95話 港
トリステス帝国は内陸にあるハイドランジア王国とは違い、外海に面していて大きな港を幾つも有している。
その中でも一際大きな港は専ら外国との行き来をする大型船のためのもので帝国のモノだけでなく外国の船舶も停泊していたりするので、見ているだけでも面白い場所でもある。
本日シンシア王女とイケオジ陛下は共に皇太子夫妻の出迎えの為にイチャコラしながら、帝国の紋章入りの黒塗りの馬車でやって来た。
お供は大臣達だが、別の馬車でやって来ているのでこの場にはいない。
陛下の膝上で顔を真っ赤にしたままで恥じらうシンシアの頬をナデナデしながら、やに下がる陛下の元に、知らせがやってきて馬車のドアをノックする。
「陛下、皇太子ご夫妻の乗った客船が入港しました」
「おう、接岸してタラップが降りたらもう1回知らせてくれ。それまでここで待機してっからな」
「ハッ!」
その会話を聞いてシンシアが思案顔になり
「大臣達がもう並んでいるのでは無いでしょうか? 私共も一緒に並んだほうが良いのでは・・・?」
「シンディは真面目だなぁ、そんなんじゃあ疲れちまうぞ。大型船は接岸までの時間がやたら掛かる上に、タラップが岸に降ろされても直ぐに客は降りてこれない。だから、少し時間を置いたほうがいいんだ」
ニコニコご機嫌でシンシア王女の旋毛にキスを落とす陛下は色気ダダ漏れである。
――困ったわ、こんなに陛下が素敵だと私の方の心臓が持たないかも・・・
まぁ、シンシアの方も大概である。
目には見えないが足元で白い猫が大欠伸をしているのを二人は、知らない・・・
×××××××××××
「お待たせしました父上、只今戻りました」
船のタラップから妻を伴い降りてきたカイル皇太子殿下。
浅黒い肌にチョコレートブラウンの短く切り詰めた髪に長くさらりとした前髪。
サファイアブルーの瞳だけが違っているが、間違いなく血族だなと思わせる風貌である。
その隣にいるのがハイドランジア王国のティーダ―侯爵家から嫁いできた妻であるティリア・トリステス。シンシアの弟である王太子の婚約者候補でもあった為、シンシアも面識はある女性だ。
「よう、お帰り。新婚旅行は楽しかったか?」
「はい、長い間政務をお任せして申し訳ありませんでした」
「うーん、そりゃ大臣とゲオルグに言っとけ。俺は大した事仕手ねえからな」
シンシアの腰にしっかりガッチリ手を回したまま豪快に笑う皇帝陛下。
「お、そうだ。この女性が俺の嫁。シンシア王女な。ティリア嬢は面識もあるだろうから。紹介しなくてもいいかな?」
声を掛けられたティリアは優雅に膝を折りながら
「もちろんですわ。お久しぶりですシンシア様」
「ティリア様も、お元気そうで何よりですわ」
二人でにこやかに笑い合う横で
「あ、そうそうカイル、帰ったばっかでワリイんだが俺、皇帝辞めっから宜しくなッ!」
イケオジが爆弾を投下した・・・




