83話 王城の最期 ✢
「ね~メルちゃん、こんなもんでどうかな~?」
箒に乗って空に浮かんだストリベリーブロンドの少女が1人―― 大聖女、ミリアンヌ・ルクスその人である。
そのすぐ横の空中に銀色に輝く魔法陣を展開し、その上にお行儀良くお座りをする白猫は聖獣メルヘンである。
「どうなのでしょう? ネズミや●キブリといった昆虫類などは駆除対象とされるものですので、助けなくても良かったのでは? と、吾輩は推察いたしますが・・・」
王都グラークから少し離れた場所にある小高い丘の上、王城にいたであろうジャージル国王を始め彼の妃や側妃、王子達といった王族だけでなく、王宮の官史や侍従、侍女、メイドや料理番や厩番。衛兵や牢屋番まで。
そして王城に訪れていた貴族達も同様にこの場に転移してきていたが、その中には例のトリステスの貴族母娘の姿もあった。
ありとあらゆる人間がそこには集められており、自分たちがさっきまでいた筈の王城が崩れ去って行く様子を全員がポカンとして眺めていた。
その足元に何故か右往左往するネズミや虫などもいたが、彼らはサッサと草むらに走り去っていく。
厩で餌を食んでいた馬たちも突然の移動に驚き耳を不安そうに動かしては、忙しなく首を振っている。
「まあ、彼らは人間と違い流石に順応力が高いので、居なくなりましたね」
「そうだね。じゃあ、いっか」
「そろそろお戻りになりませんと、シンシア王女殿下が心配しますが?」
「ん~~」
生返事のミリアンヌをチラリと眺めたメルヘンは、銀色に輝く魔法陣の上で、髭をピクリと動かした。
「御主人様がこちらにおいでになったようですが?」
えっ? と慌てるミリアンヌ。
「どこ?」
「まだ坂の下のようですね」
「・・・帰るね」
「そうですね。お勉強の途中で御座いますし・・・」
ギクリと肩が動くミリアンヌ。
「・・・・」
無言になり、あっという間に金色の魔法陣を展開して姿を消す大聖女。
「嘘も方便と申しますが、ミリア様には効きすぎですねぇ」
そう言って大欠伸をすると、ミリアと同じように魔法陣を展開してメルヘンも消えてしまった。
残された人々は頭上のやり取りなど全く気が付かないまま、その場に立ち尽くしていた・・・・




