56話 そう、ノリがイイ。
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薔薇の咲き乱れる庭園。
ハイドランジア王家自慢の薔薇園にグエン陛下を案内してやって来たシンシア王女である。勿論イケオジがしっかりと黒髪の美女をエスコートしながらやって来た。
マジ、顔が嬉しそうである。
ワンコなら尻尾をブンブン振っているに違いない、43歳イケオジ。
「グエン陛下、此方が『王妃の薔薇園』ですわ。世界各国の薔薇を集め、更に交配して新種の薔薇を生み出したりしている薔薇専門の庭ですの」
ゆっくりと歩きながら隣を歩くグエンを見上げると、甘い笑顔に蕩けるような眼差しで自分を見ていることに気が付き、頬にぱっと朱が走るシンシア王女。
「薔薇もあなたの美しさに恥じらい思わず蕾に戻ってしまうのでは?」
そう云いながら、バラ色に染まった頬を右手で撫でるイケオジ。
やるな~。(小声)
いや待て、こんだけ満開に咲いてる薔薇が蕾に全部戻ったら庭師が泣くってばよ。
「そんな。いくらなんでもそのような事は・・・」
長いまつ毛を恥ずかしそうに伏せるシンシア王女だったが、ハッと気が付いた様に動きを止めた。
「陛下。ワタクシ、お尋ねしたいことが御座いますの」
「ん? 何かな?」
首を傾げ、それでも手は離さないグエン陛下・・・執念かもしれない・・・ボソッ
「グエン陛下は、初めてお会いした時の事を覚えておいででしょうか?」
「ああ」
「あの時プロポーズして頂いたのですけれど、一体ワタクシの何処がお気に召したのでしょうか・・・ 自慢では御座いませんが、ハイドランジア王家の血筋の子らは光属性の継承を確実にされる事が有名です。ワタクシにはそれくらいくらいしか誇れるものは御座いません・・・」
長い睫毛を伏せて憂いを帯びる横顔。
「社交は苦手ですし、ワルツ位は辛うじて踊れますけれどそれ以外は破壊的に運動が苦手ですの。ワタクシが優雅に見えるという方もいらっしゃいますが、あまりにひどい運動神経なのでゆっくり動くようにしているにすぎませんわ・・・ 傾国の美女と言われてはおりますが、国を傾けるほどの美しさとも思えませんし・・・」
言葉を続けようと口を開く前に、頬にずっと添えられていた右手の親指が動いて唇をそっと塞ぐ。
見上げると水色の硝子の伊達眼鏡の奥の瞳が、嬉しげに瞬いている。
「貴女が私のプロポーズを本気だと受け取ってくれた事にまず礼を言う。ありがとう」
蕩けそうな表情に甘さが加わる。
「次に言えるのは、一目で恋に堕ちたのだ。気が付いたらあなたの前に傅いていてもう理屈では無く貴女が欲しい、ただそれだけだった、謂うならば本能だろうか?」
「本能ですか?」
「魔族との戦いにずっと身を置いてきたせいで本能に従うのが当たり前になってしまっているのもあるだろうが、何よりも存在そのものに惹かれた。見た目の美しさだけではなく・・・ 貴女と出会ったときに世界が変わったのだ。だから・・・」
グエンはその場でさっとシンシア王女の正面に回り込み膝をついて両手を包み込むように握り込む。
「シンシア王女、どうか私に貴女を愛させて頂く許可を。そして私と一生共に居てほしい。貴女の全てを私に与えて欲しい。生まれてこのかた欲しいと思った物など何もなかった男が初めて手に入れたいと思ったのが貴女だったのだ。どうか・・・」
グエンは黒髪の美女を見上げ、眩しそうに目を細めた。
「私と結婚して下さい」
周囲に咲き誇る真紅の薔薇と見間違えるのではないかと思えるほど赤くなった顔を跪き見上げるグエンに向けると、
「喜んで。お受けいたしますわ。ワタクシもあなた様をお慕い申しております」
そう答え微笑んだのである。
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「お妃様僭越ながらながら質問が」
「なあに女官長」
「薔薇の茂みに隠れて姫様を見守るのも良いのですが・・・ 何故今頃になって皇帝陛下はプロポーズされるのでしょう? もう既にトリステスから婚姻の申込みも届いておりますのに・・・」
「ノリじゃない? ソレか、シンシアがちゃんと返事してなかったから仕切り直しよ。やるわねグエン様」
「ああ、成程。姫様は昔から人とテンポがズレておりますものねぇ」
「それに合わせられるグエン様は素晴らしいわ~ うふふふ」
「良いご縁ですわ」
「さ、戻るわよ」
コソコソと薔薇の茂みから這い出すオフィーリア妃と女官長の2人は、薔薇のアーチの向こうで恋人達の影が1つになっているのを見ない様に空を見ながら、そそくさと後宮に引き上げるのであった・・・
episode2 恋ハ異ナモノ味ナモノ♡ 了
コレにて episode2終了です♡




