75話 ルクス神殿では・・・ ✢
「え! シンシア様が消えた!?」
「そうらしい。例の偽スクロールが発動したらしいね」
「お爺ちゃん!! 呑気に煙草吸ってる場合ですかっ!!」
いい加減でかい目が驚きで零れ落ちそうになるミリアの前で呑気に煙管を吹す大神官様。
「直ぐに王宮に行かなくちゃ」
慌てるミリアが手に持った座学の資料をばさりとガラステーブルの上に落とし、分厚い手書きの本は彼女が落とした勢いのままパラパラと勝手に頁が捲られ、見開きになった。
「慌てんでもいいって。ミリー。ホレ、そのページ読んでみなさい」
「へ?」
これでもかという位大きな目を見開いていたミリアンヌが、慌ててテーブルの上の本に書いてある文字を追う。
「? 何これ?」
そこには、この国、ハイドランジア国の結界についての解説と特殊性が書いてあった。
「え、この国の結界エネルギーって私達に直結なの?!」
ニンマリ笑う白髭の聖王
「そう。今、聖魔石に備蓄されている聖力は誰のエネルギーだった?」
「えーと、メルちゃん?」
ウンウンと頷く聖王様。
本来ハイドランジア王国は、ルクス神殿の拝殿中央に設置されている巨大な聖魔石結晶に神聖力と呼ばれるエネルギーを充填することで、魔物の侵入を防ぐ結界を維持している。
この巨大な結晶に神聖力を込める事は聖人と呼ばれる者しか出来ないのは彼等が規格外の強大な魔力を持つからである。
因みに普通の神官達が備蓄分の聖力を込めようとすると魔力不足に陥ってしまう。
だだ、今現在ネイサンとミゲルという聖王が二人と大聖女であるミリアンヌ、そして聖獣であるメルヘンという、聖人(獣)が大豊作? 状態のハイドランジアは全員がこの神聖力を込める事が出来る為、現在は4交代制で充填出来るという体制である。
「私ら聖人に気付かれずに、この国の結界を通り抜ける事は出来ないからねぇ。ただ、今は聖人が大豊作だからさ~、一人で充填してないからね。その時の当番しか気が付けないのよね~」
「え、じゃあ、メルちゃんは気がついたってこと?」
「メルは縄張り意識が私達以上に強いからねえ、とうの昔にすっ飛んで行ったわよ~」
ゲラゲラ笑う白髭のサンタクロースのようなネイサンをジト目で見つめるミリアンヌ。
「もぅ~! 早く教えてくれてもいいじゃない!!」
「多少なりとも他の三人のも混ざってるから違和感には気がつくはずなんだけどねえ・・・」
「そういや、さっきからお腹痛いのそのせいかな?」
「違和感とかじゃ無くて?!」
「うん。チクチクするから変だなあ~って・・・・」
「アンタ、ひょっとして脳みそがお腹にあるんじゃないの?」
「・・・・・」
ネイサンの疑いの視線を浴びながら、天井のシミを探すフリのミリアンヌであったという・・・




