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今だけは開花していない(この女主は花です)

作者: 新人

* * * * * * * * * * * * * * * *

約束、漢字の書く制約です。自分を拘束する、他人との約束です。つまり、約束は自分を縛るものなのです。——平沢悠です

* * * * * * * * * * * * * * * *

雨の夜、神社の中、古木の下です。一人の少女が空き地の真ん中にたたずんでいました。

雨が少女の肩をしとしとと濡らしました。

少女は黒々としたストレートの髪を頬に貼りつけ、厚い前髪で額を覆っていました。

うつむき加減で、純白のワンピースを着ていて、そのスカートが純潔な百合の花のように風に揺れています。

風がささやいて、少女の鬢を乱しました。下のスカートも吹き出しました。

少女は白い手で濡れた髪の毛を払いのけて、鬢を耳のうしろにかき上げました。

風に吹かれたスカートを手で覆って、その姿は可憐です。

少女は赤い唇を少し引き結び、私に何か言おうとしているようでしたが、終始ためらっていました。

勇気を出したのか、少女は少し顔を上げました。風が吹いて、雨音が彼女の声をかき消しました。結局、彼女の姿を見ることはできませんでした。

目を開けると、懐かしい寝室があり、耳には見慣れた蟬の声が聞こえてきました。

七年前、両親の仕事の都合でここから東京に引っ越してきました。大都会の喧騒の中で、私はとっくに故郷の記憶を失ってしまいました。

七年後、私は両親の仕事の都合で東京からここに引っ越してきました。見慣れているように見えても、あまり記憶や感触を呼び起こすことはできませんでした。

ただ、私がここに帰ってきてからというもの、私の夢には一人の神秘的な雨の少女が頻出するようになりました。どこかで見たことはあっても、彼女の顔ははっきりとは見えませんでした。

「あなたは、いったい私に何を言いたいのですか?」

私は重い身体をゆっくりと持ち上げ、ベッドから足を下ろしました。立ち上がるのが精一杯で、疲れた足取りで、ゆっくりと階段を降りていきました。私は簡単な朝食を作り、番茶を持って新聞を持って椅子に座りました。

閉鎖的とまではいかなくても、ここの生活は紋切り型です。新聞には今日の日付が書いてありますが、七年前の記事が載っています。

「行方不明の犯人はまだ捕まっていません。警察はパトロールを拡大しています。周辺の住民は……」

怖いですね、和気あいあいとしているように見える小さな町で誘拐事件が起きた。

朝食を食べて、私は学校に行って入学の関系手続きをします。

無責任な親は、仕事の都合で引っ越しが多く、自分は海外出張中です。子どもの頃から、すべてのことを一人でやらなくてはいけませんでした。

私が行くのは、この町で一番いい町立の中学校です。もちろん高校三年から転入してきたので、友達ができることに大きな期待はしていませんでした。

校門を出ると、もう昼近くになっていました。お昼の支度をしに帰ろうとしたとき、背中から小柄な人影が飛び出してきて、背中にぶつかりました。

「あ、すみません! >人<」

何かが背中を押して、奇妙な感触が伝わってきました。

やわらかくて、大きな豆大福を作るときにお餅をまな板に押しつけるような、不思議なストレスです。

「すみません、本当にすみません」

耳元でとてもいい声が聞こえてきました。私は一歩前によろけて振り返りました。目の前に小柄な少女がいました。

海菜のような短い巻き毛が栗色に染まり、香ばしい匂いがします。高校生の制服を着ていて、信じられないようなFでなければ、小学生のような印象の彼女は、幼い顔に申し訳なさそうな笑みを浮かべていました。

「ああ、大丈夫です」

人をじっと見ているのはなんだか失礼な気がして、私はすぐにそっぽを向いて、自分でも可笑しいほどのニヤニヤ笑いをしました。

「えっ、悠さんじゃないですか! ?お帰りなさいました!」

目の前の少女が顔に迫ってきて、さっきの感覚がお腹を直撃して下半身が震えました。これはまずいと思い、慌てて後ずさりしました。

「すみません、近くに貼りすぎました」

感触は消えず、逆に強く抱き締められ、目の前の大きなものは充実していました。気のせいか、少女は口元ににやにや笑いを浮かべました。

「千夏さんですか?」

そういえば、小さい頃、私の尻に隠れている小柄な少女がよくいて、人見知りで人と付き合えなかったものです。しかし、記憶の中の少女と、目の前の少女とは、まるでちがっているといっていいでしょう。

