36話 驚愕の図書館(下)
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「熱が下がったら私室に移動させて頂戴」
側にいる侍女と、恐らく王宮魔術師に向かい指示をして去っていく王妃を熱っぽい目でぼんやりと見つめながら見送るシンシアの胸中は穏やかとは言い難かった・・・
『婚姻の打診・・・グエン様が』
良くも悪くも南大陸の覇者として名を上げた彼の噂を知らぬものはいないといって良いだろう。シンシア王女とて様々な噂を知らぬ子供ではない。
だが。
噂と違って誠実で律儀な対応をする姿を何度も見たし、意外に頑固で心配性な所があるのも知った。そして思っていた以上にロマンチストなのだろうとも思う。
夜会に出席していた貴族女性達に熱烈な周波を送られていても微塵も気にかけずシンシアに寄り添ってくれた事はつい2日前の事である・・・
でも結婚・・・
「グエン様・・・」
皇城の地下室で彼に初めて会った時、熱烈なプロポーズをされたのはついこの間のように感じる。
王女がそっと目を閉じて溜息を付いた途端に
「大丈夫か! 俺の女神よ!」
救護室と医務室を繫ぐドアがぶっ飛んだ。
驚いて飛び起き、そちらを見るとハアハアと息を切らした黒い軍服姿のグエンが立っていた。
「グエン様、なぜここに?」
「貴女が倒れたと聞いて居ても立っても居られなかったのだ・・・」
少しばかりバツの悪そうな顔で頭を掻く姿は、まるで少年のように見える。ツカツカと軍靴の音をさせてシンシアに近寄るとグッと顔を寄せて
「顔が赤い・・・」
そう言いながら眉根を寄せる。
「大丈夫ですわ、ただの疲れから来たもので病気ではございませんのよ」
まさかのエ○本見て知恵熱出したとか言えませんよね~・・・
「それならいいが・・・」
不安気に揺れる冬の全てを閉じ込めたような青灰色の瞳が揺れ、シンシア王女の頬を包みこむようにグエンは両手を添える。
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ゆっくりと顔を近づけると、蕩けるような表情で啄むように軽くキスをされた。
「拒まないのか?」
彼が嬉しそうな顔で首を傾げるのを見たシンシア王女の心臓の鼓動がこれでもかという位速くなる・・・
「いいえ。陛下、ワタクシは・・・」
潤む瞳を恥ずかしく思いそっと閉じる。
真っ赤な顔を見られたくないのでつい顔を伏せたがグエンはそれを許さず彼女の顎をつい、と軽く持ち上げ更に嬉しそうにニヤリと笑う。
そしてそのままもう一度軽くキスをして、優しく甘噛みし、更に軽く唇に触れるようなキスを角度を変え何度も重ねた。
啄むような口付けはどんどん深さを増して行きシンシアは精一杯受け止めようとするがどんどんディープなキスになっていく。
グエンはシンシアの歯茎を舌で丁寧になぞり、彼女の舌の裏側をゆっくり味わうように舐め回した。
『ああ、グエン様・・・・』
まるでワインで酔ったように腰砕けになっているシンシアの後頭部を支えて更に深い口付けをしようと、ベットの上に彼が片膝を乗せて反対の手をその背中に回し・・・・
「大丈夫ですかっ! シンシア様っ!」
大聖女ミリアンヌの声でハッと目が覚める。
「あら、ミリアちゃん?」
「倒れたって聞いたんでヒールをかけに来ましたよ、お疲れなんですねっ!」
シンシア王女が鳩が豆鉄砲を食らったような顔で周りを見回すとそこは自室で、笑顔の大聖女がその手の平に治癒の光を集めたままでにっこり笑っていた・・・
「あら? ワタクシ?」
「あ、何だか熱は引きましたけどガタガタ震えてたんで治癒しときましたね~」
「・・・・・夢?」
「はい?」
黙り込むと恥ずかしそうに目を泳がした後、羽根布団に潜り込んで隠れてしまったシンシア王女に首を傾げるミリアであった。
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