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ツンデレ美少女に慰められました


 「さーて姉ちゃんは無事に上手くいったのかねぇ……」


 中学校から下校した月夜徹はリビングのソファに寝ころびながら果たして姉は件の金木と言う少年にきちんとアプローチできていたか心配していた。

 天邪鬼で面倒な性格で喧嘩も何度もする仲ではあるが実の姉の幸せはやはり願いたいものだ。


 「でもなぁ…あの性格じゃあなぁ……」


 目をつぶれば瞼の裏には姉がいつものツンデレ属性を爆発させて顔の見えない金木君とやらを困らせている光景が容易に浮かぶ。


 そんな姉の失敗する姿をイメージしていると家の玄関の扉が開く音が聴こえてきた。


 「おっ、じゃじゃ馬お姉様がご帰宅したぞ」


 一応は相談を乗った身としては結果は知りたいものだ。例の少年にぶつかった結果は上々だったのか尋ねてみようとリビングを出て玄関に出向くとそこには予想外の光景が飛び込んで来た。


 「あらあんたももう帰って来ていたの?」


 帰宅して玄関に立っていたのは自分の天邪鬼な姉である愛美と――


 「お、お邪魔します……」


 黒髪で童顔気味の少年がお辞儀をしながら姉の後ろに立っていたのだ。


 「えーっと…そちらは…?」


 初対面ではあるが徹にはあの少年が恐らくは例の金木龍太なのだと瞬時に悟ってはいた。


 「そ、その…私の友達みたいなものよ。ほら昨日話していた……」


 「と…友達…その、金木龍太です」


 初々しさを感じさせる雰囲気を纏わせながらペコリと頭を下げる龍太。

 案の定あの少年が金木龍太だったみたいだ。ただ姉が『友達』と言う紹介をした際に少しあの少年が驚いた顔はしていたが。


 とゆーかウチの姉貴が連れて来る男性なんてそれ以外に考えられねぇし。家族を除いて男を一度たりとも家に上げた事のないあの姉が連れて来る男性なんて思い当たる対象も限られてくるわ。でも驚きはしたな。まさかあの姉ちゃんが1日でここまで男性に対して距離を縮められるとはな。てゆーかこれってもしかして……。


 「えーっと金木さん? もしかしてもう姉ちゃんと交際してます?」


 「ええっ!?」


 「この馬鹿は何をトチ狂った発言をしてんじゃい!!」


 流れるような感じで交際しているのかどうかを問われて龍太と愛美の二人は赤面する。

 まさかの質問に龍太の方は多少頬を染める程度だったが、愛美の方は恋愛相談をしていた事もあり紅葉の様に紅潮した顔面で弟の眼前まで一瞬で移動する。そのままそれ以上は何も喋らせまいと強烈なボディブローをぶち込んで力づくで黙らせる。


 「おぐっ……」


 「ちょ、弟さんに何しているの月夜さん!? 白目向いちゃってるんだけど!!」


 「大丈夫よこれぐらい。私の家ではこのバカが白目をむくなんて日常の一部なんだから」


 「いやでも月夜さん……」


 「……愛美」


 「え…あの……」


 「私のことは愛美って呼ぶように言ったでしょ。りょ、りょりょりょ龍太…君…」


 自分の名前を呼ぶ際に声を震わせながら熱っぽい瞳を向けてきて心臓がドクンと跳ねる。ましてや相手が自分を好きだと言ってくれた人物ならば心臓の高鳴りもひと際強くなる。


 とりあえず気絶した徹を廊下の端に寝かせると愛美はそのまま龍太を自分の部屋まで案内した。


 うわぁ…同年代の女の子の部屋に案内されちゃった。女の子の部屋に入るのなんて天音…いや〝高華さん〟の部屋以来だな……。


 遂に心の中までも天音を名前でなくさん付けの名字呼びになってしまっていた。どうやら自分の心が完全に彼女の元から離れて行った事を自覚すると何故だか頬からまたしても涙が一筋伝った。長年一緒に居た幼馴染との完全な別れに一抹の寂しさが駆け抜けていく。


 「ああもうまた泣いて。男の子なら泣かないの」


 そう言うと再び愛美はハンカチを取り出すと彼の頬を拭ってあげる。その優しさにまた涙が込み上げそうになる。


 駄目だ駄目だ。人の家にまで招かれて置いて泣いたりしたら……。


 零れ落ちる涙を拭いてあげながら愛美は彼を安心させるように優しく笑みを浮かべるとこう言った。


 「何のためにあんたを自宅まで連れて来たと思ってるの? 今のぐちゃぐちゃの心のあんたを、龍太を放っておけないからよ? 胸の中に溜まった苦しみを全部吐き出しなさい。人目のつかない私の部屋なら全部曝け出してもいいからさ」


 あなたの悲しみを受け止めて上げる、そう取れる言葉を掛けられて龍太の涙腺は完全に崩壊してしまった。そして気が付けばこれまで蓄積してきた悲しみを嗚咽と共に目の前の心優しき少女へと吐き出していた。


 「どうして、どうして僕がこんな目に遭わないといけないの! ぼ、僕が何を……うわぁぁぁぁ……」


 一度堰を切った感情は止まらず迷惑をかけると理解しながらも龍太は愛美へと縋りつきながら泣き続けた。

 そんなボロボロの彼の頭を撫でながら愛美はその悲しみを全て受け止めて上げる。


 「ほら全部吐き出しちゃいなさい。辛い時は泣いたっていいんだからさ」


 その優しさに対して龍太はまた更に大粒の涙を流したのだった。



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