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追憶の転生  作者: チャラン
第1章 聖母の守護
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第4話 町は育ち、子も育つ

 貫禄や風格、そういったものは生まれつき人が持ち合わせている場合もあるが、多くはどれだけ自分と向き合って生きてきたかによるだろう。交易船ドックを仕切るバイロンもそうであり、今では近隣でその名を知らぬ者はいないほど、一目置かれる存在になっていた。


「よし! これで全部! 荷は積み終わったよ、父さん」

「おう! よくやった。今日は上りでいいぞ」


 父が成長すれば、子も大きくなる。順調に流れる年月は、ハルを頼もしい青少年へ成長させていた。彼は父バイロンの期待を受け、下働きをしながら、最近はもっぱらドックの仕事を覚えている。実の息子であろうが、バイロンは特別扱いしなかった。それを踏まえてもハルの物覚えは良く、期待に応えてくれている息子を見て、自然と父親として相貌を崩すことはしばしばある。


「日当だ。うまいもんでも食ってこい」

「やった! ありがとうございます、親方」


 ハルに仕事をさせる日は、相応の給金を払っている。仕事の内容にもよるが、日役として100セレネ銀貨を1枚渡すことが多い。これは悪くない額であり、アンカーレストの町で遊ぶのに、ハルは特に不自由を感じることはなかった。




 海上交易で個性様々な人が往来を行き交う。その雑踏の一人となり、仕事上がりのハルは機嫌よく歩いていた。昼下がりをやや回っており、西日の差し込みが眩しい。その傾きかけた陽光は、可愛らしさと美しさが混在している、大人になりかけの美少女を、シルエットとして映していた。


「あっ、ハルじゃない。今日は仕事だったの?」

「そうだよレイラ。いい仕事をして父さんから銀貨をもらったのさ。そうだ! あそこでコーヒーでも飲まないか?」

「いいわね、そうしましょ。ふふっ。でもデートすると、ソフィアがやきもち焼いちゃうかもね」


 幼馴染としての仲睦まじい縁は、美しい女になりかけているレイラと変わりなく続いている。ハルとレイラは互いに異性として好意を持ち、そういった付き合い事もあるのはご覧のとおりだ。しかしながらハルを同様に好いている、ソフィアという可愛らしい妹がよく割って入り、レイラは少し困り顔で苦笑することが多かった。




 賑やかに栄えていくアンカーレストで、ハルは幸せな青春を送れていた。しかし、世界には不穏な空気がこの頃から漂い始め、その淀んだ空気の流入は、この平和な交易都市においても避けられない。


 若者が集うカフェに、植え込みの明るい色の花びらがよく映える。だが、忍び寄る黒き魔は少しずつ、歩を伸ばし始めていた。

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