60話 冒険者ギルドとヘンテコな依頼
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ハイドランジア王国の王都、フリージアは花の溢れる都だ。
季節の花は勿論のこと、魔力で咲く不思議な花も通りを飾る。
人々は町並みに溶け込む様に咲き誇る魔法の花を見ては、自分達の国が聖王や聖女によって守られていることを思い出しては笑顔になるのだ。
ガラスのように花弁が透けて見える魔法の花は、目に見えない彼らの神聖力が大気に満ちていると、それを自然に吸い取って咲く。
なので彼らが住まうルクス大神殿のある王都は、魔法の花があちこちに小さく群生していて、それらが太陽の光を受けるとキラキラと輝き、益々この国を訪れる外国人達にハイドランジア王国を御伽の国のように認識させるのである。
幻想的に見えるその花達が咲く大通りを、一人の青年が歩いていく。
白い神官服に似た詰め襟の上着に揃いのトラウザーズ、茶色いロングブーツを履いている。
日差しを受けてミルクティー色の長い髪が魔法の花に負けないくらい艶々と輝いている。
通りを歩いていた年頃の女性達が、それを見て黄色い声を上げる。
「凄い、エルフだわ」
「本当に綺麗なのね」
「男性なのね素敵」
「でも女性のようにも見えるわ。きっと肌が綺麗だからよ」
娘たちは顔を赤らめ、風をまとうようにヒラヒラと翻る上着の裾をウットリと見つめながら、彼が去っていくのを見送った。
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「ダンはいるかな?」
冒険者ギルドの王都支部のドアを開けながら入ってくるなり、受付の女性に声を掛けるネイサン。
「おーう、ネイサン。女口説いてねえで、上に直接来いよ」
丁度階段から降りてきたギルドマスターが、エルフのような姿の青年に声を掛ける。
「失礼な。口説いてなんかいないってば」
「アンタはそんな気が無くても女のほうが勘違いすっからよ~」
ゲラゲラ笑いながら、手にしていた書類で自分の肩をポンポンと叩く。
「アンタがここに来るってことは厄介事だろう。下じゃ対応できねえよ」
大男がニヤリと笑う。
「最初からダンに直接頼むつもりさ」
ネイサンは肩を竦め、その正面にいた受付嬢は耳まで真っ赤になって、そのエメラルド色の瞳にウットリしていた。
「おい、受付! シャンとしろ! 何年受付やってんだよ」
彼女の頭を丸めた書類で軽く叩き、ポコンと音をさせるダン。
「はひ! だ、大丈夫です。5年ですマスター!」
慌てて返事をする受付嬢に
「茶、二つ。持ってきてくれ」
そう言い残すと青年とギルドマスターは、一緒に階段を上がって行った。
顔を赤くしたまま受付嬢は二人を見送り、
「いけない! お茶を入れるんだったわ」
と、慌てて給湯室に向かっていった。
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二階の執務室は実に乱雑に物が置いてあったが、一応応接用のソファーとローテーブルには物が乗っていないので使えそうな雰囲気だった。
「や~、お久しぶりですな。大神官様、全然変わりませんな」
「うーん? 変わってないっていうの変じゃないかな? 若返ってるんだから」
「そりゃあそうですけど、ココに来るときはいつもその姿でしょうが」
呆れ顔になる、ギルドマスターのダン。
「込み入った内容でしょうか?」
「そうだねえ。国一個潰れるかもしれないから責任重大かもね」
赤い唇の端が楽しそうにクッと上がり、大袈裟に肩を竦めるネイサン。
「おいおい、冗談だろ、勘弁してくださいよ~」
「冗談なら良かったけどね」
ケラケラと笑うネイサン。
「隣国が潰れる」
「隣国って、ひょっとしてシャガルですかい?」
流石ギルドは情報が早いらしい。
「知ってるなら話が早いね」
「やだなあ~、好きで知ってる訳じゃないんですよ」
実に嫌そうに眉をハの字にするダン。
「シャガルの支部は小規模だから、ついでにデカくするからね」
「#何のついで__・__#か先に言ってくださいってば。怖いったら! グランドマスター! アンタろくな事考えないこと多いからっ!!」
ウフフと妖艶に笑うネイサンであった。
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「つまり、シャガルに冒険者を向かわせて、その採掘場を調べるってことでいいんすか?」
一通りの話が終わると溜息を付きながらギルドマスターのダンは、腕組みをしながら、ソファーに座り直した。
「そういう事。恐らくだけど廃坑になってるから立入禁止になってるかも」
ネイサンがそう云うと、ダンが顔を顰める。
「探査持ちじゃないと無理だなあ。Sクラスか」
「そうだねえ。後は、シャガル国王の弟探しといてくれるかな」
「探すって・・・ オイオイ」
そう言いながらも依頼表を埋めていくギルドマスター。
「首都にはいないんだよねえ。国王が王位の簒奪を恐れて邪険にするから、王城から出てっちゃってるからね」
「情報は?」
「ないね」
「トホホ」
ダンの顰め面が益々酷くなる。
「まあ、何とかなるだろ・・・」
「王弟と冒険者ギルドの責任者が直接会って、国の運命を決めるんだから、ダンもシャガル入りしてくれるかな?」
「えええええぇ~・・・ 何無茶苦茶言ってるんですか!」
「最終調整は僕が#グランド__・__#マスターとしてシャガルに行くよ。冒険者達は王弟に信用してもらう為の布石だから良い子を頼むね~」
「え~。ミハイル貸して。後、ミリーも!」
「ミハイルはまだしもミリーは駄目。あの子は顔に出ちゃうから、こういう交渉事に向かないからね」
ニッコリ笑う人外美型に恨みがましい視線を送るダン。
「わかった。でもミハイルは絶対に貸してくれよ」
「本人は喜んでシャガルに行くだろうから大丈夫」
「?」
「ミリーを溺愛してるから、すっ飛んで行くよ。保証する」
クスクス笑うネイサンを胡乱な目で見るギルドマスターであった。




