行ってやるよ
掲載日:2023/01/08
目の前に男がいる。
どうしても僕を連れて帰りたいらしい。
そりゃあ、囚われの身としてはここから出られるのはありがたいけど。
うーん。
でもさ、困惑するのが当たり前というものでしょ?
初めて会う、そこそこの年の男の執念はきびしいよ。
だから、僕は拒否をしたんだけどね。
右手を払い除け、頭を振り、体重をかけ。
何回もイヤだって。
なのに、男は楽しそうに笑ってるんだ。
「大丈夫、すぐに落ちると思ってないから」とか言うし、
「3回は様子見でいいよ」とか言ってるし。
どういうこと?
しかもだよ?
「キミの里親、ちゃんと探すからね」ってさ。
僕を連れて帰りたいわりに、すぐ誰かに渡すなんてね。
まぁ、可愛い子が引き取ってくれるならいいけど。
なんか、だんだんと行ってもいいかなって思えてきた。
この男も、悪い奴じゃないのかもって。
真剣な目だったりするし、めちゃくちゃ楽しそうだし?
後から来た友達も、似たり寄ったりの笑顔だし?
「えっ、マジ? すげー!」って、友達のテンション上がってるよ。
はぁ……わかったよ。
行ってやるよ。
悪いね、囚われのみんな。
先に行くよ。
「うしっ!」
声を抑えた男のガッツポーズとともに。
クレーンで吊られた僕は穴に落ちて、男の腕の中へ収まった。
「ウサギのぬいぐるみゲット〜」




