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追憶の転生  作者: チャラン
第3章 カルタリア大陸・青い鳥を求めて(後編)
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第68話 王国を守る剣

 双方とも剣道の正眼に近い構えで静かな剣気を放っているが、嫌な冷や汗を顔に滲ませているのはレイラの方だ。先程見た、クライムランドを象徴する大岩壁のようにランスロットが大きく見え、


(こんなに強い人なの!? どこからかかれば!?)


 糸口も分からず、打ち掛かれない。微動だにせず、相手は構えているだけなのに、レイラの方も動けなくなっている。


 ふと、おおよそのことを悟れたのか、ランスロットは構えを少し緩め、一分の隙を作ってやった。その隙へ吸い込まれるように、


「ハッ!!」


 渾身の胴切りをレイラは打ち込む! それで勝負はついた。竹剣でいなすように彼女の打ち込みを払うと、ランスロットはこれ以上無い正確な返しの面を咎めるように打ち、バランスを崩したレイラはこらえることができず、倒れ込んでしまった。


「あ……ありがとうございました。全く手も足も出ませんでした」

「いや、そんなことはないよレイラさん。あなたには素晴らしい伸びしろがある。ただ、今まで我流で剣を身につけて来たのだろう。それを矯めて鍛えるのに少し時間が要る」


 圧倒的な惨敗に思えたが、立ち合った師範ランスロットが感じ得たところは、思いの外、見込みが大きかったらしい。


「ここで10日間、私と稽古をしなさい。今と見違えるくらい強くなる。そうした方がいい」


 非凡な剣才をレイラに見出し、ランスロットは彼女を鍛え直す、非常にありがたい申し出をしてくれた。師範自らこのようなことを、旅の剣士に言うなどありえないことで、先程の立ち合いを食い入るように見ていた周りの門人たちは驚き、ざわめいている。こんな好機はない。レイラはハルに許しをもらい、10日間、王立剣術練成場で稽古をつけてもらうことにした。




 全く企図しなかったことが起こった。しかし、ランスロットによるレイラの鍛錬が、ゆくゆくはハルたちの旅の行く末を大きく変えることになる。今のハル、レイラ、ソフィアがそれを知るわけはないのだが……。


「時間がたくさんできちゃったね~。わたし、お姉ちゃんがあんなに簡単に負けるの初めて見たよ」

「俺もさ。びっくりしたよ。レイラが負ける事自体、とても珍しいからな。しかも、負けたのに悔しそうじゃなかった。ランスロットさんの言うことも素直に聞いてたし」


 レイラの修行が済むまで10日間、クライムランドに留まることになったハルとソフィアは、先程の衝撃的な出来事を話しながら、情報集めのため、ギルドに向かっている。


(俺とソフィアは、サジさんのおかげで強くなれた。レイラも「このままだとマズい」そう考えてたのかもしれない)


 この王国を見守る、象徴の大岩壁を眺めながら歩き、ハルは恋人である、剣士レイラの心境に気づくことができたようだ。

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