「悠さん、やっと思い出しましたね!良かった! ^_^」

少女(千夏)は叫んで飛び上がりました。私はとうとう少女の蹂躙に耐えられなくなり、頃合いを見計らって少女の「攻撃」をかわしました。

「ああ、千夏ちゃんも大きくなりましたね。泣く子供だったと思います」

私は身の安全のために彼女との距離を保とうとしました

「もう子供じゃないんですよ!それに、どこで大人になったんですか!悠さんって変態ですよ!」

千夏は両手で胸を隠しながら、にやにやしません。警察がそばにいたら、私を不審者だと思って連れていくでしょう。

「すみません、用事があるんで、お先に失礼します」

私は千夏の挑発に耐えられず、適当な口実を作ってその場を立ち去りました。彼女だけが後ろから叫んでいました。

私は息を切らしながら家に走って帰り、簡単な昼食を済ませ、ベッドに横になりました。

記憶の中の千夏は、今のように元気でいてはいけません。私の目の前でも、はにかむ物静かな少女という印象を受けました。

何年かの間に、どういうわけか彼女はこのように変化しました。

「私が黙っていたからですか・・・」

窓の外で蟬の声がしなくなり、窓からさわやかな風が吹きこんできました。外に出ることにしました。

夏の天気は変わりやすく、朝は強い日差しが照りつけていても、夕方には曇り空になることもあります。

夏の仮面にだまされた私は、山頂の神社まで行って、空が灰色にかすんでいることに気づきました。

神社の前の空き地に入ったとたん、雨が流れだしました。軒下まで小走りに出て、雨に濡れた上着を絞り、夕立が終わるのを待ちました。

顔を上げると、少女が立っていました。長い黒い髪を首の後ろにかけていました。雨に濡れた純白のワンピースなどお構いなしに、両手を握りしめて、私に何か言いたげでした。

「あの・・・です」

少女が雨に濡れて風邪をひいているのを見るのも忍びないので、私は彼女を誘って雨宿りをしようと思いました。

強い風が吹いて、そばの古い木の葉を散らしました。同時に、少女は早口で何か言いました。

風もやんだし、雨もやんでいます。暗かった空が急に明るくなって、「約束」という言葉だけが耳に留まりました。

空はますます明るくなり、強い光になっていく。私ははっと目を開けました。目の前には見慣れた寝室があり、耳元では相変わらず蟬の声がしていました。私はまだその少女の顔をよく見ることができませんでした。

「また、あの夢ですか・・・」

* * * * * * * * * * * *

いよいよ新学期になり、私もこの町立高校に入学することになりました。

「三年B組は・・・まず教室に・・・それから・・・・・・」です。

私は始業式の流れを覚えながら階段を上がり、教室の前まで来ました。

「ねえ、聞いてますか、お嬢さんがうちのクラスに来るんですよ」


「へえ、そうなんですか、あの花咲のお嬢さんですか」


「そうですね、もし・・・」


「静かにします」

教室の中から威圧的な声がして、ドアノブを置いた手が震えました。

恐る恐る教室のドアを開けると、クラス全員の視線が一斉に私に向けられました。

「あ、新しい子が来ました」

相変わらず威厳のある口ぶりですが、目の前にいるのはなかなかの美人です。

「後ろの窓際の席に行きますよ」


「あ、そうです」

上官を前にした兵士のように、私は硬直して席に着きました。

かばんを置くと、教室の中から熱い議論の声が聞こえてきました。

「本当に、お嬢さまがいらっしゃいました」


「やった、三年間、お嬢さまと同じクラスになれて、私も無駄はありません!」

入り口から一人の黒髪の少女が入って来て、長い濃い色の髪をきちんと耳もとで撫でつけて、澄んだ黒い目を冷たく前を見ています。

気のせいか、一瞬彼女の目が僕の上に止まり、怪訝そうな顔をしました。

「ねえ、そこに座っていてください」

先生は面倒臭そうに私の隣を指差しました。

少女は優雅な足取りで近づいてきて、私の隣に座りました。

「間違いありません!」

前の席にいた、髪のきりっとした男性が振り向いて、私になのか、隣の少女になのか、自分のことを紹介し始めました。

「私は凌辻空太。君たちは花が好きですか。私の一番好きな花はタンポポ。それの花言叶は「再会前の分離」、君たちの好きな花なら、花屋が来たよ!・̀ᴗ—✧」

少女は取り合いませんでした。

気まずさを和らげるために、私は礼儀として彼に応えました。

「あうん、行くの。⚆_⚆」

凌辻空太(りょうじくうた)と名乗る男子は、次々と違う話題をまくし立てます。少女は静かに座っていて、私はそれに相槌を打ちました。

こうして、私は今日から正式に町立中学の高校三年生になりました。

一人で家まで歩きながら、隣の少女の姿を思い出していました。

花咲彩羽と申しまして、ご近所の名家の花咲さんのご令嬢だそうです。

彼女はなぜか私に神秘的ななつかしい感じを与えました。彼女の視線に気づいてからは、なおさらそう感じました。

「ねえ、平沢さんですよね。花屋の空太です。悠と呼んでもいいですか?」

振り返ると、駆け寄ってきたのは汗だくの凌辻さんでした。

「え?ええ、いいですよ」


「ああ、よかった。空太くんって呼んでもらってもいいですよ。どうですか、花屋さんに来ませんか?」

ここに来たばかりで用事もないので、彼のやっている花屋に一緒に行ってみることにしました。

「凌辻」という看板の下に、小さくも小さくもない花屋がありました。花屋さんはあまり多くないというか、お客さんは私一人です。

「悠さんも花が好きなんですか?」


「あ・・・まあまあ。家には花が何本か置いてありますけど」


「私はですね・・・」

空太君は私の肩に手を置いてくれました。

「お花が好きですね。特に咲いているお花は、清らかな感じがします」

空太君は植え込みの中からデイジーの花束を手に取ると、突然私の方を向いて真剣な顔をしました。

「それでね、花咲って名前を聞いた時、『どんな子なんだろう』って思ったんです。今日見た時、花みたいにピュアでかわいい子だと確信したんです。きっと好きになったんです」

