77話 独房だよ全員集合!? ✢
ダラリと一瞬下った尻尾は、その一瞬後にこれでもかという位に膨れ上がった。
「殿下、失礼をお許しください」
猫らしいしなやかな動きで、シンシアの膝に飛び乗るとあっという間に銀色に光を放つガラスのように透明な膜を彼女と自分の周りに張り巡らした。
「どうなさったの?・・・」
シンシアが膝の上に乗るメルヘンに声を掛けようとしたとき、眼の前の床に『ビキビキッ』という音とともに亀裂が入り土埃が舞い始める。
「え? あれは一体・・・」
王女が目の前で広がっていく様を凝視しているうちに、どんどんと亀裂が広がり床が崩れながら飲み込まれて行く。
「何者かが、地下からやって来るようです」
いつもの淡青色の瞳が警戒の為に赤く染まるメルヘン――
亀裂が音をさせながら広がるのを止めると同時に床の穴から女性の怒鳴り声が聞こえる。
「アンタ達ばっかじゃないの? 真上になにか建物があるから調べるって言ってるのに! いきなり大穴開けるなんてっ!」
それに答える野太い声。
「な~に、後で建物の持ち主に謝りゃいいさ。もう地下はコリゴリだ」
少年の声が
「ねーちゃんがサムを唆したらろくなことにならないんだよ・・・」
呆れたように続く。
「後で、ギルドに報告せんと罰金ものかもな~」
ケラケラと笑う何人かの男の声と同時にもうもうと烟っていた土埃りのおさまった亀裂の端に手が見えた。
恐らくその手の持ち主である大きなソードを背中に背負った若い男性が
「よっと・・・」
と掛け声を上げ、亀裂の穴から床の上に現れる。
そして、
「あれ? よう、ミハイルお前何でこんなとこいるの? しかもお前、女装かよ? あ。喋る猫も一緒か~」
彼は、そう言いながらニカッと笑った。
×××××××××××
「なんだー、ミハイルの親戚か」
「えらく似てると思ったよ」
ゲラゲラ笑いながら、総勢5名が牢屋の中で座り込んでいる。
約一名魔女のマリーだけがシンシアと一緒に木製のベッドに座り、背伸びをした。
「じゃあ、スクロールの事故で飛ばされてここに閉じ込められちゃったってわけか~。大変だったわね」
マリーが肩をすくめて、
「シャガルの牢屋なんか縁起でもないわね。さっさとオサラバしなくちゃ」
「大穴はどうするんだ?」
後ろにできた大きな穴を眺める面々。
「そのままで良いというわけには参りませんよね? なにせ人様のお城ですし・・・」
何処かズレているシンシア王女。
「メルちゃんどうしましょうか?」
声を掛けられたメルヘンは髭がへにゃんと下がる。
「吾輩に言われましても・・・。シンシア様がここにいるのはこの城の者は誰も知らないわけですし・・・ そのままでも良いのでは・・・・」
と、メルが答え終わる前に、何やら部屋が小刻みに揺れ始める。
「あれ? 地震?」
マリーが天井を見つめるが、
「うわ、ヤベえ! 床が崩れてく」
マリーの弟、弓使いのジューンが亀裂を指差し叫ぶ。
亀裂がゆっくりとまた広がり始め、床を少しずつ崩し始めたのだ。
「あ。坑道が城の真下通ってるんなら、この城の地盤って凄く弱いんじゃ・・・」
ガラガラと音を立てながら少しずつスピードを上げ広がっていく穴を全員で見つめて、
「「「「「やべ」」」」」
「バレたらどーすんのよっ!」
「あらあ、崩落が始まりましたわねえ」
「・・・・・・はぁ」
メルがため息をつくと、
「それでは皆様ご一緒に、この城の外迄お連れしましょう。取り敢えず神殿へ参ります」
全員の各足元に金色の小さな魔法陣が展開する。
そして。
牢屋の中には最初から何もなかったように人の姿はなくなったが、ガラガラと音を立てながら穴は広がり続けるのをやめなかったのである・・・




