25話 シャガル国王とシンシア王女①
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皇城内の目処が着きつつある中、紅の離宮にグエンの姿があった。
「スマン! 今日は約束を守れんかもしれん!」
何故かシンシア王女の滞在中の客室で、元旦の神社の拝殿前で拝むようなグエン閣下。
「陛下、大丈夫ですわ。今日は夜会での会話を中心に書き出すだけで1日潰れてしまいそうなのです。ワタクシも出かけられないかも、と先程まで悩んでおりましたのよ。ですので丁度ようございましたわ」
ニコリと笑うシンシアを見つめながら溜息を1つ付くと、
「夜会の後始末が意外に難航しそうなんで、今日はコチラに居てもらったほうが安全かもしれん」
真面目くさった顔の皇帝陛下である。
「そうですの?」
首を傾げるシンシアに、うっとりとした視線を送リながらその手をそっと握り込むグエン。
壁際で侍女がひっそりと佇んでいる以外は誰もいないように見えるが、姿を消したミリアとミゲル、そしてメルもいるため12畳程の部屋の広さから考えると割と人口密度は多いし絶対に見られていると彼も知っていると思うのだが・・・ 結構なツワモノである。
「安全とは?」
「間者のうち何人かが、ハイドランジアの隣国のシャガル訛りを喋っていた。シャガルの王が貴女に求婚していたのは有名だろう?」
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シャガル王国はハイドランジアの隣国である。
実はハイドランジア王国はシャガル王国が主になって、昔から大勢の国民を略奪されてきた歴史がある。今だに奴隷制度のある国で魔法使い達を酷使していると噂される国であり、奴隷階級の魔法使いは皆ハイドランジア王国から攫われた者の血を引いているのは国際的にも有名な話である。
そのシャガル王国の国王から側妃にと望まれたのがシンシアであり、最速でフィリップ国王がその縁談を蹴ったのはこれまた有名な話だ。
それでもしつこく現在11歳の王子の嫁とか現在8歳になる国王の甥の嫁とか食い下がるシャガル王国にはハイドランジア王室も実の所うんざりしている・・・
まあ当然、全てフィリップ国王の一存でそんな与太話は蹴り飛ばしてはいるが。
何ならドロップキックをお見舞いしたいくらいであろう。
今回の夜会で生け捕りにした間者の中にそのシャガル王国から派遣されてきた可能性がある集団が混ざっていたためシンシアの元に独断で知らせに来たグエンである。
「聖女殿も聖王殿もいるんだろ? ちょっとだけ出てきてくれるか」
「「・・・・いいですよ」」
白いキャソックをお揃いで着た2人が、光とともに現れる。
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皇帝グエンは実に真面目な顔で眉根を寄せながら続けた。
「今回の交換留学の予定を早めに終了してハイドランジアに戻ったほうがいいかも知れん。ゲオルグをハイドランジア王国に留学させるつもりだったが状況が変化した。皇城の隠し通路の情報が漏れた事が分かったんでな。彼女の安全を保証できんのなら早急に本国に引き上げたほうがいいだろう」
「隠し通路の漏洩は不味いですね」
そう答えるミゲルに向かい
「彼女に対するシャガルの国王の執着は並大抵じゃねえ。拐かしてでも自分の手中に納める気満々だからな。今まではシンシア王女が国外に出てこなかったから手を出せなかっただけだ。この国に居ることがバレれば絶対に何か仕掛けて来る」
困った顔になるシンシアは一般的な女性より背の高い自分が思わず見上げてしまうくらいの高身長のグレンを見つめながら、
「何故そのようにお考えですの?」
と不思議そうな顔をする。
「このトリステスは情報も商材の国だ。各国の情勢はほぼ把握しているんだが、今回の夜会での間諜騒ぎはコチラの失態でもある。申し訳ない」
頭を下げる皇帝グエンを押し留めるシンシア王女。




