27話 消えたシンシア王女 (改稿済)
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「え? 何でシンシア様居ないんですか!」
ミリアの声が、部屋に響く。
あの後すぐにミリアはルクス大神殿へと跳ぶと、神殿にいる大神官に今回の顛末を報告し、それと並行してミゲルはトリステス側の転移門に異常がない事を確認してこの部屋に戻ってきたのだ。
その間、たった5分程度。
紅の塔の貴賓室ヘ戻った所でシンシアが消えてしまったという報告を受け、慌てている所である。
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振り返りシンシアの姿が見えないことに気付いたグエンは、すぐさま部屋の中を隈なく改めてクローゼットの中で縄で拘束され、床に倒れている気を失った侍女を発見した。
彼女は未だに意識が戻らないらしく、医官に預けられたらしい。
「スマン。目を離した隙を狙われた。まさかドアの直ぐ側に俺がいたのに気が付かなかったとは・・・ 一生の不覚だ」
俯く皇帝陛下の口元でギリ、と歯ぎしりの音が響いた。
「陛下、我々もシンシアの側を離れてしまったのです。陛下だけの責任ではありません」
ミゲルがグエンを宥めるように声をかけた。
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皇帝陛下と聖王の謝罪合戦を他所にミリアとメルヘンは客室の床を這いつくばって、何か痕跡はないかと調べていた。
絨毯の上を四つん這いでウロウロする聖女・・・ こんな非常時で無ければ絶対にミゲルにからかわれているだろう・・・
「メルちゃん、魔法の痕跡、分かる?」
「はい。空間に歪んだ跡があるようです」
メルは微弱な魔力の痕跡や、普通程度の隠蔽魔法位なら見抜いてしまう魔眼の持ち主である。
「どうやら敵は、窓際で転移魔法を使ったようですね」
ピコピコと髭を不快そうに動かす白猫。
「今ココは吾輩のテリトリーです。吾輩に無断でこのような真似をするとは、許し難いですね」
白い三角形の耳がペタリと横に広がり、金色の目が赤く光った・・・
「不届き者には、お仕置きが必要ですね」
髭がキュッと上がった。
「ミリア殿、この程度ならまだ余裕で追いかけられます。不届き者を捕まえて王女殿下を保護しなければいけません。敵は恐らく3人程度です追いかけましょう」
メルの金色の眼が再び赤く怪しく光った。
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一方、攫われたシンシアは一瞬の出来事だったためか、呆然とした表情で周りを見回していた。
深い森の中なのか、窓から見える外には林立した針葉樹以外は見えないようである。
「あら? 一体全体此処は?」
優雅に右手の人差し指をその赤く艷やかな下唇にそっと置き、首を傾げる。
その様は、まるで女神が祝福を与えるために少しだけ考えるような甘美な時間を絵画にしたような美しさだ。
シンシアを攫って来た3人組は魔法使いのようで、黒いフード付きのマントでスッポリと身を隠しており、表情はわからないが、一瞬で転移させた者、メイドを気絶させる者、消音の魔法を使う者といった具合に役割分担していたので、かなり手慣れているように思える。
黒いフードの3人組が黙って佇む傍らで、のんびり部屋を観察するシンシア王女は、
『転移魔法を使って攫われたみたいねえ』
と思いつつ、ちょっぴり困り顔になって眉尻を下げた。
人よりワンテンポズレてるのも運動神経ゼロの為せる技かもしれない・・・