そんな話ができる友人として彼に映っていたのか、と驚きました。

「見ましたよ。花咲さん、注目してたんでしょう。だから、付き合ってるかどうか確認しに来たんです」

そして、はっとしました。

「いや、最近東京から帰ってきたんです。だから花咲さんも初めて会ったんです。つきあうなんて・・・」


「それはよかった。さっきも相づちを打ってくれて、いい協力をしてくれましたね。応援してくれるでしょう」

空太君はとても興奮していて、彼の頼みに耐えられなかったので、私はうなずきました。

花屋を出た後、空太君からもらったデイジーを抱えて家に帰りました。

テーブルの上の瓶に花を置き、私は2階に上がって横になりました。

「約束しましたよ」

少女の、神秘的で懐かしい声が聞こえてきました。

目の前が変わって、再び神社の中に戻りました。

相変わらずどんよりした空で、大雨が降っています。

白いワンピースを着た黒髪の少女が、雨の中、スカートを風に揺らしながら立っていました。少女は片手でスカートを押さえ、片手で髪の毛をなでていました。

少女の頬は雨とも涙ともつかないほど濡れて見えました。

「ええ、約束しました」

思わず言ってしまいました。

* * * * * * * * * * *

「おはようございます、悠さん!」

空太君が後ろから飛びかかってきて、片方の肩に腕を乗せてくれました。

入学式から一ヶ月以上経ちました。

この一ヶ月間、何とか空太君と花咲君の出会いのきっかけを作っていきたいと思います。

でも花咲さんは、どこか近寄りがたい感じがして、棘のあるバラのように、周りの人を拒絶しています。

「今日はどうしますか、このままお昼に誘えば?」


「いえ、今日は裏技があります。*^÷^*」

空太君の得意げな笑顔は、なぜか頼りない感じがします。

教室のドアを開けると、みんなが集まって、昨日のドラマや新作マンガの話で盛り上がっていました。

そのため、静かに、一人で本を読んでいる花咲さんが目立っていました。

「だから、こんなに可愛いんでしょう」私はそう思います。

「だから、こんなに可愛いんでしょう」

空太くんはそう言っていました。

「何ですか?」私は不思議に思いました。


「いつも静かに座っていて、他人と触れ合わないからこそ、人と違っていて、だからこそ可愛いんです」

「前にあなたは彼女を棘のあるバラのようだとおっしゃいましたが、私は違うと思います。正確には蓮の花のように、泥にまみれているのです」

私の返事を待たずに、空太君は教室に入ってきました。

「何をすべきかわからないときは、静観すべきです」誰かがそんなことを言っていたような気がします。

私は静かに席に着き、隣の花咲ちゃんをちらりと見ました。

エル・サルヴァドールは言いました「女の子を花に例えた最初の人は詩人に違いない」

花咲さんが本を読んでいる姿も可愛かったです。散りかけた髪の毛をかきまわしながら、小説のページをめくっていました。

そうです!図書館です!

空太君はこの時突然1枚のメモを私に渡しました。

「図書館まで誘ってください。お願いします」

なんですか、それが秘策ですか。

「あの・・・花咲さんですか?」

私は立ち上がり、花咲さんの同窓会に近づいていきました。緊張して何を言っていいかわかりません。

少女は下を向いたまま、私を無視していました。

ちらりと空太君を見ると、「もう一回やってみます」と言っている。

私は思い切ってもう一度尋ねました。

「すみません、花咲さん、ちょっといいですか?」

少女はゆっくりと顔を上げました。濃い瞳の中は澄んでいて、そこに私の姿が映っていました。

その微妙な角度のおかげで、制服越しに中の風景がかすかに見えます。

「どうしたんですか」

少女の優しい声は間違いなく私に致命的な一撃を与えました。

「白・・・白・・・白です!」

花咲さんは戸惑っていて、私も思わず後ろに下がってしまったのですが、くるくるとした感じがして、目の前が真っ暗になって意識がなくなってしまいました。

暗闇の中を、だれかが走っていました。一人ではなく、二人の子供のような足音でした。

何も見えず、慌ただしく足音がします。

ふと、神社に行きました。空には雲ひとつなく、雨が降る気配はありませんでした。

神社の周りは人でいっぱいです。今日は花の神事?どうして分かるんですか?

畜生、声も出せず、動くこともできず、まるで映像を観ているかのようでした。

浴衣を着た少女がひとりで泣いていました。

その少女は、私の夢によく出てくる、神秘的な雨の中の少女のようでした。

私は彼女を慰めようとしましたが、どうすることもできませんでした。

ところで、私達の約束、私達の約束は何ですか?

* * * * * * * * * * * *

目を開けると、真っ白な天井がありました。

「こちらですが・・・」

横を見ると、黒髪の少女が座っていました。深い目が私を見つめていて、泣いたばかりのようでした。

「やっと目が覚めたんですか!急に倒れたりして、びっくりしましたよ!苦労して背負って保健室まで来たんですよ。花咲ちゃんもびっくりして、わざわざ世話しに来たんですよ。大丈夫ですか!」

