33話 即断即決即撤退!
今日も恋シテマスカー✧◝(⁰▿⁰)◜✧
と、言うわけで。
何がや? と言いたいところだが。
実は紅の離宮に全員が無事戻った直後にトリステスの皇帝陛下グエンは、グイグイと強い推しでハイドランジア王国へシンシア王女を送り返してしまったのである・・・・
「なんですの! グエン陛下は! コチラの意見も聞き入れずにワタクシをハイドランジアに戻してしまうなんて!!」
大神殿の応接室で怒り心頭中の傾国の美女である・・・
美人が怒ると迫力満点ですね。
合掌。
5、6人座れる位長い優美なマホガニーのソファーに座り、手当り次第にクッションに八つ当たりをしている王女殿下である。
掴んでは投げているつもりだろうが飛距離が出ずに50センチ程度先の床に転がるだけだが・・・
「シンシア様を守りたいっていう一心から来た判断なんですから、そう言わずに・・・」
なだめているのはミリアである。
壁際の定位置でシンシア付きの侍女もウンウンと小さく頷いている。
不満で顔を赤く染めるシンシア王女を見ながらミリアは溜息を1つ付いた。
「もー、ミゲル様早く帰って来てくださいよ~・・・」
遠い目になり、ミリアは昨日の事を思い出す・・・
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無事全員が紅の塔の客室に移転した後、連れ帰った3人の元奴隷の親子の身の安全を第一に考え、トリステス帝国から正式にハイドランジア王国へと魔法便で、彼らを保護した経緯と戸籍に関する調査の依頼をしたらしい。
彼らがハイドランジアへと戻るのは調査結果が送られてきてからという事に決定し、その間は皇城で預かることとなった。
其のためシンシアも彼らと同じ頃に帰国するつもりでいたのだが・・・
「何故ですか陛下!? 今日のうちにハイドランジアに帰れって、どういうことですの?」
美しい瑠璃色の瞳を湛えたアーモンドのような形の目を三角にして怒る美女。
「いや、今日のうちに帰れば、より安全だ。今なら聖女殿も聖王殿も着いて帰ってくれるだろう? 聖獣殿まで居てくれるのだ。明日になれば又間諜の調査だ。夜まであの山小屋には、誰も来ないとあの親子も言っていただろう? 彼らと貴女が居ないことが分かれば又あの国の国王は間諜を差し向けてくるだろう」
シンシアの肩を抱いて、顔を覗き込むようにして眉尻を下げ情けない顔をしてみせる皇帝陛下。
「ううう・・・」
赤い顔で反論しようとしても良い言葉が浮かばないシンシア。
そして、グエン陛下がものすごーく小さな声で
「あんの糞豚八つ裂きにしてやる・・・ いや、間諜を送り込んでバズーカで城ごと吹き飛ばすか・・・ それかもういっそ国ごと滅亡させる方が平和になるか?・・・」
とボソリと呟いたのをミリアは、耳にしたのである。
いやいやいや、小声でものすごーく不穏な台詞を口にしているのは気のせいじゃないよね?! このヒト何物騒な事を考えてんだ?!
何も言えずに引き攣ったお愛想笑いを陛下に向かって浮かべたのを覚えている。
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シンシア王女がグエン陛下に向かい、あと1日位の滞在は良いのでは無いかと食い下がるのを全員で宥めすかしながら最終的にはメルの転移魔法で有無を言わさず皇城の地下まで王女を連行し、転移門でハイドランジア王国に戻ってきたのである・・・ この間たったの10分。
あっという間にシンシアの念願であったトリステス帝国留学は終了してしまったのであった。
で。
冒頭のシンシアのクッションへの八つ当たりに戻る・・・
ハイドランジア王国に帰ったのが前日の昼過ぎ。今は翌日の昼過ぎで、丁度24時間後である。
その間にルクス大神殿から聖王ネイサンがトリステスに転移して、転移門の魔法陣を消去して何の変哲もないただの地下室に戻っているらしい。
現在の所ルクス大神殿にもトリステス側にも異変が無いが、再度確認するためにミゲルがメルとともに転移スクロールを使って帝国に渡っている所である。
「だって、突然帰れなんて・・・」
「ですが、シャガルの国王のシンシア様に対する執着は他国でも有名ですし、今回の誘拐騒ぎもシャガル国王の指示だったと聞きました。もし転移門の存在がシャガル側に漏れていたらハイドランジアに紛れ込まれたかもしれないんです。閉めるのは決定してるのにシンシア様があっちに残ってしまったら意味がないでしょう? 下手すると今度は本当に拉致されるかもしれないんですよ!?」
「それは・・・ 分かっているつもりよ・・・」
シンシアは長い睫毛を伏せて大きな溜息を付いた。
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