49話 エルフ級人外美形
赤い絨毯を敷き詰めた廊下を大臣達と一緒に執務室へと歩いていくのは、この国の皇帝陛下。グエン・トリステスだ。
この所、シャガル王国の間諜騒ぎで皇城に珍しく居着いている。
それを目当てに、用事もない筈の貴族の子女の出入りも一気に増えた。
この国の最高権力者で独身。
しかも見た目20代後半の高身長のかっけーイケオジ。
最優良物件を狙う肉食系ハンターの多いこと多いこと・・・。
忙しい中でひっきりなしに湧いて出る五月蝿いコバエを追っ払うのに、重鎮達のイライラはMAXである。
××××××××××
基本的にこの国の皇城自体は一般貴族の出入り制限がない珍しい国だ。
皇帝陛下や皇子、政治を扱う重鎮達の執務区画と皇族のプライベート区画、文官達が仕事をする為の文官区と呼ばれる場所、そして賓客を迎えるための離宮や罪人のための塔。
これら以外の場所なら自由に出入り出来るのだ。
軍の鍛錬場や季節折々の花が美しく咲き乱れる広い庭園、皇城務めの者が利用する食堂、酒場、遊技場、入浴施設、一般開放用の図書館など意外にも楽しめる場所は多い為、デートスポットとして若者に利用されたりもする。この辺りは皇帝の人柄が出ているのであろうが、兎に角大雑把である。
なので偶に着飾った貴族女性が 皇城内で1人で道に迷っていたりするのだが・・・・ 今日は毛色が違っていた。
「や~! 久しぶり」
ふと進路上に目をやると、白い神官のような服を来た優美な姿のエルフが立っている。
シミひとつない白い肌。薄いミルクティー色のサラサラのロングヘアに、涼し気で切れ長な目とエメラルドの瞳は、髪色と同じ色のカールした長い睫毛で飾られている。
薄い形のいい唇はサクラ色で、スッと通った鼻筋と高い鼻梁。細めの顎も儚げで美しい。
男性とも女性とも取れそうな繊細で優美な立ち姿に思わず頭を振ったり頬を抓ってみたりする大臣達・・・
「おう、ネイサン! 久しぶりだなあ」
グエンだけがズカズカと近寄っていくとその肩に手をポンと置いた。
「忙しそうだね、グエン、例のシャガル絡みは終わりそう?」
「ウ~ン、城外の奴らを今炙り出してる所だ。成果はあんまねーな」
「分かった。手伝う事はありそうかな?」
「いやー、今んとこ思いつかんなぁ」
「そっか。じゃあ手伝う事がありそうなら相談して。それと門を開けようと思うんだけど、良いかな」
「困んねえか」
「いやー、猫の飼い主が帰ってるからもういいよ。寧ろ渡ってきたら一網打尽で簡単だよねえ」
そう言いながら笑顔になると白薔薇が舞い散る幻が見える・・・・
身長は一般的な男性並で、体型はどちらかというと細めだが、その人外並みの美形がにこやかに微笑むと同性と判っているのに何故か顔色が赤くなるオッサン'S・・・
「ん~~、じゃあ開けといてくれるか。俺もそっちに行きてえからさ」
「了解。じゃ、再生しとくね~ 又ね」
そう言いうとあっという間に青年は消えてしまった。
「相変わらず突然現れやがるなぁ。もう」
苦笑いをするグエンに重鎮達は困惑気味である。
「陛下、あの、さっきの方は・・・」
「あ? 友達」
「人ですよね?」
「あー・・・ 多分人族?」
「男性ですよね」
「ああ。ヤローだな。惚れるなよヤベえからな~」
「「「「「「・・・?」」」」」」
「まあ、ハイドランジア産の奴らは規格外の美形が多いってだけさ」
「「「「「「ああ、成程」」」」」」
以前、紹介されていたシャルム宰相だけが、
『まさかの大神官様とは言えませんもんね~・・・』
と1人遠い目をしていたのは秘密だ。
××××××××××
皇城の秘密の地下室に転移した大神官@若返り仕様。
「ホイッ」
と、一言発すると、あっという間に金色の光が部屋に満ちて消えると共に空中に転移門の魔法陣が浮かんだ。
それは自然に床に降りていき寸分違わぬ元の位置に密着した。
部屋のドアに鍵は掛かっているので、後はグエンが開けるだけである。
ハイドランジアの一行はドアなどなくても自由に出入り出来るので関係ない。
「おしまーい」
そう言うと、ネイサン・ルクスの姿はかき消え、部屋には金色の顔料で精密に書き込まれた転移門だけが残ったのである。
お読み頂き・・・アリガトウゴザイマス?