聞こえてきたのは空太君の声でした。

「早口です、空太さん・・・」

空太君の突然の言葉に、私はまだ花咲君を盗み見ていました。

「とにかく、無事でよかったです」

花咲さんがぽつりと口を挟んできました。私は少し疑問を感じました。でも、その様子を見ているとホッとします。

「そうだ、空太君。ごめんなさい、計画できなくて」

「それは、あとにします。とにかくここは休んでください。私は帰ります。花咲さん、ここで彼の面倒を見てあげてください」

保健室のドアが閉められました。

花咲君も一緒に去っていくのかと思いましたが、少女はただ静かに隣に座り続けました。

「あの・・・です」


「あの・・・です」

二人が同時に口を開くと、空気が一瞬静かになりました。

二人が目を合わせると、あたりには奇妙な空気が漂っていました。

私は自分の行動に気づき、すぐに横を向きました。

「あの、先に言ってください」

気まずい状況を打開するために、私は勇気を出して口を開きました。

「ええ。今日は何の用ですか?」

花咲さんは静かに言いました。

「ええと・・・放課後図書館に来てもいいですか?実は・・・」


「まだ何を考えているんですか。ゆっくり休んだほうがいいですよ。私はもう行きますから」

空太君に誘われたと言うより先に、花咲君はすっと立ち上がって保健室を出ていきました。

「失敗したんですか・・・ごめん、空太君!」

空太君に許しを請いました。

* * * * * * * * * * * *

教室に戻ると、生徒たちはもうカバンを片付けていました。

花咲さんの席にはもう誰もいなくて、空太君は座ったままです。

「あら、悠さんが来てた。今日はもう一緒に帰らないで、図書館に本を返しに行くように先生に言われたの。今日は先に帰って、ごめんなさい。」


「あの……分かりました。ちょうど今日はバイトがあるので、先に帰ります」

両親が不在のため、財政難を避けるため、数日前から近くのコンビニでアルバイトを始めました。

店長は40歳くらいのおじさんで、とても優しい人です。

アルバイトの条件もいいし、設備もいいし、お客さんも多いです。しかし、1つだけ欠点があります。

「あ、悠さん、来てました!」

耳元は美しい少女の声で、目の前も普通のかわいい少女のイメージです。しかし、少女の行為は私の命を脅かすものでした。

「店長、参りました」

私は少女の飛びつきを上手にかわし、店に入って店長に声をかけました。

「悠ちゃん、作業着に着替えてきますか。」

店長はにこやかにうなずきました。

「悠さん!どうして人を避けてるんですか!」

少女は自分が無視されていることに気づき、怒ったように口を尖らせました。

そう、この少女は桜井千夏です。私の幼なじみです。

千夏と私は同じ学校の高校二年生です。

この前の校門での出会い以来、私は彼女につきまとわれています。

私が財政難に陥っていると聞いて、千夏さんは私をコンビニでのアルバイトに紹介してくれました。

少女の甘える姿を見て、店長も私もどうすることもできませんでした。

私は仕方なく笑って、負けたように千夏に許しを乞いました。今

「まあまあ、一緒に仕事しませんか」


「はあ、そうです」

少女は陽気に答えました。

* * * * * * * * * * * *

もう一方は学校の図書館です

「お邪魔します」

図書館のドアがひらいて、頭よりも高い本をかかえたハンサムな少年がはいってきました。

「ほら、社会科学系の本は置いてあると思いますが・・・」

先生から与えられた任務に夢中になっていた少年は、ふと隅にいる黒髪の少女の後ろ姿に気づきました。

「花咲さん! ?こんな時間に、まだここにいるんですか?」

「どうしてあなたなんですか?」


「ですか?」

少年は、ふしぎそうな顔をしました。

黒髪の少女は立ち尽くしたまま、そっと振り返っていました。

少年は少女の顔に2行の涙をはっきり見ました。

* * * * * * * * * * * *

時間はどんどん過ぎていきます。

ここ数カ月、空太さんは花咲さんのことを口にしていません。

花咲さんも以前にも増して近寄りがたくなっていて、通りかかるたびに、うらめしい薔薇のような冷気を感じていました。

来週学校祭があって、私たちのクラスが舞台をやることになりました。

「いい機会です」

空太くんの肩をぽんと叩きました。

「これを機に、花咲さんと一緒に公演しませんか」


「いいですか?」

空太君が心配そうに聞きました。

「信じてください。私が応援しますから」

最終的に、舞台のテーマは今回のプロジェクトにもぴったりの「ロミオとジュリエット」に決まりました。

案の定、花咲さんもルックスの可愛らしさでヒロインに選ばれていたので、あとは主演男優のみになりました。

予想外だったのが、オーディションを重ねるうちに、僕と空太くんが主演男優候補に選ばれたことです。

「それは困りますね、ふん」

美人の先生はイライラしていました。

「ヒロインに決めてもらいますか」

瞬く間に、全員の視線が花咲さんに集まりました。空太君と私も緊張しながら結果を待っていました。

花咲君は言いのがれることもなく、ゆっくりと立ち上がり、ゆっくりと片腕を上げて、空太君と僕の間を指差しました。

思い切って立ち上がったのですが、選ぶ相手は決めませんでした。

「空太さん、選ばれておめでとうございます!」

口に出してしまったのは、空太君のチャンスをつかむためでもあったし、花咲君を気まずかせないためでもあったのです。

「空太君のためです」私は自分に言い聞かせました。

花咲君は冷静に腕を下ろし、ゆっくりと座りました。彼女はこの結果を黙認していたのでしょう。

ここ数日は空太の学校祭のリハーサルのため、私は一人でコンビニでアルバイトをしています。

一人で歩いていて、今日の自分の姿に疑問を感じました。

「どうして私がここまでやるんですか。」

「これでいいのか?」と自問自答しました。と聞いても、答えは返ってきません。

ふと、前方の見慣れない人の姿に目を奪われました。

夏だというのに、分厚いコートを着てきょろきょろしています。何かを取り繕っているようでしたが、その装いがいっそう目立って見えました。

店長と同い年くらいの、がっちりした体格の男です。ひげが濃くて、人のよさそうな顔をしていました。

男が急にこっちを向いたので、慌てて電柱の陰に身を隠しました。この男は危険だと直感しました。

男はすぐに立ち去り、私も電柱の陰からゆっくりと出てきました。

コンビニまで走り、店長に息を切らしながら、男のことを尋ねました。

知らない男だと店長は言いましたが、明らかに警戒するような目つきでした。

夕方家に帰ると、昼間のことは忘れて、すぐに眠りにつきました。

狭い場所にいました

あたりはまっくらで、一角だけ、かすかにかがやいていました。

黒髪の少女が頭を抱えてうずくまっていました。

「あなたですか?」

私はつぶやきました。

突然、ドアの開く音がして、あわただしい足音がしました。

そして、目の前の映像が終わります。

どこからか、男の罵声とともに、少女の泣き声が聞こえてきました。

しばらくすると、叫び声もしだいにやんで、静かになりました。

突然、一人の男の顔が目の前に現れました。おそろしい、いやな顔です。

間違いありません、今日の男です!

