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引きこもり王女の恋もよう  作者: hazuki.mikado
episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡
20/97

20話 間諜の降る夜

本日もお読み頂きありがとうございます(_ _)


「うわぁ~ 又だよ。どうなってんだ?!」



 濃いグレーの軍服、トリステス帝国の一般的な兵士の為の制服を着た男性が頭を抱えながら叫んだ。



 夜会での様々な思惑を他所に、こちら皇城の離れにある黒の塔と呼ばれている場所である。


 客人を饗す為の離宮とは目的が違い、罪を犯したものを突っ込んどく場所。


 つまり監獄。


 地下2階から始まり最上階は5階迄あり下の階程罪が重いといった仕組みである。余談ではあるが、最上階の5階は貴族階級の犯罪者向けになっているらしい。



「うわ! また来やがった!」



 見廻りの兵士達や看守が見守る中、鍵のかかった鉄格子の向こうに銀色に輝く蓑虫のようにロープのようなモノがグルグル巻き付いて縛られた? 人間が勝手に増えていくのである・・・


 銀色の蓑虫状の連中はほぼ気を失っているようで全く声は出さないが、揃いも揃って『如何にも、間諜ですよ!』的に黒ずくめの衣装を着ている。


 中には貴族服を着ている者やドレス姿の者もいるので、看守も兵士も大混乱である。




「上に報告、誰か行ったか?」


「行ったぞ。ゲオルグ殿下は夜会の真っ最中だから班長クラスに伝令が走っていってる・・・!」


「うわぁ、また来たぞおい。どうするよこれ?」



 牢屋の中にどんどん山積みになっていく間諜達と、仕組みが分からないので慌てふためく兵士達・・・



 黒の塔から見える皇城の窓は美しく夜会から漏れる光が輝いていた。



××××××××××




「ご主人様。この会場にて目印を持たずに不法侵入しておりました他国の間者は、全て黒の塔に送りつけ終了しました」


「あ。スマンなメル。じゃあ、皇帝陛下に伝えとくわ。そのまま待機しといてくれ」



 ミゲルの足元に魔道具越しに見える白猫が恭しく礼をして、又後ろに下がる。



「ミゲルさま? メルちゃんどうしたんですか?」


「あ~、後で説明するわ」



 首を傾げる魔導師姿のミリア他所に、グエンの耳元に何かを伝えるミゲルである。


「おう、了解だ。御苦労さん」



 グエンが一言だけそう言うとミゲルも元の位置に戻る。


 ミリアが不思議そうに首を傾げているとグエン陛下が離れてハンカチを握っている大臣達に向かって手招をした。



「おい、お前達何やってんだ」



 呆れ顔の陛下である。



「「「「「いえ、感無量で」」」」」



 若干鼻が赤いオジサン達。




「感動してねーで、ダンスカード所持してない連中を黒の塔に纏めてあるらしいから見に行ってくれ」



 大臣達が顔を見合わせるとそのうちの2人が簡易の礼をするとスタコラ出口へ早足で去っていく。



「いつの間にそんな事やっとったんですか?」



 宰相が眉根を寄せるのを見ながら陛下がニヤニヤ笑って、



「ハイドランジアご一行様がやっといてくれた。貴族服を着てる奴らも居るらしいから、慎重に頼んだぞ」



 そう言いながら顎を擦った。



「陛下、何かございましたの?」



 上品に首を傾げるシンシア王女。



「ああ。この夜会の招待客は全員ダンスカードを身に着ける事になってるんだが、持ってない連中が紛れ込んでたってだけさ」


口の端を上げながら器用にウィンクをする皇帝グエン。



「ああ。なるほど。他国から余程慌てて()()()()()()()()()おいでになられたのですのね。その方々は」


「そういうことだ。カードを左手にリボンで結ぶようにするか胸ポケットに入れるかしねえと絶対に入場させねえからな」



「今までもそうでしたの?」


「いや、今回だけだな。貴女の安全のためにそうさせてもらった」



 そう言いながらエスコートしている左の肘に巻き付くシルクの手袋に包まれた王女の手を右手で包み込み、顔を覗き込む。




「ありがとうございます」



 赤い紅が蠱惑的な弧を描いた。



「貴女が世界中の国から欲されているのは知っていたが、此れほどとは思わなかったよ」



 溜息をつく皇帝を見上げながら



「ワタクシはハイドランジアから離れた事が今迄なかったので珍しいだけかもしれませんわよ?」


「そうかもしれんが。確かに貴女の祖国は他国に比べると間諜泣かせだよ。裏の情報は殆ど流れてこない。流れてくるのは正式に発表されたものか、流出を許されたものだけのような気がするね」


「国外への情報流出制限は一切されておりませんわよ?」



 首を傾げる黒髪の美女。



「ただし入出国に関しての制限は厳しいですわね。歴史が歴史ですので。国民を守るのが私共の責務ですから・・・」


「そうだったな」



 睫毛を伏せるハイドランジアの王女を見つめる瞳は甘い。


 そして周りのオジサン'Sはそれを見てまたもやハンカチで目を拭う。



「「「「陛下にやっと春が!」」」」



「だから、お前らちょっとだけ離れろよ・・・」



 皇帝陛下が肩を落として溜息を付いた。




仕事スルスル現場ネコ〜! ヨシ!

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