50話 猪突猛進
「再稼働出来るからの」
いきなり、空中からふわりと現れた白いサンタクロースならぬ大神官様はストンとミゲルの隣、白い天鵞絨の座面に座った。
「おお、流石は妖怪」
「コラ、小僧」
パコンとミゲルの後頭を叩く。
「早かったね、お爺ちゃん」
目の前に新しく出された珈琲を口にする聖王ネイサン。
「偶々グエンと宰相が一緒に廊下で歩いておってのう。伝える手間が省けたんじゃ。帰る間際にちょいと復帰しといたわい」
「「「・・・・」」」
これぞ神タイミングと言わざるして何と言う? である。合掌・・・
「ああ、そう言えばグエンもこちらに用事があるから近々訪れると言っておった」
お爺ちゃんは珈琲を飲み干すと
「それと、ミゲル、メルに転移門の周りに罠を張る様に頼んどいてくれい」
「あ? ああ。了解、例のアレか」
「グエン殿と宰相以外は間者と思っていいじゃろうからの」
「単純でいいな。おいメルやっといてくれるか」
ミリアの膝上でモフられていた白猫がコチラを見上げる。
「畏まりました」
キラリと光ると消えてしまった。
「皆仕事早いなぁ・・・」
呆れるミリアンヌ。
「面倒事はさっさと済ましてやりたいことを優先させたいだけだ」
「そうじゃなあ~」
聖王様2人組の楽しそうな笑顔が、なんか怪しいと思うのはミリアだけでは無いはずである。
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「では、トリステスにワタクシが行くのではなく、お待ちしていれば良いのですわね?」
「シンシアが向こうに行きたいのは分かるが、転移門の移動先が皇城の地下室だろ? 前もって予定を伝えとく必要性がある。コッチならハイドランジア内でも神殿の中だから治外法権が通用する場所だ。気軽に来れるんだよ」
「成程」
「まあ、儂の友達じゃからの。グエンのことじゃから友達の家に遊びに来る感覚じゃろうて」
珈琲を飲み干す、聖王ネイサン。
「ちょっとばかりやることがあるからな、儂は席を外すぞ」
そう言いながら立ち上がると
「シンシアは後宮に行って王妃に会った方が良いぞ。オフィーリアが暴走気味じゃからのう」
そう言うと、お付きの女性神官と共にドアから出ていってしまった。
「「「暴走?」」」
首を傾げる3人である。
シンシア王女付きの侍女がネイサン聖王に向かって丁寧にお辞儀をした。
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「お、お母様? 一体どうなさったのですかこれは・・・」
フリージア城に戻り、早速後宮の王妃の元に行くと、トルソーにマーメイドラインを基調にした長いレースのトレーンが続く白く輝く美しいウェディングドレスにしか見えない物が飾られていて縫製班がせっせとトレーン部分に金糸で刺繍を施している・・・
「あら、シンシアどうしたの?」
「これは、婚姻式用のドレスですか?」
「ええ、そうよ~」
「王太子妃のものにしては・・・」
バストが大きい・・・
とは言い辛いので言葉を濁す。
『どうせ私のはささやかですわよっ!』
と涙目で叫ぶ公爵令嬢の姿が、しっかり脳内再生されて押し黙ったシンシア王女である。
「これは~、うふふ。貴女のものよー」
あ、やっぱりねと遠い目になる第2王女殿下である。
「背中部分がシャーリング加工してあるから、体型に合われられるの。だから早めにつくっておいても大丈夫なのよ~」
超絶ご機嫌な母に苦言は通らないだろうな~ と意識が遠のきそうになるが踏ん張って立ち直る。
「あの、お母様、えとですね・・・」
「コレならお腹に赤ちゃんができても大丈夫だわよっ!」
「・・・・」
赤面したまま何も言えなくなり、更に意識が遠のきそうになる。
「あの、まだプロポーズされただけでお返事はしておりませんのよ・・・」
ゴニョゴニョ言い訳をするが
「大丈夫よ~! 絶対にお婿さんになっていただけるように捕獲するからっ!」
鼻息荒く告げるオフィーリアに目眩がする・・・
知ってた。
こういう人だった。
この猪突猛進の母じゃ無ければあのぽややんな父とは結婚出来てない・・・
何も言えずに退室していくシンシアを他所に
「次はカクテルドレスだわよ! 皆頑張るのよ!!」
「「「「「はい!」」」」」
母の激が響いていた・・・
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