私はふと目が覚めて、冷や汗をかいてしまいました。

「いやな夢ですね」

* * * * * * * * * * * *

いよいよ学園祭の日です。人の少ない町ですが、学園祭の日になると、町の人たちが来てくれます。

「まずどこへ行きましょうか。これはおいしいでしょう」

空太君はアイスを片手に、炒め物を片手に話しかけてきました。

「口の中のものを食べてから話したほうがいいですよ」


「だって、幼なじみの応援に行くんでしょ?」


「それは・・・やめたほうがいいですよ」

昨日、千夏ちゃんが大興奮で私のところに来て、ぜひ来てほしいと強くお願いしました。

彼女たちのクラスはメイド喫茶を経営しているそうで、かわいいメイドがたくさんいるに違いありません。

でも、千夏ちゃんのメイド服姿を想像したら、きっと私をからかうでしょう。

「誰が行くんですか、馬鹿」

私はつぶやきました。

そうは言っても、私たちはなんとなく千夏ちゃんのクラスに行きました。

「ご主人様、お帰りなさいませ。どうぞ」

客を迎えるのはとてもかわいいメイド(後輩)で、甘い声はここに来てよかったと感じさせます。

「悠さん!来てくれました!いや、ご主人様、飲み物にするか、オムライスにするか、それとも・・・私にしますか?」

千夏はにやにや笑いを浮かべました。

「『QQ弾弾湿軟粘滑♡甘々愛液挟心黄金オムライス』を2部お願いします、サイダーを2本お願いします!」

空太君はそう言って、手にしたアイスを一口忘れません。

「っていうか、食べられるわけないでしょ。おなか壊しちゃうから」

でも、空太君が食べられることよりも、こんな難しい名前をすらすら話せることに驚きました。

「大丈夫です。大丈夫です」


「ご主人様!これだけでいいんですか」

放置されていた千夏が不機嫌になり、怒って叫びました。

「すみません、すみません、それでいいです」

オムライスはすぐにできました。金色のクレープにケチャップでハートの形が描かれています。

「普通のオムライスじゃないですか」

私はからかうように言いました。

「それは、まだ美味しい魔法をかけられていないからです」

そう言いながら千夏は、手をハートに見立ててオムライスに向かって恥ずかしい仕草を連発します。

「これでオムライスに私の味が残りますよ!」

恥ずかしいしぐさを無視して、スプーンでオムライスを一杯、ゆっくりと口に運び、よく咀嚼してみると、なめらかな卵とふっくらとしたご飯が口の中を転がるのがわかりました。

「普通のオムライスの味ですね」


「ねえ、私、こんな目に遭わなかったんだから、それでいいですよ」

空太君がうらやましそうに言いました。

「ふん、ご主人様、無視します」

千夏は地団駄を踏んでしまい、口をとがらせて走り去っていきました。

あっという間に午後になりました。

空太君は舞台の稽古に、千夏君はメイド喫茶の手伝いをすることになっていたので、私は一人で学園祭に出かけました。

地理的には辺鄙な町ですが、こちらの学園祭は東京にある私の学校の学園祭と同じくらい賑やかです。

一番人気があるのは二年生のお化け屋敷です。二階には将棋部の大会があります。カラオケまであります。

しかし、どんなに豊かな活動をしても、私の空虚な心を満たすことはできません。

私も主演男優を演じたいです。

「いや、空太君のためです!」

私は自分に言い聞かせました。

突然、同級生の一人が息を切らしながら私のところにやってきて、とても焦っている様子でした。

「やっと見つけました、平沢さん。体育館に来て。凌辻さんは出られないから、代わりに来て!」

急いで体育館に駆けつけました。空太君が青白い顔で支えられて出てきました。

「すいません、悠さん。午前中に食べ過ぎちゃった。あとはお願いします」

「大丈夫です。先に休んでください。あとは私に任せてください」

私は迷わずこの仕事を引き受けました。

候補だったので、主演男優のセリフも練習しました。

演技も半ばに差し掛かり、いよいよ主演男優の出番です。私は素早く衣装に着替え、深呼吸をしてステージに上がりました。

舞台に上がってみると、お客さんでいっぱいでした。

大きく息を吐いて、私は胸を張って花咲さんのところへ歩いていきました。

花咲さんは私を見て、びっくりしたようでした。でも彼女はそれで取り乱すことなく、自分の台詞を読み続けました。

「若者の愛は、心からではなく、目から生まれるものです」


「速すぎても遅すぎてもうまくいきません」


「あなたの千回のおやすみがなくても千回の心の傷です。」

「ロミオとジュリエット」はシェイクスピアの最も有名な悲劇の一つです。

演技中の花咲さんは、まるで野原に咲いた花のようにジュリエットを見事に演じました。

悲しんでいるときの表情、苦しんでいるときの表情は、とてもリアルに見えます。

棘のあるバラではありません。

いじらしいデイジーではありません。

高潔な蓮の花ばかりではありません。

まして近寄りがたい蔷薇ではありません。

彼女は更に坂の上で、唯一無二の1輪の清純な百合の花のようです!

