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追憶の転生  作者: チャラン
第2章 カルタリア大陸・青い鳥を求めて(前編)
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第42話 魔王となった神の子

 師であり、育ての親とも言えるセトは、魔法力を絶妙にコントロールし、誰にも扱えないはずの魔人のワンドで、楽しそうに遊ぶルシフェルを、少しだけ離れたところから見つつ、


(この子は本当に人の子じゃろうか?)


 あまりのことに無邪気な愛弟子へ、そんな疑いさえ向けている。どれくらいの年月を生きてきたかわからない魔人の老翁ですら、それは驚愕させられる光景だった。


「ルシフェル、面白いか」

「あっ!? 御師様!? 申し訳ありません!」


 少年のルシフェルは、歳相応になく礼儀正しい子であった。師への大変な非礼と思ったのだろう。すぐに謝ると、彼は魔人のワンドを急いで元の場所へ片付けようとする。


「いや、よい。お前がもし欲しいなら、そのワンドをやろう。ルシフェル」

「えっ!? ですが御師様、このワンドはとても大切になさっていたのでは?」

「いいんじゃ。代わりのワンドならある。お前がそれを扱えるなら、これから研鑽を積んでいきなさい。そういう時が来たのじゃろう」


 セトは何も咎めることなくルシフェルの手を軽く握って制し、その代わりに、彼へ思いがけない宝物を授けた。その時のルシフェルが浮かべた無垢な喜びの笑顔を、


「わしは忘れんじゃろうな……」


 と、懐かしさと寂しさをたたえた目でセトは思い、遠い日を振り返っている。




 不世出とも、あるいは神の子とも言えるだろうか、かつての愛弟子であったルシフェルと再会し、変わってしまった彼を正すため、先日、人知れずとてつもない戦いを繰り広げたことまでセトは語った。


「何があったかは知らんが……いや、あやつは底しれぬ力を身に付けすぎたんじゃろう。町を飲み込んでしまうような瘴気が、ルシフェルからプンプン漂っておったよ。わしの力でも、どうにもできんかった」

「セトおじいちゃんでも? 嘘でしょ?」


 目を丸くして驚きながら聞いているソフィアからの、自分への信用に自嘲気味な笑顔を浮かべ、老魔人は答える。


「はははっ、嘘でこんなこと言うもんか。全く手がつけられんかったよ。わしは聞いたよ、ルシフェル、お前は魔王にでもなったのかと。そのようなものになりましたと返してきおった。あやつも嘘をつく(たち)ではないしの、なったというならそうなんじゃろう」

「じゃあ、テラがおかしくなってきているのって……そういうことなの?」


 申し訳無さそうに白髪の頭をかき、


「そういうことじゃ。あやつに自覚はないかもしれんが、災厄の震源じゃろう。その災厄がどう広がっていくかもわからん」


 リアリストであるレイラの、真剣で切迫した問いかけにも答えを返した。

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