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引きこもり王女の恋もよう  作者: hazuki.mikado
episode3 幸せになりたいなら、なりなさい
67/97

67話 価値

 色々と思い出し渋顔になりながら珈琲を一口飲むグエン。



 「兎に角だな、俺は領主である王弟殿下の要請でここに来たんだ。愚王からの要求が余りにもおかしいからっていうんで、取り急ぎ俺だけスクロールで移転してきた所だったんだよ。俺の私兵連中はもうすぐ船で追っかけて入港する予定だ」


 「要求がおかしいとは?」



 ハイドランジアのギルド長である強面のダンが首を傾げながらグエンを見つめ、他の二人も同様に褐色の皇帝に目を向けた。



 「首都であるクラーグに来いってのは分かるんだが、この領を国王の直轄地にするってんだ。つまり、王弟である公爵閣下の領地を取り上げるってことだな」


 「「「は?」」」


 「おかしいだろ?」


 「確かに・・・」


 「しかも、領主館を引き払うようにという国王からの命令も出たらしい」


 「はあ? つまり国王が完全にこの領地を取り上げるつもりってことですよね?」



 今度はシャガルのギルド長であるセインが呆れた声を出しながら、ズレそうになった銀縁眼鏡を手で抑えた。



 「何の咎も無いのにですか?」



 複雑な顔をするミハイル(ミゲル)

 


 「ああ。特に理由はないらしい。ただなぁ、ここの公爵である王弟殿下は国王の異母弟ではあるんだが、母親がちょっと特殊でな・・・」


 「特殊?」


 「奴隷階級の娘だったらしいんだ」


 「「「?!」」」


 「驚くなよ? 公爵閣下の瞳の色は、濃紺でな、小さいが金色の星が浮かんでるんだよ」


 「「「! それって・・・」」」


 「彼の母親が元を辿ればハイドランジアの王族に繋がる血筋の女性だったらしいな。そのせいっていうか、お陰って言やあいいのか分かんねぇが、未だに生きてるんだよ」


 「未だに?」



 ミハイルが首を傾げたがダンとセインは頷き、首を捻る彼に説明する。



 「他の兄弟達は全員が不審死を遂げてます。残った甥や姪はいますが、全員が王宮に引き取られていますね。奥方達は色々で、それこそ実家に帰った者や夫の死後王城に登城して後宮に入った者、中には夫婦揃って亡くなった方もいるようですが・・・ まあ、この国の王族は代々そんな感じみたいですね」



 説明しながらセインが珈琲カップに口を付けた。



 「私もこの国のギルド長になってから知りましたが、まあ知れば知る程生臭い国ですよ」



 眼鏡の奥の切れ長の目は細められ、何を思っているのかは伺い知れない。

 この閉鎖的で時代錯誤な国では、ギルドも色々な苦労があるのだろう。



 「公的には知らされていないし、諸外国にも伝わってはいないが内部に入って歴史を知れば、まぁ推察するのは簡単だからな。ただ物的証拠がなさ過ぎるんで憶測の域を出ないって状態だ。ギルドでも上層部にしか知られてないが、閣下は流石にご存知のようですね」



 厳つい顔のダンがそう言うのを聞きながらグエンは肩をすくめた。



 「まあ、蛇の道は蛇って言うだろう? 一応商売だからな」



 グエンは一口冷めかけた珈琲を啜ると



 「今回ばっかりは身の危険を感じ取ったらしく王弟殿下から要請が来たんだよ魔法便でな。相談って事にはなってるが、どうも()()()()が彼を公爵の地位から引きずり落として()()()()にするつもりかも知れないって書かれてたんだ」


 「「「!?」」」



 ギルドの三人組が驚いて同時に飲みかけの珈琲を吹きそうになる。



 「いくらなんでもそれは・・・」


 「一国の王弟を奴隷にするなんて醜聞でしょう。しかも義理とはいえ自分と血の繋がりが・・・」


 「・・・・」



 冷めてしまった珈琲を飲み干すグエン。



 「このシャガルって国は王位争いを血の繋がった兄弟同士で絶え間なく続けてきた歴史を持ってる国だ。今の王だって他の兄弟を押しのけて王になった筈だ。そんな奴が今まで愛妾から生まれた義弟を生かして置いた理由は?」


 「「「・・・」」」



 三人は押し黙った。



 「其れだけの価値があるということでしょうね」



 珈琲の飛沫が付いてしまった眼鏡のレンズをハンカチで拭きながらセインが答えると、頷くグエン。



 「聖魔法が使えるからか?」



 ミハイルが忌々しそうに答えると、グエンは首を横に振った。



 「いや、実はな、瞳の星が発現したのはここ半年位の事で、聖魔法の事は愚王は知らんらしい。ただ魔力持ちで多少なりとも魔法が使えるから便利な駒として生かされているのだろうと本人は言ってた。まあどちらにせよ豚野郎にとっての彼の価値はそこら辺なんだろうな」



 そう言ってのけた彼の顔は、再び渋顔に戻っていた。



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