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引きこもり王女の恋もよう  作者: hazuki.mikado
episode4そして貴方と
96/97

96話 有言実行ってこういう事♡

 「ち、ちちちち父上ッ?」


 「チチばっかり言いやがって、そんなにおっぱいが好きなのか?」



 真剣な顔で顎を擦りながら息子の顔を覗き込むグエン。



 「チチッ!? 違いますッ!」



 カイル皇太子だけが、別に驚いた訳では無い。


 周りにいた重鎮もティリアも目のサイズは3倍位には見開いている。



 「お前が帰ってきたら即帝位は譲るつもりでいたんだ。俺が別に居なくても帝国はやっていける位にはもう整ってるだろ? 実際俺はずっと帝都には居ないことが多いからな」



 ガハハハと笑う皇帝陛下を全員が見つめる中、ガッチリ腰を抑えられているシンシアだけが、隣でニコニコ笑っている。



 「シ、シンシア様はこの事をご存知だったので?」



 思わずシンシアに声をかけるのは、シャルム宰相である。



 「? いいえ。全く。今陛下が仰ったのを聞いたばかりですわ?」


 「だよな~ シンディ♡」



 ヘラリと笑いながらシンシアの旋毛にキスを落とす色男。



 「陛下ぁ・・・」



 ニヤリと笑うグエンは重鎮達の顔を見回す。



 「シンディは、()と結婚してくれるんだ。()()()()()()()()と結婚すんじゃねえよ。な?」


 「フフ、そうですわ。陛下が皇帝だろうが、下男だろうが関係ありませんの。私が愛した方はグエン様そのものですもの」



 彼女はそう言って花の咲くような微笑みを浮かべてグエンの冬の空のような不思議な虹彩を湛えた瞳を覗き込んだ。



 「合格だシンディ」



 彼はシンシアの手の甲にキスを落とした・・・




××××××××××




 「ええええええぇえっ!! 父上が豪華客船にシンシア殿を拉致して逃げたッ?」



 執務室で叫んだのは、ゲオルグ・トリステスである。



 「はあ、やられました・・・」



 額の汗を拭うのは、シャルム宰相である。




××××××××××




 いつの間にやら豪華客船の切符を入手していたグエンは止める重鎮や皇太子を躱してシンシアを横抱きにすると豪華客船のタラップをその長い脚で駆け上がる。


 外国の豪華客船は切符を渡して乗り込んでしまえば、もうそこは帝国ではなく外国だ。


 残された者達には手出し出来ないのである。



 「じゃあな~、アトヨロ~!!」



 出港の合図である汽笛が鳴る中、グエンとシンシアがならんで手を振った。



 残された帝国の重鎮達と皇太子夫妻も呆然としている。



 ただ1人皇太子カイルの護衛であるディーン・テレッセだけが



 「やっぱり陛下、かっけー」



 と悶えていたらしい・・・



××××××××××



 グエンは転移門に現れた彼女を見た時にこの人だと思った。


 それは思考じゃなくて本能だった。


 見たこともないような輝きを纏って現れた彼女は、まるで乾き切っていた大地に恵みの雨がもたらされた時の様な―― 自分の乾いていた心に、慈愛の恵みがもたらされたような錯覚を起こすような存在で。


 ずっと自分が欲していた感情が自分の中にまだ燻っていたのだということを思い出させたのだ。



 ――人を好きになり、莫迦みたいにその人だけに夢中になってその人のこと以外は何も必要ないと思える位に溺れてみたい。そして出来れば相手にも自分に溺れて欲しい――







 帝国を支える為だけに走り続けてきた昔の自分が置き忘れて来たモノ。


 自分の子供達を見ていて羨ましいとも愚かだとも思えるような一途さ―― 




 自分は彼女よりずっと年上で。


 自信なんかは全然無くて。


 理由はホントに後から考えて取り繕ったようなもので、計画性なんか皆無で。


 だからこそ自分が皇帝という身分のまま愛する彼女を妻に迎える事が、彼女の身の危険に繋がるような気がして。


 グエンは嫌だったのである。



 だったら彼女を伴って1回逃げてみようか? と彼は思ったのだ。



 折しも長男である皇太子が新婚旅行から帰ってくる事になっている日が近づいて来ていて、その船は一時この国の港に留まった後、すぐに出港してトリステスの港に帰ってくるのは1年後だ。



 ――だからある意味賭けだったのだ。



 彼女が乗るのを拒み帝国妃としてトリステスに残ろうとするのか。



 それとも我儘な自分の申し出を受け入れて共に船に乗るのか――


 だけどそんな馬鹿げた行動をしようとする自分に彼女は何の衒い(てらい)もなく微笑んで、差し出した手を取ってくれた。



 それはある意味自分という男()()を受け入れて欲しいという、彼女に対するグエンの我儘な希望が叶えられた瞬間だったのである。



 

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