23話 走る皇帝陛下
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廊下を走るという行為は、はしたないとされるのが常ではあれども、有事の場合は黙認されるものである。
其れが例え高貴な身分の者であろうが、兵士であろうが関係はない。
今現在、皇城の中を走りまわっているのは何を隠そう、このトリステス帝国の最高位保持者(?)であるグエン皇帝陛下と閣僚達である。
そら、誰も叱れんわ。
「シャルム! この部屋の暖炉にある隠し扉を封鎖!」
「はい、陛下!」
声をかけられた宰相が次々と走りながらメモにペンを走らせながら並走している侍従に渡していく。
「次、こっちだ、客室!」
「はいぃ!」
メモを渡された侍従は直ぐに並走を止めて部屋のドア前に待機し、追い付いてきた兵士を指定場所に案内していく。そして監督官として法務大臣が立ち会う為に残る。
兵士達は指示された隠し扉の中へ魔石灯を抱えた者が先頭に立ち、続けて工具やら木材やらを抱えた兵士達がどんどん入って行く。
「スピード勝負だ。恐らく間諜共にバレた時点で相手国に筒抜けになる。自分ちの痛くない腹探られるなんざ割に合わん! 一気に塞げ!」
「「「「「了解ですっ!」」」」」
流石は戦場の最前線で生き抜いてきただけのことはあるとでも云えばいいのか、トリステスの皇帝陛下は元皇妃が隠し通路を使った事を知ると同時に間髪入れずに通路の封鎖に動いたのである。
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トリステスの皇帝の直系血族は全ての隠し通路を子供の頃から覚えるが、余りにも数が多いため嫁いで来る皇妃は一番覚えやすいものだけを教えられる。
故に皇妃専用隠し通路という名称で呼ばれるのだ。
「こういう事を想定していたわけじゃないだろうがなぁ。まあ不幸中の幸いかね」
苦笑いをしながら次の隠し扉のある城の地下へとマントを翻しながら走っていく皇帝陛下である。閣僚のオジサン達もヒイコラ言いながら陛下の後を追いかけて行く。
隠し通路を全て把握しているのは、皇帝陛下と皇太子、第2皇子と皇女の4人なのだが皇太子は不在、第2王子は黒の塔で取り調べ中、皇女は心許無い・・・となればグエン陛下が走るしかない訳である。
「ここで最後だ」
地下にある会議室に入るとドアの正面にある壁に向かって近付くと、腰の高さの辺りを蹴飛ばした。
すると壁の一部が崩れて隠し通路が現れた。
「ここに関しては、バレてねえと思うが。一回通ったら穴が開くからな。だが情報として知られちまった可能性がある以上塞ぐしかねえな」
「そうでしょうな」
追いついた兵士達が通路の中へと入っていく。
「中になんにも潜んで無いことを確認でき次第着工しろ!」
「「「「「「「了解!」」」」」」」
穴の中から元気な声が返ってくる。
「合計5箇所ですな」
シャルム宰相が顰めっ面になる。
「ああ。皇妃に教える隠し通路はこれで全部だ。他の所も改めて調べなおしたいとは思うがな。今は無理だろう」
「しかし、あの方は一体どういうおつもりなのでしょうな?」
「左様。余りにも我ら帝国を馬鹿にしておる」
「1度ならずも2度までも二つ心を抱くとは・・・・之を知ったらご実家が泣きましょうぞ」
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閣僚達も侍従や兵士達の手前があるため表立って名前を出すわけにもいかず、口元をわなわなと震わせて怒りを我慢している者も居る。
「まあ、理由はゲオルグが今取り調べてっから直に分かるだろうよ。今は通路の中に入ってった連中の報告待ちだ。それよか血圧上がるぞ。落ち着け」
気がつけば何時もの飄々とした陛下に戻っていた。流石である。
「殿下、旅行中の皇太子達に知らせますか?」
閣僚のオジサン達が困った顔で皇帝陛下の顔を見る。
「いや、良いだろう。折角の新婚旅行に無粋な真似もなぁ・・・ 今んとこ隠し通路の一部がバレただけだしな。一連の内容がハッキリしてからでいいだろう。不確定なものを教えた所で心配させるだけだ。それと何処が喧嘩売ってきたかって事次第だろうな・・・」
顎を触りながら目を細くする皇帝グエン。
「今日中に出来る事は、ほぼ終わったか?」
「そうですね、後は工事が終わり次第の確認作業と報告だけでしょうな」
宰相達が書類をペラペラ捲りながら確認する。
「よし。ちょっとだけ抜けるぞ」
「「「「は?」」」」
至極真当な顔で
「ちょっくら紅の離宮に行ってくる。後は頼んだな」
「「「「えー、陛下?」」」」
閣僚達が止める間もなく赤い絨毯を敷き詰めた廊下を風のように走っていく皇帝陛下。
「「「「陛下~!?」」」」
「おう、2時間位で帰って来るから心配すんな!」
遠くから怒鳴り声が返ってきた・・・
実に自由な陛下である。うん。
走るイケオジ
(≧▽≦)




