の関係のはずだ。


 もしかして助けてもらった事で恩義でも感じているのかな?


 そう考える龍太であるがすぐにその思考を破棄してしまう。

 これまでのやり取りでどちらかと言えば攻撃的な話し方をしてきた事を考慮するとその線は薄いだろう。だが口調は確かに攻撃的だが悪意は何故か感じられない。そもそも自分と言う存在を嫌悪しているならクラスまでやって来る理由もないはずだ。


 このままでは埒が明かないと思った龍太は思い切ってド直球に彼女が自分に対して何を求めているのか質問した。

 

 「えっとさ、月夜さんは僕をどうしたいの? どうして昨日会ったばかりの僕に関わろうとするの?」


 「そ…それは……あんたの事をもっと知りたいから……」


 食べ終わったうどんの入っていた丼の中を箸でくるくると回転させながら顔を俯かせて小さな声で彼女は何かを呟く。どうやら理由を話しているらしいが小声過ぎて聞き取れない。

 何を言っているのか聞き出そうと少し顔を近づけて耳を澄ませようとする。だが龍太の顔が近づくと愛美の顔は一瞬でゆでだこの様に真っ赤になる。


 「にゃにゃにゃ、いきなり顔を近づけんな!?」


 「ちょ、どこ行くの!?」


 「食べ終わったからもう行く! べ、別に顔を近づけられて照れている訳じゃないんだからね!!」


 まるで猫のような奇妙な声を出しながら彼女は自分のトレーを持つとそのまま小走りで席を離れていく。結局は何故自分に付きまとうのかその理由も分からないまま昼休みは終わってしまった。


 それから龍太は自分のクラスに戻ると何やら教室内が騒がしかった。

 視線を向けると元幼馴染の天音が他の女子と談笑している。話の内容を盗み聞く気はさらさらなかったが天音の声のボリュームが大きくて嫌でも耳に入ってしまった。


 その会話内容はまたしても龍太の心を抉る話題であった。


 「へえ~じゃあ天音にも彼氏できたんだ?」


 「うんそうなのよ。もうラブラブで毎日が幸せよ」


 どうやら天音がクラスの友人に自分に彼氏が出来た事を報告して自慢しているらしい。その事実を語る彼女は本当に生き生きした顔をしておりそれが龍太の胸を抉る。

 

 そして友人の1人がこちらを横目で見ながらこんな質問をぶつけた。


 「でも良かったの? 確か同じクラスの金木君って天音の幼馴染なんでしょ? 入学した最初は仲良くしていたのに他の人と交際しちゃって……」


 質問をした女子は龍太に気を使って小声にボリュームを抑えるが、それに対して天音はまるでわざと龍太に聞かせるかのようにむしろ声量を上げてこう答える。


 「ああいいのよ。アイツとは幼馴染の縁も切ったんだしもうただの同じクラスに居るモブなんだからさ」


 「へ、へ~…」


 これまで楽し気に談笑していた友人達もこの言い方には思う部分があるのか苦笑いを浮かべる。

 お人好しな性格の龍太はこのクラスで困っているクラスメイトに何度か手助けをしておりクラス内での女子人気は意外に高い方だ。だから天音のこの侮辱100パーセントの発言には乾いた笑い声を出す事しかできなかった。


 そして龍太は視線を逸らして絶対に天音の姿が視界に入らないようにする。


 もう縁を切られてまでこんな露骨に……どうしてあんな醜くなったんだよ天音と言う人間は……。


 心なしか胃が痛みだし吐き気まで感じ始めた。それでも午後の授業を何とか切り抜けて放課後まで耐え忍ぶとすぐに龍太は帰り支度を整えて教室を出ようとする。とにかく天音と同じ空間に居たくはなかった。


 「あっ、しまった!!」


 だが教室を出る直前に職員室にプリントの束を届けようとしていたクラス委員長が自分の後ろで倒れてしまう。その際に持っていたプリントを辺りに撒き散らしてしまう。


 「ああもう……」


 散らばったプリントを愚痴を吐きながら集めている姿を見て思わず龍太の足は止まってしまう。他の生徒は我関せずと言わんばかりに教室を出ていく。

 龍太としてもすぐにでも帰宅したい気持ちはあったが目に映ってしまった以上は放置もできず一緒にプリントを拾い集めて上げる。


 「あ、ありがとう」


 「別に気にしなくてもいいよ」


 「そ、そのさ金木君……変なこと聞くけどもしかして高華さんと喧嘩でもしたの?」


 「……さあ、どうだろうね……」


 先程のクラスでの天音の発言が気になったのかそんな質問をぶつけられた。どうしてこうなったのか知りたいのは僕の方だよ……。


 投げられた質問に対して適当に答えながら全てのプリントを拾い終えるとそのまま速足でクラスを出る龍太。

 だが今の一連の行動でクラスを出るタイミングが少し遅れたために彼はある二人組と玄関近くでまたしても遭遇してしまった。


 「おや誰かと思えば昨日の幼馴染君じゃん」


 「うわっ、折角これからデートで気分上がっていたのに嫌な顔見ちゃったわ」


 あろうことか今朝と同じくまたしても元幼馴染の天音とその彼氏である安藤と顔を合わせてしまったのだ。龍太の顔を見るや否や天音は髪をかき上げながら噛み付いてくる。


 「もうアンタとは幼馴染の縁は切ったはずよね? いつまで未練がましく引っ付いてくるつもりよ?」


 「別にただの偶然だよ。僕も今から帰るつもりだっただけ……」


 「はあ? 下手な言い訳しないでくれる? マジでそーゆー男って気持ち悪いんだけど」


 何でストーカーみたいに呼ばれなくちゃいけないんだよ。あれだけキミに酷い事をされて自分から関わろうなんて思う訳ないじゃないか。


 だが自分がここで何を言おうと天音は言い訳としか捉えてくれないだろう。それならば会話するだけ傷付くと思い二人の横を通り過ぎて行こうとすると彼氏である安藤がまたしても小馬鹿にしたような笑みを浮かべながら龍太に見せびらかすかのように天音といちゃつきだす。


 「なあ天音、今日ウチの親が帰って来るのが遅いから家に来いよ。そこで二人きりの時間を過ごそうぜ」


 完全に勝ち誇った笑みと共に幼馴染を奪い取ったマウントを取る安藤に思わず反応しそうになるが何とか堪えて学校を出ようとする。

 

 そんな彼の背中を見つめながら天音は軽蔑の眼を向けて鼻で笑う。


 「もう言い返す気にもなれないのかしら? はんっ典型的な〝負け犬〟ねアンタはさ」


 「ぐっ……」


 「仕方ないよ天音。このチビは幼馴染の君にすら見限られるほどに魅力の無い男なんだからさ」


 「そうよねぇ。まあ負け犬とこれ以上関わっても時間の無駄だしこんなヤツは放っておいてお家デートでもしよう♡」


 何年も共に笑い合った幼馴染に容赦のかけらもなく貶されとうとう彼の心は我慢の限界を迎え涙腺が緩んでしまう。

 どんどん熱くなる目頭を押さえてせめて涙だけは隠そうとしたその時だった。


 「ちょっといい加減にしなさいよアンタ達!!」


 二人の嘲笑をかき消すかのような少女の怒声が割って入り3人は一斉に声のする方向へと振り返る。


 「黙って聞いていれば彼に何の恨みがあってそんな卑しめるのよ!!」



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[気になる点] こんなクソ汙馴染みヤンテレじゃなく、メンヘラだろう
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