69話 従順であるより強かであれ ✢
「すでに亡くなった母が私に教えた生き方は『従順であるより強かであれ』だったのですが、その教えのお陰で何度も助かりました。母は美しい上に魔法の才が飛び抜けており、先王に見つかった途端に愛妾として召し上げられたらしいんですが、当時の後宮はなかなかの魔窟だったらしくて生きるか死ぬかを毎日繰り広げていたらしいです。なので自然と私も死なないように処世術が身につきましてお陰様でこの年になるまで生き延びましたね」
「「「はぁ・・・」」」
「ですが今回ばかりはそういう訳にはいかないようでしてね。このままだと愚王の傀儡まっしぐらです。彼の自慢の諜報部隊も魔法奴隷もトリステスとハイドランジアに拘束されてしまいましたのでね。焦っているのでしょうねえ~。ここへきて私が魔法を使えることをやっと思い出したのでしょう」
いかにも困ったと言わんばかりに肩をすくめる公爵閣下だが、その表情は若干悪戯を考えている子供のように見える。
「義兄以上に情報は握っていますので、大抵彼が次にしでかそうとする事は予測がつきますので」
にこりと微笑むその顔はその色合いも相まってなのか、どこか大叔父や甥を思い出させるなとミゲルは思わずにいられなかった。
「ですので、このまま黙って彼に好きなようにさせるつもりは全くありませんよ」
その場に居る全員が一緒になって、ニヤリと笑い合った。
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「で、ハイドランジアとシャガルのギルドマスターが、何故態々私を探してたのか理由は、教えていただけるのでしょうか?」
ニコリと笑う金髪の美丈夫に向かってダンとセインは軽く頭を下げる。
「まず、公爵閣下もご存知の通りこのシャガル王国の経済破綻についてなのですが、これを何とかしないと国が潰れます」
「うん」
「それに関して、我々ギルドのグランド・マスターが閣下に直接お会いしたいという伝言があります。実はこれが一番難しいと思っていたんですよ。何より閣下は、なぜか王家の簒奪を目論んでいると噂されていますのでご自身が身を隠していらっしゃる為我々も所在が分からなかったので正直こんなに早く会えるとは思いもしませんでした」
太い眉をハの字にするダン。
「へえ、それにしては君達に簡単に捕まっちゃった気がするけどねえ~」
「はぁ。実は我々も拍子抜けです・・・」
セインが横でウンウンと頷いている。
「実際こんなに早くお会い出来たのは僥倖でした。国が一つ無くなるという事は、近隣諸国にとっても余り喜ばしいものではありません。又我々ギルドもそれに伴う妙な混乱は避けたい所ですし。それと人間界がガタガタすることで大気中の魔素に影響するのは確実なので魔族の活動が再び活発になりかねないというのがグランド・マスターの意見なんですよ」
「確かに私としても、せっかく寝てる子を起こしたくないですねえ」
スハイド公爵は苦笑いをした。




