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ツンデレ美少女が現実を教えました


 思わぬ乱入者のせいで一波乱ありはしたが自分の手作り弁当は龍太にはとても大絶賛だった。自分の丹精込めて作った料理が『美味しい』と言われるたびに幸せを噛み締められて愛美にとっては幸福な時間を過ごせた。

 しかもこれから先も自分が毎日お弁当を作ってあげると彼に約束している。つまりはあの素敵な時間をこれから先何度も繰り返せると思うと表情筋も喜びで緩んでしまう。


 ふふふ、それにあの場に安藤のヤツがやって来てくれた事も今にして思えば丁度良かったかもしれないわね。


 普段であれば顔を合わせる事も億劫に感じる男ではあるが結果的には自分はもう〝金木龍太の彼女〟だと釘を刺す事ができた。これで今後は今までの様に気安く自分に声掛けをしてくる事もないだろうと思っていた。


 それから午後の授業を終えると愛美は急いで龍太の居るクラスへと向かおうとする。

 だがその行動を阻むかの様に安藤が性懲りもなく声を掛けて来たのだ。


 「な、なあ愛美。少し話があるんだが…」


 「……なに?」


 自分が既に他の人物の恋人である事実を知っているにも関わらず未だ馴れ馴れしく接してくる安藤にもう愛美は不愉快な感情を隠すことなく表情に堂々と出す。


 何で昼休みにもう私は龍太の彼女だって教えてやったのにコイツはこうも気安いかなぁ? そもそも仲が良い訳でもないのに名前呼びする事自体ハッキリ言って虫唾が走るのよ。少しは私の態度で察しなさいよね。


 このまま無視して行こうかとも考えたが下手に揉めるとより事態が面倒な方向に拗らせかねない。だから不本意ながら話しぐらいは聞いてやろうと思い足を止める。


 「それで、話って何?」


 「その、ここじゃなんだし少し屋上に来てくれないか?」


 最初は話ぐらいならば聞いてあげようと考えていた愛美であったがこの発言で警戒心が最大値まで上昇した。


 何でわざわざ人の居ない場所に誘導しようとする? 他の生徒には聞かれては不味い話でもするつもりなのか? 何より普段の素行を考慮するとこの男と二人きりになるなど薄気味悪い。


 「私この後は彼氏との用事があるから話ならここでしてくれない?」


 身の危険性を感じた愛美は未だに数名のクラスメイトが残っている教室内で話をするように促す。その反抗的な態度が癇に障ったのか安藤が声を荒げ始める。


 「別に屋上まで付き合ってくれるぐらいいいだろうが! あんなチビなんて少し待たせておけばいいんだよ!!」


 愛美の口から〝彼氏〟と言うワードが出てきて露骨に安藤は苛立ち始める。


 思いのほか大きな声を出してしまったために残っているクラスメイト達が何事かと怪訝な視線を向けて来る。だが冷静さを欠いている安藤は周りの目など気にする余裕もなく愛美を睨みつける。

 怒りの灯った瞳を向けられる愛美だが、自分の恋人を侮辱する発言をされた彼女の方こそ目の前の男にカチンと来た。


 もういい加減にこの男の勘違いを訂正させてやろう。


 「ねえ、もうハッキリ言うけど私はアンタなんかに微塵も興味ないから」


 今までは適当に受け流していたがもう愛美としてもこれ以上は我慢の限界であった。

 毎日毎日クラスに入る度に目の前の男から求めても居ないアプローチを受け、更には恋人が居ると言う事実を知りながらも寄生虫のように自分にへばり付こうとしてくる。何より気に入らないのはこの男だって恋人が居る立場でありながらその恋人よりも自分を優先しようとする根性が気に入らない。


 「いつもいつも私の気を引こうと必死みたいだけど私にとってアンタはただのクラスメイトなの。そもそも彼女が居る癖にどうして私に必要以上に関わろうとするの? 別にアンタの恋人を庇う訳じゃないけどアンタを心から好きでいてくれるあの高華って娘に申し訳ないと思わないの? あまり私にちょっかいかけていると変な噂が立つかもしれないけどそれでいいの?」


 「うぐっ…」


 物覚えの悪い子供に説教するかの様な物言いをされてイラつく安藤だが結局は何も言えなくなる。何故なら自分にぶつけられている言葉が全て正論だと頭では理解しているからだ。


 ひとしきり溜まっていた不満を吐露し終えると愛美はツインテールの毛先を指でクルクルと回しながらトドメの一撃を送る。


 「悪いけどもう私の心は金木龍太と言う人の物なの。だから今後はあくまで〝ただのクラスメイト〟として距離を弁えて頂戴ね。もし今後もまだ無遠慮に接してくるならあんたの彼女さんにこのことを報告させてもらうわよ?」


 自分の言いたい事を全て言い終えるともう安藤には見向きもしないで彼女はクラスを出ていく。


 どれだけ求めても手に入らないその背中を無言で見つめる安藤。だがその瞳にはもう自分の手には届かないと言う挫折の色は見えず、むしろより血走った目で肉食の獣の様にその背中を睨みつけていたのだった。

 

 「俺は絶対に諦めねぇぞ。お前は俺の物になるべきなんだよ……!!」


 まるで地獄の底から発せられるかのような低い声で彼はそう独り小さな声で呟く。

 

 あんな平凡なモブ男にあの極上な女を渡してたまるか。くそっ、こんな事態になるなら天音のヤツなんて口説いてなかったってのによ……!!


 そこまで思考が行くと彼の中に月夜愛美を我が物に出来るかもしれない妙案が思いつく。


 そうだ……天音はあの金木とは幼馴染だった女だ。だったらその部分を上手く利用すれば……。


 彼の脳内で繰り出される計算、そして1つの策。それは完全に人の道から外れた外道の所業としか言いようがないものであった。


 そして後日実行に移すこの策によって彼は愚かなことに自分の首を更に絞める事となる。



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