26話 シャガル国王とシンシア王女②
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「陛下、頭を下げたりしないでくださいませ。今回の交換留学そのものがワタクシの我儘から始まった事ですのよ?」
「いや、貴女は国益になる可能性があるからこそ、この国にやってきたんだろう? それは我儘とは違う。王族として国を更に豊かにしたいという想いが基準になっているんだからな。其のために単身この国にやって来た、勇気のある王女様だよ」
ニヤリと口の端を引き揚げながら続けるグエン。
「帝国の情報網を侮ってもらっては困るな。貴女が魔石の研究に一生を捧げるつもりでいることも知ってるよ。だからこそ早めに本国に引き上げたほうがいいだろう。シャガルは女性蔑視の国だ。女性は全く自由のない奴隷扱いの国だからな。北大陸中の鼻摘みになっていても気が付かない愚かな王族が治める国だ。実際何をするか見当もつかん」
顔を顰めて続けるグエン
「もしあんな国に貴女が拐われそうになるとか、考えただけでも恐ろしい」
そう言いながらグエンの目に光が一瞬無くなったのを聖王ミゲルと大聖女ミリアンヌは見逃さなかった。
『『そんなことになったらシャガル王国が世界地図の上から一瞬で無くなりそうだな』』
この国って世界屈指の軍事国家じゃなかったっけ? と、2人の背筋に冷たい汗が流れたのは気の所為ではない。
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そういや承認式の時に見たシャガルの国王って、随分と恰幅が良かったような気がするなあ~ と指全部にデカい宝石の付いた指輪をジャラジャラつけたキンキラキンの服を着た某関取のような姿を呑気に思い出すミリアンヌ。
残念な子を見る目でそれを見ながら咳払いをするミゲル。
「グエン陛下、提案が」
首を傾げながら聖王の方を向く陛下。でも絶対シンシアの手を離さない・・・天晴。
「聖王殿、何か策があるのか?」
「策というか。1度ハイドランジアに帰還して帝国側のゴタゴタが終わったら、もう1度来れば良いだけでは?」
「あー。まあそうだな。確かにその方が安全だしな」
「転移門があるんですから直ぐに行き来出来ますからね・・・ え?」
と言いかけてピタリと止まったミリアンヌ。
「そうね。何時でもコチラには来ることができますものね」
そう言って微笑んだシンシアだったが、その一言でピキッと表情が凍りつく皇帝陛下以下2人。
「何時でも・・・ 転移」
「そうだ皇城の地下に転移門があったんだ」
「部屋に鍵は掛けてますよね?」
「ああ。それは大丈夫だ」
「メル! 転移門の確認をするぞ」
「私も行きます! 待ってメル! 陛下、シンシア様をお願いします」
なぜかシンシア以外が大騒ぎし始め、ミリアとミゲルが姿を消すと共に侍女は音もなくクローゼットへと移動して荷造りを始める。
「え? ええ?」
皆の動きについて行けないシンシア王女だけが首を傾げる。
皇帝陛下は握り込んだシンシアの手を持ち上げるとその手の甲に口付けを落とす。
「必ず又会いに行く。それまで忘れずに待っていて欲しい」
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真剣な目でシンシアを見つめるグレン陛下。
「陛下? 突然どうなさったのですか」
顔を薔薇色に染めて見上げるシンシア王女。
「恐らくだが、聖王に頼んで地下の転移門を封鎖する事になる。他国、特にシャガル王国にアレが見つかるのは不味いだろう。聖女殿達は門の確認をするために転移したんだ」
グエンは大きな溜息を吐き、シンシアは目を見開いたのである。
その時、ノックの音が客室に響いた。
「伝令です閣下」
廊下に立っていたのは、黒の塔専用の制服を着た兵士である。
「何事だ?」
「黒の塔に侵入した者の報告です!」
「身元は?」
「実は・・・」
兵士が言いにくそうに口籠るため、グエンはシンシアの手を離して廊下に出て、ドアを閉めた。
兵士が、小声で報告を続ける。
「実は、皇女陛下が黒の塔内の貴賓牢に接触した模様です」
「何だと? ロザリアはその後どうした?」
「殿下はそのまま皇城の私室に戻られたと報告を受けております」
兵士は敬礼をして校庭の返事を待つ。
「分かった」
顰めっ面でため息を付きながら
「御苦労、そのまま持ち場に戻り、通常業務に戻るように」
「ハッ!」
兵士は敬礼をすると足早に去っていった。
「ご対面しちまったか?」
首をひねりながら客室ヘ戻るグエン閣下。
「すまない、シンシア殿。色々と手違いがあったようで・・・」
そう言いながら愛しい人へ視線を向けようとして気がついた。
当然部屋で出迎えてくれるはずの黒髪の美女の姿が部屋から搔き消えていたのである・・・
どんまーい!
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