59話 伝説の聖王
おはよう御座います✧◝(⁰▿⁰)◜✧
魔族に怯えて暮らしていた人族を生きる希望に導いたのはハイドランジア王国の国教であるルクス神殿に住まう聖王や聖女、そして神官達である。
特に聖王ネイサン・ルクスは彼以前の聖女達の望みを確立させ、ハイドランジアを蹂躙し続けていた他国と魔族の両方を退けた事で有名である。
そしてその桁外れの神聖力と魔法を行使することによりいつの間にか100年以上生きている、まさに生き神に等しいと人々に認知されている天上人である・・・
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「でさあ、そんな経緯があってなのかしら? 勘違いされちゃってて困るのよねぇ」
「何がだよ、ジジイ」
お馴染みの神殿内の応接室。
今は聖人と呼ばれるネイサン、ミゲル、ミリアの3人。そして後は窓際でへそ天で寝ているメルヘンだけである・・・
「結界石と神聖力を使って魔族を退けたからって、決して世界の守り神って訳じゃないし。私は結局ハイドランジアが一番大事なのよね。王族も付き合い長くて孫みたいなもんだしさぁ~、そもそもルクス神殿てハイドランジアにしかないじゃない?」
「まあそうですね」
リンデンのチョコレートを頬張るミリア・・・ 例のシンシアのお礼の品である。
「元々、他の国はついでに結界張ってあげただけなのよね~」
肩を竦める仕草をするネイサン。
「あれ、そうだったのか?」
「そうなのよ。ちょっと他の国に行くのにいつまでも鎖国は不便だし、行った先に魔族も魔物もウジャウジャいるのは面倒じゃない? だから自力で討伐出来る様にギルドも作ったのよ。前世のゲームとかラノベにあったでしょ? ギルドって」
3人だけなのでネイサンのオネエ言葉が炸裂中である。
「あー、成程。遊びに行く場所を増やすついでに魔族も魔物も減す方法を考えたってやつか?」
「そうなのよ。そしたらいつの間にか聖王は清廉潔白ってレッテル貼られちゃってさ。アタシって元は遊び人なのよね~」
「「知ってる」」
「まぁ面倒だから訂正もして無いけどさ」
ケタケタ笑いながら緑茶を啜るネイサン。
「じゃあ、お爺ちゃんは別に世界の平和を守ってるつもりは無いの?」
ミリアが次の獲物を手に取りピンクの包み紙を剥がす。どうもストロベリープラリネのようだ。
「うーん、遊びに行きたいからついでに背負ってる感じだわねぇ」
「「ついでかよ~」」
「楽しくないと止めるわよ」
またもや、ケラケラ笑う大神官様。
ミゲルは膝の上のミリアをぎゅうっと抱きしめ赤面させてからニンマリ笑うと、
「俺はミリーを愛でるついでで、背負う位でいいや」
コイツらです、オマワリサン・・・
「じゃあですよ、シャガル王国の例のアレみたいな面白く無さそうなのはどうするんですか?」
「ソレねーどうしようかしらねえ。元々ウチが鎖国しちゃったのもあの国が原因なのよね。今は金属を売ってるけど、昔はハイドランジアから攫った魔法使いを各国に売り捌いてたんだからね、彼奴等は」
「人身売買大国だな」
ミゲルが嫌そうな顔をする。
「でも資源枯渇したんでしょ?」
「売るものが無くなって、次どうするかだよなあ」
「あの国は王族、特に今の国王が糞なだけなのよね。良識のある貴族もいないわけじゃないのよ。あと今の王弟がマトモらしくてさ、現国王に意見してるらしいわよ」
「破産するまで放置するとか?」
ミリアンヌが首を傾げると、
「ウ~ン。でもこのまま国が破産するとスーパーインフレとかになっちゃってあの国からの移民が周辺諸国に増えちゃうでしょ? もういっそ国民ごと他国に統合されちゃった方がマシなんじゃないの?」
聖王ネイサンが難しい顔をしながら腕組みをして、天井を睨む。
「リンデン辺りか?」
ミゲルの言葉で視線を戻すネイサン。
「ハイドランジアは無理でしょ? お伽の国だしさ」
「あ~なー、この国ちっちゃくて国民も少なめだしな。トリステスみたいな工業国じゃないから仕事もそう有るわけじゃ無いしな。無難なのはリンデンか。ソレか海側のカリダス公国か」