そんな花咲さんのエモーショナルな演技を見ていると、私もロミオの役に引き込まれ、芝居に没入できました。

結局、ロミオとジュリエットはともに自殺し、ジュリエットがロミオに寄り添ったところで芝居が終わり、舞台は暗くなります。

「ずっと一緒にいますよ」

花咲さんの耳打ちが聞こえました。

緊張のせいなのか、それとも花咲さんの耳打ちに興奮したのかはわかりません。まるで感電したかのように、私の体は弱々しくなりました。

私、倒れました。

目の前に違う映像が点滅しています。

これが走馬灯ですか。私はあまり興奮して死ぬことはないでしょう。

切り替わった画面が突然、雨の夜の夢の中でストップモーションになりました。またあのか弱い少女が、風雨の中に立っています。

「ずっと一緒にいますよ」

少女は花咲君と同じ言葉を口にしました。

「ええ、約束しました」

返事をしたのは私ではありません。

その時、目の前に幼い男の子の姿が現れました。

まさに彼の幼い発言でした。

* * * * * * * * * * * *

最後にちょっとしたエピソードが出ましたが、その日の舞台は無事に終わりました。

その後も空太くんには散々文句を言われましたが、ありがたいことに、教えてくれたことがあります。

「空太さんです」

文句を言っている空太君を遮りました。

「どうしたんですか、真顔で」


「これまでの花咲さんのコメントも同感です。丘や上野の草むらにたった一本の百合の花が咲いているように、厳かで愛らしかった」

少し驚いた空太君を見て、私は息を吸い込みました。

「私は花咲さんのことが好きなんです。だから、協力はできません。でも、フェアプレーはしたいんです」


「無理です」

空太君は笑顔で首を振りました。

「もう太刀打ちできません。花咲さんの前で恥をかくなんて、のこのこ口説けません」

空太君は自嘲の笑みを浮かべました。

「でも、これだけ助けてもらったんですから、ちゃんとお返ししないと。私に助けさせてください」

空太くんは親指を立ててくれました。

「美しい花には、エスコートだけでなく、私のような鑑賞者も必要なんですよ」

「空太さん・・・です」

もう感働して言葉も出ませんが、ただただ空太君を見ています。

* * * * * * * * * * * *

数日後です。

「ウォーターパークの入場券が四枚あるんですけど、花咲さん、一緒に行きませんか!」

空太君が手にしたウォーターパークのチケットを振りながら、花咲君に言いました。

「ねえ、花咲さんを困らせないでください」

私は横から口をはさみました。

「あなたたちが一緒になるチャンスを作ってくれる、素晴らしい機会です」

空太君がこっそり言ってくれました。

学園祭から一週間以上経ちました。花咲さんは全部で10回以上話しかけてくれました。これまでの記録を破りました。

今空太君は私達が1人になるタイミングを探しています。

「悠さんも、小学生の妹を連れて行くんですよね、悠さん。」


「なんであんな奴を連れてきたんですか!」

私は不満そうに言いました。

「そんなこと言わないでよ。混んでるほうが楽しいでしょ」

空太君に引っ張られました。

「女子がいたほうが、花咲ちゃんも安心してついてきてくれますよ。そのときは千夏ちゃんを連れていって、一人の時間にしますから」

空太君の計画に感心した私は、花咲君を説得しました。

「そうです、花咲さん、一緒に来ませんか。」


「悠くんも一緒だったら・・・ですけど」


「え、ですか?」

花咲さんの独り言が聞き取れず、私は首をかしげました。

「ええ、楽しみにしています」

よかったですね。花咲さんが簡単にokしてくれるとは思わなかったです。

あとは千夏を誘うだけです。

アルバイト先のコンビニに着くまでの道中、あちこち見回していましたが、例の男の姿はありませんでした。

「悠さんです!」

私を見つけると、千夏は大声を上げて駆け寄ってきました。

今度は逃げようとして、少女の巨物に腹部を強打され、出血しかけたかもしれません。

「あの、千夏ちゃん。空太くんにウォーターパークに誘われたんですよ」


「うち、行きません」

ちいさな口をとがらせて、怒っているような千夏ちゃんが可愛らしかったです。しかし、少女の両腕は次第に強くなり、私は息苦しくなりました。

「私も行きます」


「じゃあ、考えてみます」


「あなたが行かなければ、チケットを他の人に渡します」


「あっ、冗談です。行きます」

少女はまるで過ちを犯したかのように、おとなしく手を離しました。

「じゃあ、明日一緒に行きませんか。」


「よかった!悠さん最高です!」

少女の笑顔を見て、私は仕方なく笑ってしまいました。

家に帰って、ベッドに横になるなり寝てしまいました。

雨の夜、神社の中、古木の下です。

涼しい夏の夜は夜風が吹いて、空は晴れていました。

都会の喧騒から遠く離れているので、夜の空はきらきらした星に覆われています。

黒髪の少女が私の目の前に立っていました。だんだん、彼女の顔が見えてきました。幸せそうに微笑んでいる顔ですよく知っているがよく知らない顔です

* * * * * * * * * * * *

今日は日曜日とあって、ここは人がとても多いです。

「遅くなってすみません」

空太君は息を切らしながら走ってきました。

「おい、待ってましたよ!」


「すみません、すみません、サプライズの準備に時間がかかって」


「頼りない先輩ですね」

千夏がからかうように言いました。

花咲さんも笑って黙っています。

やっと更衣室に入ることができたので、私は手早く水着に着替えて、入り口でみんなを待っていました。

空太君は「サプライズ」の準備をしていたので、少し時間がかかりました。

ふと、背筋が冷たくなりました。

きつい目が私を見つめています。私は恐怖を抑えながら、ゆっくりと背後を振り返りました。

角ばった眉の下には、深い目があって、右目には、おそろしい傷跡が走っています。

あのすさまじい目つきが、この目から、正式に発射されたのです。

いつもコンビニの前をうろついていた、あの男ではありませんか!

