73話 謁見 ✢
「スハイド公爵。いや、メイソン久し振りだな」
ここはシャガル王国の首都クラーグにある王城の謁見室である。
シャガルは独裁政権であり、宰相や大臣といった重臣はいない為謁見室に居るのは国王であるジャージル、そして侍従位のものである。妻である王妃はとうの昔に家庭内別居であり、後宮に引っ込んだままである。
「お久しぶりです国王陛下」
恭しく臣下の礼を取るメイソンは、本来の姿の金髪に薄く色の入った眼鏡を掛けている。
「どうした、目が悪くなったのか?」
「ええ、寄る年波には勝てないようでして」
しらっとそう答えているスハイド公爵だが、当然最近になって現れた瞳に浮かぶ星を国王に見せないようにする為である。
「実は、相談があってだな・・・」
そこまで口を開いた国王だったが、突然ドアをノックする音に言葉を遮られた。
「一体何事だ」
軽く舌打ちをするとドアを睨む国王ジャージル。侍従が慌ててドアに近寄りドアの外の官史を迎え入れた。
「陛下、姪御様がお会いしたいといらっしゃっております」
「はて? 姪とは、どの姪じゃ」
「トリステスの貴族に嫁いだお方で御座いますが、至急謁見をお願いしたいと仰っております」
「・・・ 困ったのう」
チラリとジャージルはスハイド公爵に視線を向ける。
「陛下、私の方は急ぎませんが?」
メイソンがにこやかな笑顔で国王に向かいそう言った。
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国王の前を一旦退出したスハイド公爵。
廊下を歩いていると、前方から声を扇の向こうで潜めながらお付きの者と話をしながら歩いてくる女性が見えた。
背の高い女性と中肉中背の女性。
コレと言って特徴が無い40歳代の女性で、豪華なドレスに身を包んでいる。
その横に背の高い、コチラは20歳代だろうか見た感じは南大陸系の肌の色を薄くしたような目鼻立ちがハッキリとした女性が歩いて来た。
彼女ら二人はお付きの女性に向かって小言を言いながら彼に向って真っ直ぐ歩いてくる。
今は目立ちたく無い彼は、仕方なく廊下の中央から少しだけ端に移動してすれ違うことにした。
「お母様、このままでは皇帝陛下はハイドランジアの王女と結婚してしまいますわ。ワタクシこのままでは」
「わかっています。だからこうやってわざわざ帝国から伯父様のところまで来たのでしょう。兎に角ご相談しなくては。私達が手伝った密偵達も失敗したようだし・・・ そもそも山小屋には誰も居なかったのですから」
聞くでもなくすれ違いざまに聞こえた会話になんの興味も無いフリで歩き続けるが、彼の頭の中は疑問符だらけである。
女性二人が母娘ということは分かったが、トリステスの皇帝陛下がハイドランジアの王女と結婚する? 密偵? この間の騒ぎのことか。山小屋とは?
母親の方が義兄の姪ということか。
ということは自分にとっても姪なのか? 見覚えは無いが・・・
前方を見据えたまま廊下を真っ直ぐ歩きながら、彼は褐色の肌をした冬の瞳の美丈夫を思い浮かべた。
「直接聞いてみるか・・・」




