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追憶の転生  作者: チャラン
終章 テラを救う者たち
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第80話 魔王ルシフェル・悲しき最後の戦いその1

 アイリと、アンカーレストの留守を預かったシリルに見送られ、ハルたちはヘリオス島へ向かう。


「息子がでかいことをやろうとしてるのに、親父が何もしないわけにはいかないだろう」


 熟練の技で大船を操舵するバイロンは、ただ明るく笑っていた。テラに蔓延(はびこ)り始めている災厄の連鎖を断ち切るため、魔王となったルシフェルを倒さなければならない。その一役を担えるだけの力をつけたハルに、バイロンは父として精一杯なことをしてやりたい。そう考え、装甲が厚い大船を借り、最後の戦いに臨むハルたちを、自らの手で送っていた。そんな父バイロンに、ハルは計り知れない感謝を心深く思う。


 ルシフェルがいるであろうヘリオス島は、アンカーレストから比較的近い。2日の航海でたどり着く。そんなすぐ傍にいたということは、魔王にも師であるセトと、故郷を想う里心があったということだろう。カレンの力により、守護結界が全体に張られた大船はモンスターを寄せ付けず、正に聖船として順調に航行し、ヘリオス島へ無事接岸された。




 森林が広がる山を持つ大きな無人島、それがヘリオス島だが、ルシフェルをその中で探すのは容易であった。上陸した時から漂う尋常でない瘴気を、魔人のワンドに残る、ルシフェルの魔力に重ねて辿ると、穏やかな瞑想を続ける魔王の姿を、どこまで広がっているのか分からない、高台の岩場に認めることができた。その体からは、おびただしい瘴気が吹き出している。しかし、彼と戦いを始めるのに、ハルたちは大きな戸惑いを感じ、その場で立ち止まる。


 リスやシカ、クマすら懐くルシフェルの瞑想する姿は、まるで魔の力を持つ仏のようである。その現実感のない神秘性に、心を迷わされているハル、レイラ、ソフィアを手で制し、セトとカレンが前に進み出た。


「来られましたか、御師様。もう一度聞きます。御師様は、私が憎いのですか?」

「全く憎うはない。じゃが、間違っているのなら、それを正すのが師の務めじゃ。そのために来た」

「分かりました。残念です。相容れないなら力を使うしかありません。おや? あなたは?」


 ルシフェルは、周りで楽しそうに遊んでいた動物たちを逃がし、身を起こすと、静かな目でこちらを見つめるカレンに気づく。


「あなたから流れてくる力は……。私が物心つくかつかない頃、母から聞いた記憶が少しだけあります。とても強い女神が、ご先祖様と一緒にいたんだよと。そうですか、あなたが……」

「ルシフェル。あなたの一族と私の力は対でした。あなたがハルと、そのお父さんお母さん、レイラとソフィア、そしてこのテラを脅かす存在なら、私は戦わなければならない」


 一瞬だけ、魔王ルシフェルは悲しい目を見せた。だが、それはすぐ全ての力を解放できる喜びへと変わり、空間から、真黒き常闇のワンドを顕現させ、ヘリオス島全体を覆い、天をも穿つ瘴気のオーラをその体から発し始める!

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