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追憶の転生  作者: チャラン
第3章 カルタリア大陸・青い鳥を求めて(後編)
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第58話 ビギナーズラック

 偏屈者の大魔術師に取り付く島もなかったが、サジは、ふと何かを思い出したらしい。


「そうじゃった。今日の晩飯のネタを切らしとったわい。お前さん方、ちょっと狩りをする気はないか?」

「晩ごはんのおかずがいるっていうことね。分かりました。何を狩ればいいんですか?」


 決して好意的な態度を見せているとはいえないサジではある。だが、久しぶりに男女の若者3人を見て、少し思うことがあったのだろう、ハルたちにコミュニケーションを取るきっかけを与えた形だ。レイラは素直に頼みを聞くつもりで尋ねた。


「ここまで来る時、お前さん方、横手に森があるのを見てきたじゃろう? そこにクロオオジシという大きなイノシシの化け物がおる。1匹狩って来てくれ。肉にするからきれいに狩らんといかんぞ」

「クロオオジシですか、知ってます。クマくらい大きなイノシシですよね? 狩って持って帰ったら、色々話を聞いてくれますか?」

「ああ、よかろう。その肉で晩飯も食わせてやろう。うまいぞ」


 クロオオジシは、モンスターの一種である。しかしながら、腕がある者によって狩られることで、比較的、一般の食料市などにおいて出回ることが多い獣肉だ。味が非常に良く、栄養も多く、体に精をつける食材として珍重されている。それを晩のごちそうにしようという話だ。好意的に見えないだけで、サジはそんなにハルたちのことを面倒くさがっているわけでもないらしい。話の内容からそれが窺える。




 サジの隠宅がある大岸壁の丘を見つける途中、右手側の少し遠方に広葉樹と竹が混じる森が広がっていた。サジに狩りを頼まれた森がそれであり、身支度をして、小鳥のさえずりが聞こえてくる深緑の入り口まで来るのに、それほど時間はかかっていない。八菱商会でヤタロウから餞別をもらったあと、一晩ゆっくり休んでから大岸壁に向かったので、まだまだ時間に余裕がある。今がちょうど正午前くらいだ。


「うまい具合にクロオオジシを狩れたとしても、今日はサジさんの家に泊まらせてもらうようになるな」

「え~、あの家せまそうだよ? 私たち泊まれるかなあ?」

「魔法のキャビンがあるじゃない。こういう時のために使うんでしょ?」

「あっ、そっかそっか。さっすが、おねえちゃん!」


 森の浅い部分に入っただけで、もうクロオオジシを狩れた皮算用をハルたちはしているが、果たしてそんなにうまくいくものだろうか? 討伐と違って、狩りは糧を得るためのものであり、運に左右されることも多い。だが、ビギナーズラックだろうか、付近に生えている竹の地下茎を食べようと、一頭のクロオオジシが、のそのそとこちらに近づいてくる。

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