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引きこもり王女の恋もよう  作者: hazuki.mikado
episode2 恋ハ異ナモノ味ナモノ
44/97

44話 宰相の独り言

本日もお読み頂きありがとうございます✧◝(⁰▿⁰)◜✧


「シャルム、これで夜会の始末は粗方終わった筈だが?」



 チョコレートブラウンの艷やかな髪の毛を一纏めにしてある紐を解いて頭を掻きながら口をへの字に引き結ぶトリステスの皇帝陛下グエン閣下、43歳独身イケオジである。


 説明が長い・・・()



「そうですなあ、隣国の国王からの書状も届きましたし、アチラに(くだん)のご夫妻を更迭したら終わりですかな。他は今の所進めらるものが無さそうですな・・・」



 皇帝陛下の問いかけに書類をペラペラ捲りながら答えるシャルム宰相はいつもの笑顔である。



「後は中途半端になってしまったハイドランジアとの交換留学の件をどうするかという事位ですなあ」



 うぅーん、という顔になる宰相殿。



「最初は見聞を広めて頂く為にゲオルグ殿下の()の国への留学を考えておったのですが・・・」


「まあ、あちらが王女クラスならコチラも同等の地位の者じゃないとな。外交的なメンツがあるからな」


「しかし、今回のシャガルの隠し通路の件で皇城の安全確認の見直しが先ですからなぁ。殿下は軍の責任者ですし。それに黒の塔に満杯の密偵の処分も残っております。もしシンシア王女様がこの国に再びおいでになられるなら憂いになるものは()()しておくのが良策でしょう」



 シャルム閣下、ちょっと見は子熊っぽいかわいい感じのオジサンだが流石は大国の宰相である。


 ニコニコしながらサラリと言ってる内容は結構なエグさである・・・



「お前も相変わらずだな」



 呆れ顔で宰相の顔を見る陛下である。



「いやいや、お褒め頂き恐悦至極ですなぁ」


「褒めてねえよ」


「またまた~」



 ホッホッホと笑うシャルム宰相。



「あ、でも、ハイドランジアに陛下の釣書は送っときました」


「へ?」


「外務大臣が頑張っとりましたぞ! 絶対にシンシア様をお迎えすると張り切っとりました」


「え?」


「婚姻の申込みですよ」


「え? いつの間に・・・」


「夜会の直後ですなぁ」


「あのくっそ忙しい時にか?」


「はい。皆、陛下のために頑張っとりましたよ!」


「・・・まぁ、なんだ。ありがとよ」



 ホッホッホと楽しそうに笑う宰相を、ビミョ~ な顔で見ている皇帝陛下である。




××××××××××



 グエン陛下は自分の幸せも、喜びも全て15歳の戴冠式の時に捨ててしまった。


 まだまだあどけなさの残る少年は既に両親を失い、魔族と戦うための旗印としてこのトリステス帝国に利用されたと言っても過言ではないだろう。


 前皇帝陛下は勇猛果敢な方で、魔族との戦いにずっと圧勝していた。其のため南大陸自体がトリステス帝国の皇帝陛下を人の希望として見#做__な__#していた。


 だがある時戦場で深い傷を負い魔族の呪いにより死に瀕してしまった前皇帝陛下は、できるだけ早い譲位を望んでいたのだ。


 彼が死んでしまったら大陸全土の人の士気が下るのは目に見えていたからだ。


 皇帝陛下の嫡子はグエン陛下お一人だった。


 我々大臣達は心を鬼にして、15歳になったばかりのまだ若すぎる陛下に後ろ盾となる名家の息女を娶らせた。これもまた世継ぎを残すため直ぐに子を成すことの出来るような年上の女性だった。


 我々が若すぎる皇帝陛下の意思も希望も全て無視して彼を帝国の人身御供にしてしまった事に気がついたのは、皇妃であるイングリット様が駆け落ちをしてしまった時である。



「まあ、仕方ねえだろう。つまらねえ旦那だったんだからな」



 彼はそう言って嗤ったのだ。


 自分自身を。


 魔族が西大陸に引上げ、やっと平和が訪れ希望が見え始め、グエン陛下の苦労が報われると喜んだ矢先の出来事。


 彼は英雄になった。


 南大陸は平和になった。


 しかし彼の妻は彼を癒すこともせず贅沢三昧をして挙げ句の果てに不貞をし、不義の子を押し付けて駆け落ちをしていなくなった。


 理由は陛下に愛されなかったから。


 そう言ったらしい。


 戦争だった。


 生きる事生き残る事が何よりも優先された時代だった。


 帝国を維持する事が人の生きる希望だった。


 確かに。しかし。


 陛下は自分自身の幸せを全て諦めざるを得なかったのだ。


 それを強要したのは私達であり、恐らくは南大陸全土の人族全員の総意だった。


 せめて。平和になった今。


 陛下に人としての幸せを得て欲しいと思うのが我々閣僚の願いでもある。


 帝国の貴族の女性達が后妃の座を狙い陛下に取り入ろうとしていたのは皆が知るところだったが、陛下自身が望まない伴侶は我々も望むことはなかった。


 何よりも陛下が望んだ方だからこそ我々も願わずにいられないのだ。



 どうか。


 陛下に良い風が吹きますようにと。



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