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引きこもり王女の恋もよう  作者: hazuki.mikado
episode2 恋ハ異ナモノ味ナモノ
53/97

53話 優秀な聖獣


 ルクス神殿の中庭はちょっとばかし特殊だ。


 地面に見たこともないような魔法陣が描かれ、常に火が燃え盛っている。 


 少し離れたところには小高い丘のような場所があり、何故か()()()()に狭い水路を伝って水が登っていき、切り立った絶壁から水が滝のように落ちていく。


 庭の中央にある菩提樹の大木の大枝から魔物の革で出来た袋のようなものが幾つも下げられていて、重いものが入っているらしく少々風が当たってもびくともしない。


 見たことも無い金属製の台の上にまるい円盤状の物が両端に取り付けられた竿が置いてある・・・・


 お気づきだろうが、全部ミリアの修行&筋トレセット。


 もっともベンチプレスやサンドバックは見ただけでは誰も分からない代物だ。


 この世界元は乙女ゲーなのでそんな汗臭いモノは存在しない。


 全てミリアの手造り品である。



××××××××××



 魔獣の檻につかまった間諜は総勢10名。


 全員が銀色に輝くロープを体中に巻きつけられ蓑虫状にされ、檻の床に転がっている。



「意識はあるのか? これ」


「あー、気が付いたけど逃げようとして藻掻いたんだろうな~ メルの罠はじっとしてたら無害なんだけど、抵抗するとぎゅうぎゅう閉まってくるんだよなー・・・」



 白目になって泡を吹いてる蓑虫が7個ほど混じっている。


 周りの怪しい景色を目を見開いてこわごわ見ているのが3個・・・


 個?



「多分だが、あと10分位でロープは消えるんだが・・・ おい、お前らシャガルの連中だろう? 先に言っとくけど檻に絶対に触れるなよ。痺れるからな責任は持たんぞ」



 魔獣の檻に向かって声をかけるミゲル。



「トリステスからどこへ飛ぶのかを調べてただけにしては数が多いなぁ。普通なら2人か3人位だろうに・・・」



 グエンが首を捻っていると、檻の側でしゃがんで中を覗いていたお爺ちゃん@大神官が立ち上がって首を振る。



「シャガル王国から逃げるつもりだったのかのう・・・」



 ビクッとする間諜達。



「グエンが言っとったようにあの国はもう沈むしかないじゃろう? この者達は逃げる先を探しに来たのやもしれん。まあ憶測でしかないがのう。小奴ら全員が奴隷階級じゃからな。多少なりとも魔法を使える者も混じっとるのう」


「ジジイ、鑑定魔法か?」


「そうじゃ」


「シャガルも一枚板ではないからな」



 グエンが腕組みをした。



「ヤレヤレ、面倒事も国絡みじゃと楽しめんのう」


「面倒事を愉しむなよジジイ」



 渋面になるミゲルを横目でチラリと見た後


「フィルに知らせとくか・・・」



 聖王ネイサンが右手の掌に魔法の鳩を出し空へ飛ばした。


 鳩は一直線にフリージア城へ羽ばたいていく。



「グエン、難民が出るかもしれんぞ」


「ほう。沈む船には鼠は残らねえってやつか? 思ってたより早いなぁ」



 頭をボリボリ掻くグエン陛下。



「多分じゃが、トリステスの騒ぎの時に、1人残らず捕まって本国に知らせも流れとらんと言っとったじゃろ?」


「ん? ああ。シャガルに忍び込んで確認したからな間違いねえ」


「滅多にそういうことは起こらんもんじゃ。普通なら何かしら本国に連絡は行くもんじゃからのう。恐らく間者を全てメルが捕まえてしもうたんで先発隊がシャガルを裏切って逃げたと思われたのかもしれんな。手が足らなくなって、奴隷階級の使えそうな者をトリステスに送ったのじゃろう。そうでなければ裏切る可能性のある奴隷なんぞを送り込まんじゃろう」



 あちゃーという顔の皇帝陛下。



「トリステスで炙り出そうたって元々いなかったから捕まらなかったのか・・・ 優秀だな聖獣殿は・・・」



××××××××××



 出窓スペースの赤い天鵞絨のクッションはメルの休憩スペースである。


 その上で欠伸をして丸くなる白いモフモフのシベリアンフォレストキャットのメルヘン。


 部屋にミゲル達が帰ってきたので現在は休憩時間中。


 そもそも食事も排泄もない生き物なので、寝そべっているかモフられているか姿を消して仕事に精を出しているかの3択である・・・・



「いいなあ~、我が国にも聖獣欲しい」



 横目でグエン陛下がチラ見するがメルは丸くなって目を閉じて全無視である。


 しかもこちらにケツを向けているので唯の丸い毛玉である。



「えー、駄目です。メルちゃんはあげませんからね! 私の癒やしなんですから」



 ぷくっと膨れるミリアンヌ。



「いや、わかってるって。でも優秀だよなあ・・・」


「まあメルは特殊じゃからのう。そもそもこの世界には恐らく一体しかおらんでのう。偶々条件が重なって産まれただけじゃ。それにミゲルの言うこと以外は全くもって応じんからのう~・・・」



 お爺ちゃんが白い髭を触りながら珈琲を啜る。



「そういやそうだな。基本的に俺が命令した時以外は他人も守らんからな」



 苦笑いをするミゲル。



「徹底的に主人オンリーか? 益々面白いなぁ」


「忠猫メルちゃん・・・」


「なんだそりゃ?」


「あ、お気になさらず」


「?」



 そんな会話をしているところにやって来たのはこの国の宰相モース侯爵である。



「お久しぶりです、皆様。おっとグエン陛下もおいでとは思いませんでした」



 ちょっとばかし焦る宰相閣下。



「お、モース殿。今日はお忍びだから挨拶抜きで頼む」


「了解です。で、大神官様シャガル王国の間諜とやらはどちらに?」


「そのことなんじゃがの、取り敢えず神殿預かりのままにするか、フリージア城で拘束するかそこからなんじゃ」


「ほう? まあ神殿は治外法権扱いですからな」


「其れだけじゃなくてな、シャガルが破綻しそうなんじゃよ」


「破綻? 何処からその情報が?」


「あ。ウチの最新情報だ」


「トリステスからですか。成程・・・ シャガルは我が国の隣国ですからな。早めに対策を取るに越したことは無いということですな・・・ 国の破綻・・・」



 流石のモース宰相も困り顔になったのである・・・・




本日もお読み頂きありがとうございます✧◝(⁰▿⁰)◜✧




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