彼は少し離れたところに立っていました。相変らず変な格好をしていて、ここには似つかわしくありません。

「パチンです」

肩をぽんと叩かれて、私はさっと頭を下げて元に戻りました。

「何見てるんですか、悠さん。どっかの少女の水着に変態妄想してるんじゃないでしょうね」

目の前にはスーツ姿の千夏がいました。

ライトグレーのビキニがガーリーなラインを見事に演出しています。

栗色のショートヘアに少女の腹黒い性格で、千夏は夏の小悪魔のように私をからかって楽しんでいました。

「そんなことないですよ」


「悠くん、こんな人だとは思いませんでした!」

隣にいた花咲君も相槌を打ちました。

花咲さんはピンクのレースの水着の上に白い日焼け止めを着ています。まるでつぼみの花のように、はにかみながらも愛嬌があります。

「どうして花咲さんまで・・・ですか」

男のことなど忘れて、私は少女たちと談笑しました。

そこへ、空太君も出てきました。大きな水鉄砲をかまえて、ぼくたちにむかって撃ちつづけているのです。

これがサプライズですか?少女たちが楽しそうにしているのを見て、私もその仲間に加わりました。

「ウォータースライダーを試してみませんか?」

空太さんがアドバイスしました。

「いいですよ!悠さんと一緒に乗ります!」

子供の頃の千夏ちゃんは気が弱くて、私といる時にしか声を出せなかったんです。

このウォータースライダーはウォーターパークの目玉種目です。カップルは一緒に通ることでずっと一緒にいられるそうです。

「あ、そういえば、もっと大きなサプライズがありました。千夏ちゃん、一緒に取ってください」

ウォータースライダーの下まで来ると、空太は突然千夏に言いました。

完璧なアシストでした。自空太君に「いいね!」を押しました。

「でも・・・です」

何か言おうとした千夏くんを空太くんが引きずっていきます。

千夏ちゃんには申し訳ないですが、この機会を逃さないようにしたいです。

ウォータースライダーを上ってみると、地面からかなり離れていることに気づきました。

私はためらいました。

「あの、花咲さん、やめたほうがいいですよ」


「やってみたいです」

花咲さんは、乞うような目で私を見つめていました。

花咲さんのお願いに耐えかねて、私は引き受けました。

私たちは未成年ですから、二人で乗る必要があります。

私の膝の上に、花咲ちゃんがそっと座ってくれました。少女の重さはとても軽くて、繊細な触覚は人にとても心地良く感じさせます。

ウォータースライダーの入口に座って、私は初めて今の状況に気づきました。

後悔する間もなく、私たちは突き落とされました。

興奮をこらえながら、私は少女の腰に手をかけました。

いよいよ、我慢ができなくなりました。

「花咲さん、私・・・です!」


「彩羽って呼んでもいいですよ」

花咲さんはそう言うと、二人で一緒に滑り台を飛び出していきました。

ぶすりと音を立てて、二人は同時に水の中へ落ちました。涼しい清水が私の火照りを消しました。

「あっ!悠さん、駄々をこねて!私が先に遊びに行ってくれるわけないでしょ!」

そこへ千夏君と空太君がもっと大きな水鉄砲を抱えてやってきました。

空太君たちが管理人に叱られていると、水の中から花咲君が現れました。

「今日は楽しかったですよ、悠くん。」


「そうですか、花咲さん・・・」

花咲さんは、私にからかわれたようでした。

「そのまま名前で呼んでくれればいいんでしょ?」

楽しい日はいつも短いです。

家に帰ってからも、一人でニヤニヤして、「彩羽さんって呼んでもいいんですって」と繰り返していました。

今夜は涼しくて、夢がありません。

* * * * * * * * * * * *

「彩羽さん、お昼ご飯一緒に食べませんか?」


「彩羽さん、いつか図書館に行きませんか!」

私は変態のように彩羽さんの名前を連呼しました。

あの日以来、私と彩羽さんの関系はさらに向上しました。

「どこまで進んでいるんですか?どうですか、キスはしましたか?」

空太君は横から好奇心を持って聞きます。

「まだ・・・まだですよ。キスなんて、まだ早いでしょう」私は照れながら言いました。

「早くデートに誘えばいいですよ」


「しーっ、声を小さくして。やってみますよ」

彩羽さんを誘い出すって言ってましたけど、どこでデートしたらいいですか?

水族館も映画館もない、数少ないアトラクションです。

「どこに誘えばいいんですか?」空太さんに教えてもらいました。

「初デートなら『花橋公園』はどうですか?」

「花橋公園」は、私がアルバイトをしているコンビニの近くにあります。小さな公園ですが、何千何百という花々が咲いていて、デートにはもってこいです。

私は彩羽さんのそばに入りました。

「彩羽さん、明日暇ですか?一緒に「花橋公園」に花を見に行きましょう!」

まずい、まずい台詞です。

でも彩羽さんは待っていてくれて、とても喜んで承諾しました。

もうすぐ週末です。

「花橋公園」の入り口で待っていた彩羽さんを見つけました。今日の彩羽さんは白いワンピースを着て、黒い長い髪をかぶって、砂色の太陽の帽子をかぶって、とてもかわいいです。

「すみません、お待ちになりましたか?」


「いえ、私も今来たところです」

彩羽さんは白い指で髪の毛をいじっています。

二人は一緒に公園の花の海の中で歩いて、静かに、何も話しませんでした。

急にそばの植え込みの中から物音がしたので、そっと目をやりました。

そこに空太くんと千夏くんが隠れて覗いていたのです。ところで、二人はどうしたんですか。

それを無視して、私と彩羽さんは公園のベンチに座りました。

しばらく静かに座っていると、彩羽さんが突然言いました。「明後日の花神事、一緒に行きましょう。」

すると、先に彩羽さんが口を開きました。

「ええ、約束しました」私は答えました。

2人の目が集まって、彩羽さんは軽く目を閉じて、桜色の唇を前に送りました。

これはまさか、キスですか?

