ツンデレ美少女が元幼馴染に最後のチャンスを与えます
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ヤンデレ→メンヘラ
「何よそれ! 大問題じゃない!!」
もうすぐ期末考査と言う事でテストにあまり自信の無い愛美は龍太から勉強を教えてもらっていた。ここ最近は学校終わりになれば自分の家で勉強会を開いているのだ。
だが苦手教科の勉強を見てもらいながら愛美は彼氏の異変を鋭敏に見抜いていた。そして訳を少々強引に聞き出してみると彼の話した内容は耳を疑うものだった。
「もし本当にあの女がそんな事をしているなら今すぐ学校に報告すべきよ!」
愛美が思わず声を荒げるのは無理もないことだった。
ここ最近どういう訳か龍太のノートが紛失し続けていた。この勉強会の最中にも龍太が紛失したノートを探している姿は彼女も見ている。だが実際は紛失ではなく盗難、あの裏切り者である元幼馴染が盗んでいたらしいのだ。同じクラスの人間が犯行現場を目撃している以上はもう確定だろう。
「まさかここまでの事をするなんて……」
とても物悲しそうな表情をしながら龍太は幼馴染の狂気すら感じられる行動を嘆いていた。だが愛美の視点から見れば意外、と言うまでの事でもなかった。そもそも幼馴染よりも安藤の様な男を望んで選ぶ女だ。あの男にしてこの女あり、正直いつかは何か逆恨みで行動を起こすのではないかと不安もあった。
「とにかく担任の教師に相談ね。あ、でも証拠はないから信じてくれるかしら……」
とにかく恋人としてもこの件は無視できない。きっちりと裁きを与えてやろうと思っていたがここで龍太が予想外の事を言い出したのだ。
「いや待って愛美。その…教師や学校側には話さないでほしいんだ……」
「……どうして?」
「……僕としてはこの問題を解決する気はあるよ。でも、僕は何も彼女の人生を壊してまで解決しようとまでは思えないんだ」
「はぁ……私としてはアイツはもう救いがない様に見えるわ。いいかしら龍太、いくら過去に仲良くしていたとしても大事なのは〝今〟のはずよ。昔いくら笑い合っていたとしても今は苦しめられているなら裁きは与えるべきじゃないかしら?」
そう説得をする愛美に対しても龍太は悲しそうに目線を下げる。
ほんと、いくら何でも優し過ぎるわよ。恋人の私が心配するほどに……。
もう交際してそれなりの時間が経過しているが故に龍太がこう口にする事も内心では予想できた。いくらもう縁を切ったと言ってもやはり彼の中ではかつての優しかった幼馴染の姿が今でも心の中に在るのだろう。だから彼女の人生を破滅までさせたくないと思いとどまってしまう。
こんな天邪鬼な私の彼氏になるぐらいだからね。でもやはりこのまま放置はできないわ。
そりゃ自分だって面白半分で相手に破滅的な処罰を与えたいわけではない。だがここで何かしら制裁を加えなければあの高華天音は間違いなく今後も龍太を苦しめるだろう。そんな未来が容易に予測できるにも関わらず楽観的にはなれない。
納得のいかないと言う表情を向ける愛美に対して龍太は少し焦り気味でこう返して来た。
「も、もちろんこのまま見て見ぬふりなんてしないよ。とにかくこうなった以上はもう一度天音と話をしてみようと思うんだ」
思い返してみればもう退院以降は一度も会話していない。これを機に一度互いに腹を割って話をすべきだと考えていたが愛美はそんな龍太の温情あり過ぎる判断に生ぬるいと告げる。
「ただ話をしただけでは何も変わらないわよ。ここまでの大胆な行動を取るヤツが軽い説教だけで大人しくなると思う?」
そう言われてしまえば返す言葉もない。だが学校の人間にこの事実を知られた天音が追い詰められる姿を想像してしまうとやはり胸が痛む。
だが愛美は龍太の事を考えたうえであえてキツイ言葉をぶつけた。
「下手な優しさはかえって相手を歪めるだけよ。駄目な事をしたら叱られる、そんな事は小学生でも理解している事よ。でも叱られなければ、ペナルティがなければその人間は際限なくどこまでも腐っていくわ。あなたの幼馴染を止めるためにもここは心を鬼にしなさい龍太」
「それしか……ないのかな……」
やはり縁切りしたとは言え幼馴染の人生に傷を付けたくないのか龍太はなおも躊躇いを見せる。
「……分かったわ。なら龍太がそこまで渋るのなら最後に一度だけあの女にチャンスを与えても良いわ。ただしその最後の慈悲を与えられたにも関わらず一向に反省の色が無ければもうしかるべき処断をさせてもらうわ」
「ど、どうするの……」
愛美の口から出て来た〝処断〟と言う不穏なワードに少し不安気な顔をしながら龍太はどうするのか尋ねる。
「明日、私が高華天音と二人だけで腹を割って話し合ってみるわ。それであの女が今後龍太の生活を脅かさないと誓うなら私も思いとどまる。でも、この期に及んでもまだ反省がないのならもう……」
そう口にする愛美の目はまるで刃物の様に鋭く尖っていた。
そしてその翌日に愛美は学校の屋上へと天音を呼び出し最後の話し合いの場を設けたのだった。