54話 ついでにちょっくら寄ってかない?
何故かフリージア城に行くことになってしまった、グエン陛下。
どうしてこうなった?
移動中の馬車の中で先刻の神殿でのやり取りを思い出す・・・
「グエン陛下、お忍びでルクス大神殿に来られたというのは重々承知しておりますが、是非ともフリージア城にお立ち寄り願えませんでしょうか・・・」
恐縮しているのは分からないでもないのだが、何だか押しが強く感じるのは何故だろう・・・ 圧が・・・ 圧が・・・
モース宰相がジリジリと寄ってくるのは何故だ?
「お願いです。このままでは我が国の執務が滞ります。是非とも妃殿下にお会いくださいませ!」
・・・何故だろう、目が血走っている?
「お、おう、どうしたんだモース宰相殿、今日は押しが強いな?!」
モースはチラリとグエンの横に座る、シンシア王女に目をやると
「妃殿下が、フィリップ陛下に詰め寄っては追いかけ回すので仕事が滞っているんです!」
「どうしたんだ、モース?」
ミゲルが口を挟む。
「実はオフィーリア様が、シンシア様の嫁入り衣装を作りはじめまして・・・」
「「「「お、おう」」」」
1人答えないシンシアは真っ赤になって俯いてしまい、モース宰相はハンカチを額に当てる。
「花婿の衣装はどうするのかとフィリップ陛下を追いかけ回しているのです・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「そもそも未だにトリステスから婚姻の申込みに対する正式なお返事をお返ししていないのですが、妃殿下が暴走しまして・・・・・」
「「「「あー・・・・」」」」
「陛下も陛下でウジウジしてまして、」
「「「「・・・・はあぁ」」」」
「妃殿下が陛下の執務室に十份毎にいらっしゃるので執務が・・・」
「姉上らしいな~・・・」
ミゲルがボソリと呟いた。
宰相閣下の、ここで会ったが百年目の勢いに負けてシンシアの乗ってきた馬車でフリージア城に向けて移動中のイケオジである・・・
当然の如く赤い顔のシンシア王女も一緒であり、彼女を膝に乗せての移動なのでグエン陛下の機嫌はメッチャ良い。
当然である。
・・・バカップル2組目決定だな。
××××××××××
「んまあああぁ! グエン陛下、よくぞおいで下さいました!」
豊かなハニーブロンドを優雅に品よく結い上げ、コバルトブルーの艷やかなサテンのドレスに身を包んだオフィーリア妃が、グエンが通された客間に光の速さで? やって来た。
ここは王の執務室のすぐ隣で重要な賓客と密談する場所でもある。
「妃殿下にあらせられましては、ご機嫌麗しく、恐悦至極に存じあげます」
グエンは貴公子のようにお辞儀をする。
「まあまあまあ、宜しいのですよ、そこまで改まらずとも。殿下、ワタクシの大切な娘を娶りたいというお申し出をしていただき嬉しく思っておりますのよ・・・」
にこやかに微笑むオフィーリア。
「トリステスの重鎮の皆様にも娘は気に入って貰えたようで、ホントに安心しておりますのよ・・・ 何より、」
チラリとグエンの側に佇むシンシア王女に目を遣ると
「殿方には全くもって興味のなかった娘が、貴方様のお名前を聞くだけでポーッとしたり顔を赤らめたり・・・」
ハンカチを後ろに控えた女官からさっと受け取ると目元を拭うオフィーリア。
「トリステスより帰ってからは、今まで一切見向きもしなかった恋愛小説まで読んで貴方様にお会いできるのを夢見ていたのですよ・・・ もう親としては感謝感激ですのよ!」
あ。バレてた・・・・
図書館の恋愛読破リストがグエンに渡るのは決定かなこりゃあ・・・・
××××××××××
「正式なお返事は未だにいただいてはおりませんが、王妃殿は反対では無いと宰相閣下から聞き及んであります。有難き幸せです」
グエンは恭しく胸に手を当てて腰を折る、簡易の礼をする。
「早くお返事をしたいのは山々なのですけれど、例の、ね」
「シャガルですかな?」
「そうですの。あの国の例の#あの方__・__#がシンシアに執着しておりまして」
「お聞きしております」
思いっクソ、嫌な顔をしましたよね陛下。
オフィーリアがほぅ、と溜息をつき眉を下げる。
「まあ、お座りくださいませ。もうすぐ主人も参りますので・・・」
勧められた通り、美しいゴブラン織りの座面のソファーに腰掛けるグエン。
もちろんちゃっかりシンシアと手を繋いで隣合わせである・・・ オフィーリア妃はそれを見ると、広げた扇の向こうで金色の瞳が楽しげに、細く弓形になりほほえんだ。
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