臆病勇者、魔王を黙らせる大軍を造る!
僕は臆病だ。外は魔物でいっぱい。魔王が悪さをしているらしい。噂で聴いた程度。僕には関係ないと思っていた。
「クロード。お前に魔王討伐の任を命ずる!」
……。
(!)
何だってぇええええ!?
ねぇ王様。いくら騎士爵の長男だからって、いきなり僕に相当重要な任務とか酷いよ!
まだ十六年しか生きてない僕に何が出来るのさ!?
「死んじゃう。嫌だ、絶対に領地からでないから!」
僕は領地で一番高い木に登ってわんわん泣いていた。そこに、一人の図体のでかい女の人が現れた。手には黄金の斧を持っている。ムキムキだ。
「おい、降りてこい。アタシも一緒に行ってやるよ」
その人は冒険者らしい。仲間になってくれるのは、彼女の領地が荒らされて困っているなか、僕が勇者として旅をしなきゃならなくなったことを知ったからだという。
(ひ、一人じゃなかったら、大丈夫……かな?)
木からするする降りて挨拶をする。
「や。やぁ、僕はクロード。君は?」
「モネ。力関係ではこっちの方が上だ。敬語は使わないよ」
「う、うん」
「待ってな。今仲間を呼んでくる」
集まったのは、五十人ほどの屈強な戦士たち。女性も男性もみんな強面だ。下手なことをしたら殺されそう……!
どうやら僕が臆病だということは領地の人全てに行き渡っているらしい。父上と母上が手紙で領地中の人に知らせているという。恥ずかしい。
でも、そのお陰か、領地の人たちはみんな僕に宿を貸してくれたり、そこら辺の魔物を一緒に討伐してくれたりしてくれた。
「仕方ないなぁ。ぼくらも戦うよ!」
しまいには、僕より剣術の長けた子どもも加わった。気づけばその数、数千人。魔王軍は団結した民衆にビックリしたみたい。「ありえねぇ」って言っておとなしくなった。
──そうして平和になった。同時に国王から勇者の称号も授かった。
(僕、なにもしてないのに)
あ、あれだよね。何事も団結すれば、一人くらい僕みたいなへなちょこがいても、悪に打ち勝てるってことだよね。
あれ、違う?
(まぁいっか!)
最近は剣術を習い始めた。モネとは時々手合わせしてもらっている。まだまだダメダメだけど、いつか勇者の名に恥じないような人物になるんだ!
助けてもらった民衆に頼られるくらいの強さがほしい。今はそう思う。
おしまい
読んでくれてありがとうございます!
改善点等ありましたら教えてくれると嬉しいです!