16話 馬車の中会話
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そんなわけで・・・
夜会当日である。
トリステス帝国の皇城は元々不夜城として近隣諸国には知られている。
南大陸では一番国力があるといわれている帝国はその領土の広さから、常に魔族の侵入や略奪が勃発していたため牽制の意味もあって夜でも灯りを落とさないのが慣習となっている。其のために警備の面も夜昼関係なく常に兵士達が巡回し、それに対応するように食堂や入浴といった施設も常に稼働している。
「すごいですね、トリステスは元々軍事国家って言う見方をする歴史書は確かにありましたけど、城壁内が1つの町みたいですね」
「そうなの。ワタクシも、初日に陛下に案内していただいた時はびっくりしたのですわ、夜も昼も関係なくどの施設も稼働しているのですもの」
休憩時間や仕事上がりに一杯ひっかけるための酒場迄常設しているらしい。
紅の離宮から馬車で会場である城迄運ばれながら、窓の外を眺め呆然とするミリア。
「魔族の襲来の備えて都民の生活拠点をここへ移動させても困らないようにしてあるのだそうよ」
「ふええ~・・・」
「まあ、最も今は魔族が西大陸に引っ込んじまったんで、城勤めの連中以外は利用することはないがな」
女性2人の向かい側の席に座る皇帝陛下が笑いながら口を挟む。
その隣で口を噤んで座るミゲル。
最も今は、ミハイルという名のハイドランジアの護衛騎士だが。
髪の色は鈍い薄茶で目は平民に多い茶色である。
ミリアはハイドランジアの王宮魔道士という体で参加する事になった。髪色は例のダークブロンドである。
✣
『聖女殿も聖王殿も、御苦労なこった』
ニヤニヤニヤ笑いながら2人を交互に見比べる皇帝陛下である。
因みに2人の正体は事前に帝国側には通達してある。ロザリア皇女には当然伏せてあるが。
「しかし不思議な服だな。暗い場所で薄っすら発光している」
皇帝グエン以外の3人の服はほんのり暗い馬車の中で星のように時折キラキラするのである。
「ええ。魔石を使い布を染色するとこうなるのですわ」
自分のドレスのスカート部分をそっと手で撫でるシンシア王女。
マーメイドラインのドレス上半身は薄い紅色をしておりアンダーバストの辺りから真紅になり裾に近づく程ボルドーへと変化していく一枚の布で仕立てられている。
スッキリとしたシンプルなドレスはホルターネックで肩と肩甲骨周りだけは露出させているが、その他は一切許さない様なきっちりとしたマーメイドスタイルで、其れが却って色っぽく見える。
白いシルクのオペラ・グローブも魔石を使い染色してあるのか同じように時折キラリと光る。
ミゲルは深い青の簡素な作りの騎士服を、ミリアは同じ色のエンパイアスタイルのドレスを着込み2人とも揃いの白いフードの付いた宮廷魔道士のマントを羽織っている。この2人は護衛役であり夜会の参加者ではないが着込んでいる服はシンシアと同じ素材の色違いである為同じように暗闇でも時折り輝く様だ。
「確かに夜会服にはいいかもしれんな」
✣
顎に手を置いて考える皇帝グエン。
「使い道は色々あるだろうが、量産が出来んのだろう?」
「ええ今の所は。それ故紡績を学びにトリステスに来たのです・・・ただ」
車内の3人の目が黒髪の美女に集中する。
「量産するのはハイドランジアには向かないかもしれないと、ワタクシ正直そう思い始めましたの」
「成程な」
ニヤリと笑う皇帝陛下に頷くシンシア王女。
護衛の二人は顔を見合わせ首をひねった。
それを見て口を開くのは皇帝グエンだ。
「この国は工業が盛んだが元を正せば魔族との戦いに明け暮れていたために工業が突出して発達したんだ。土地も広いしな。比べてハイドランジア王国は領土が狭いからこそ出来る自給自足が基本の魔法の国だ。俺達に言わすと御伽の国みたいなもんだ。南北両大陸を合わせて考えてもかなり特殊な国だろ? 根底から違いすぎる」
「そういうことですわ。ワタクシは工業化を推し進めるのはハイドランジアの良いところまで失うのではないかと危惧しているのです」
少しばかり気落ちしたようにもとれる表情をするシンシア王女に周りは押黙った。
「ですが、其れを学んだからこそ出来ることもあるはずですわ」
顔を上げてふんわり微笑む美女の目は輝いていた。
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