私もそのまま目を閉じました。唇をつきあわせていると、花の中から二人がとび出しました。

彩羽さんも私もびっくりして、顔を真っ赤にしてしまいました。

「あ、すみません。お邪魔しました」

空太君は急いで私たちに謝りました。

千夏も地面から立ちあがりました。何か言おうとしましたが、突然「あっ!」という声がして、私たちの目は花の中に焦点を合わせました。

見慣れたコートでした。トレンチコートの持ち主がじっとしているのは、死体に違いありません。しかも、あの男の死体です!

警察はすぐに現場を封鎖しました。

驚いている千夏くんを空太くんがなだめています。

彩羽さんは落ち着いています。彼女はそっと私の袖を引っ張りました。

「悠君、知ってる男です。」


「会ったんですか?」


「ええ、うちの運転手だったんです」

この事は彩羽学友に悪いことがあるかどうか分からなくて、私達はこの事を警察に知らせませんでした。

質問をした後、私たちは早く家に帰るように言われました。

他の二人と別れ、千夏ちゃんを店長のところまで送りました。店長に話しました。店長は何も言わず、千夏を部屋に入れました。

私もあまり立ち寄ることなく、さっさと家に帰りました。

その夜も夢を見ました。

夢の中には少女がいました

あれは何ですか。彩羽さんですか?

いや、少女のほうがもっと年下です。

少女は自分の家の運転手に誘拐されました。

誘拐犯は少女を神社の廃倉庫に閉じ込めました。

1人の少年がいたずらをして押し入ってきました・・・

次に、最初の雨の少女の夢です。

* * * * * * * * * * * *

目を覚ますと、なぜだかどぎまぎした。

不安な気持ちで学校に来ました。

彩羽さんの席はからっぽでした。

授業が始まるまで、彼女の姿はありませんでした。

病気ですか、それとも?嫌な予感がしました。

正午になると、学校に警官が来ました。また先生と話した後、私と空太君を呼び出しました。

教室は一瞬ざわつきました。先生は教壇の上で面倒臭そうに規律を維持しています。

彩羽さんは本当に行方不明です!少し質問をされ、私は力なく座り込んでしまいました。

「どうしてですか、明日一緒に行くって約束したのに……」

私はぼんやりと独り言を言いました。

「心配しないでください。警察は必ず花咲さんを見つけますから」

空太君が慰めてくれました。

翌日になっても彩羽さんからの連絡はありませんでした。

今日は約束の日なのに、一緒に神社に行くことになっていたのですが・・・

そうです、神社!

まさかと思って、行ってみることにしました。

「空太くん、もう一つお願いします」

「何ですか?」

空太君に援護されて、学校を脱出しました。

「花咲ちゃん、どうか無事に連れて帰ってきますよ!」

空太君から最後に言われた言葉です。

空はしとしとと小雨が降り始めて、すべては7年前と同じです!

あれは夢ではなかったのだと、やっと思い出しました。七年前の誘拐事件、拉致されたのは彩羽さんです。

遊びに行って神社の倉庫に入ったら、犯行現場に出くわしました。

その時、犯人の目を盗んで、ガラスの破片で一人の目を切ったんです。あのコートを着た男です!

彩羽さんを連れて逃げ出した後、彼女と約束しました。再会します。

でもその日、私は約束を守りませんでした。両親の仕事の都合で東京に引っ越しました。

だから、今度こそ、約束を守ります。

山頂の神社まではずぶ濡れでした。倉庫のドアを思い切り開けると、彩羽さんが縛られていました。

目の前にいたのは、いつもの優しい店長でした。

「待ってましたよ、ガキ」

店長は吐き捨てるように言いました。いつものやさしさがなくなってしまいました。

「七年前、嬢の病気を治すために誘拐しました」

店長はゆっくりと彩羽さんの中に入っていきました。

「身代金が手に入り次第、解放する予定でした」

店長は彩羽さんのあごをつまんであげました。

「でも、あなたにやられました。嬢も死にました!」

彩羽さんは苦しそうな顔をしていました。

「でも、千夏に会いました。彼女の明るさに救われました。でも、私はどうしてもあなたを許せません」

そういって店長は手を離し、うしろからナイフをとり出しました。

「今日も、あのときの私の気持ちを味わってもらいます!」

店長は彩羽さんにナイフを向けました。

「いやです」私は駆け寄り、店長に体当たりしました。

ナイフが落ちていたので、スピードを上げて拾い上げ、店長に狙いをつけました。

「いやです」

彩羽さんの声です。

でもごめんなさい、私たちの約束を果たせないかもしれません。

店長がこちらに向かって突進してきたので、わたしも正面から走りました。

結局、私は地面に叩きつけられ、店長の心臓にナイフが突き刺さってしまいました。

横を見ると、彩羽さんの目尻から涙がこぼれました。

そのとき、警官がドアをやぶってはいってきました。立ちあがるなり、床に押しつけられました。

誤殺の罪で告訴されました。護送される直前、彩羽さんがやってきました。

「すみません、約束できなくて」

「あなたが私のそばにいても、空の果てにいても、世界の片隅にあなたがいると思うと、世界もやさしくなったような気がします。私はあなたの帰りを待っています。」

すぐにパトカーで連れて行かれました。

* * * * * * * * * * * *

誘拐事件から数ヶ月が過ぎても、少女は少年との約束を忘れません。

ある日、少女のもとに少年から手紙が届きました。

「花の咲く季節は過ぎ去ったでしょう。でも、今だけは花の咲かないものがあると信じています。約束は必ず葉います」。

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