額に入れて飾ってある、滅多に見ることのない世界地図をミゲルが目を細めながら睨んでいる。
「まあまあ両方とも大きい国だわね」
ネイサンもミゲル同様に地図に目を向けた。
「もう面倒くさいから王様とっ捕まえて、誰かと交代して貰ってらいいんじゃないですかね」
ミリアが次のチョコレートに手を伸ばしながら、のほほんと意見を言うと、
「「出たな脳筋!」」
2人にツッコまれた。
「一応昔は畜産業も盛んだったんだけどね、土地をほじくり返して国土を台無しにしちゃったのよね」
「ウ~ン、畜産ですか。牧場?」
「そうそう。あの国の王族が急にトチ狂っちゃってさ、伝統的な生き方を捨てたのよね。瓦解したらあっという間だったわね」
「牛さんカムバック?」
「そーねー、いいかも。でも時間かかるわよね牛って成長がかなり遅いのよね~ 手間暇がかかるし・・・・ あら、ちょっと待って天の声がいっぱい聞こえてたわよね」
「へ? なにが?」
首を傾げるミリアを他所にそのままブツブツ言いながら考え事をしているらしいネイサン。
それを見ていたミゲルがふと疑問に思っていたことを口にした。
「そういやジジイは、トリステスに転移門をどうして作ったんだ?」
ミリアに目配せしながら赤い包み紙のチョコレートを指差す。
「あ~、あれ? あれは友達んちが遠いから、不便だったからよう」
ミリアが指されたチョコレートを手にして、包装紙をせっせと剥がしている・・・
「グエン殿か? 友達って」
「そうに決まってるじゃん。もし彼が天に召されたら消すわよ~ 他の人は友達じゃないもの」
「依怙贔屓かよ。それよかジジイ、いくつまで生きるつもりだ」
「さあ」
肩を竦めるネイサン。
「飽きるまでかしらねえ~ もし私がアイツより先に死んだらアンタ達が消しといて」
ミリアがチョコをミゲルの口元にそっと差し出す・・・ 顔が修行僧みたいである。
「わかった。それよりミリー、どうしたんだ?」
「え、このチョコが食べたかったんじゃないんですか?」
修行僧がへにゃっと眉を下げ、突然真っ赤になった。
「え、これが美味いって教えたつもりだったんだが・・・ そうか」
ニヤリと綺麗な形の口の端を引き上げるミゲル。
「食べさせてくれるのか~」
「え、え、えと。えぇ・・・」
しまった、コレは所謂『あ~ん』だ!
うわあぁ~ と突然ワタワタするミリアの手ををガッチリ掴んで彼女の指ごと口の中にチョコを入れるミゲル。
「ごっそーさん!」
チョコが付いた指先をペロリと舐められた。
「ひいえぇぇ~・・・」
膝の上で沸騰する聖女である。
「ミリー、いい加減馴れなさいよ、そのうち不整脈で早死にするわよ」
お爺ちゃんがお茶を啜りながら宣った。
「取り敢えずは、シャガルを更地にしなくちゃね。陥没災害は頂けないから。人が大勢死んだりしたら大気中の魔素が不安定になるから、魔物が暴れたり最悪の場合は魔族がやってくるからね~」
「そうだな」
話の内容にはそぐわない満面の笑みで恋人をぎゅうぎゅう抱きしめながらミゲルが答える。腕の中でグッタリしていたミリアだが、
「え、更地ってどうするんですか? 建物壊すんですか!?」
「そういう意味の更地じゃねえよ、俺達は戦争したいんじゃないからな。国をまっとうにする方法って意味さ」
「はぁ」
麗しい笑顔を浮かべるミゲルと首を傾げるミリアンヌ。
「魔法で穴を埋めれば手っ取り早いわね。何を詰めようかしらね~ 」
お爺ちゃんの笑顔が怪しい。
「陥没しなけりゃ危なくはねえしな」
「まあ、ちょっとばかしその前に話の分かる連中に筋は通さないといけないけど」
「ジジイがやるのか?」
「手始めにギルドを動かすわよ。そのために作った組織なんだから」
白いサンタクロースはニコニコ笑いながら湯呑の中の緑茶を飲み干した。
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