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追憶の転生  作者: チャラン
第2章 カルタリア大陸・青い鳥を求めて(前編)
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第26話 小手調べ

 南へ南へと、街道を違えずハルたちは進んでいる。旅人の往来は道中のそこかしこであるのだが、ここは町から離れた外である。ところどころで人と暫くすれ違わない時間があり、今が正にそうだった。


「何か狙ってきてるのがいるな」

「そうね。と言っても数匹かしら」


 冒険を始めたばかりにもかかわらず、ハルもレイラも危険を探る嗅覚を、すでに持ち合わせているようだ。彼らを獲物として狙い、近づいてくる牙は3匹。アンカーレストの防衛時、古代遺跡での掃討戦で、多く倒してきたウルフであった。いずれも腹を空かせているようで、ハルたちを見てよだれが止まらない。


「小手調べにはちょうど良さそうな相手だな」

「こいつらすばしっこいから、油断しちゃダメよ。ソフィア、あなたは後ろにいなさい」

「わかった。頑張ってね、お姉ちゃん、ハル兄ちゃん」


 態勢を十分整え、ハルとレイラは一瞬の虚を突き、空腹のウルフたちの先を取った。襲いかかる間もなく獲物と見なしていた相手から斬りかかられ、3匹のウルフのうち2匹は、レイラの大剣により瞬く間に斬り伏せられる! 残ったのは1匹だけだが、


「フレイムブロー!」


 ミスリルロッドから放たれた高熱の大炎を受け、恐慌を感じる時もなくウルフは焼かれ、土と砂が混じる野にその骸が転がった!


(戦女神が出てこなかった。俺たちの力なら、あれくらい大丈夫と見たんだろうか?)


 完全にハルたちだけの力による勝利だ。戦女神は指一本すら手を貸していない。ハルが推し量っている通り、この3人のパーティの力を、戦女神は完全に信頼したのだろう。


「ごめんね。でも、こっちに来ちゃったら、やっつけないといけなくなるのよ」


 まだ幼さが残る部分がありながら、ソフィアは周りをハッとさせる、悟った言葉を表すことがあった。そして彼女は、小さいナイフでウルフたちの尻尾をそれぞれ切り取り、3つの骸に鎮魂の祈りを捧げる。




 ウルフの撃退後、街道の往来がまた少し賑やかになり、それ以降の道中は何事もなく順調に歩をすすめることができた。そしてハルたちは、内陸の森に囲まれた町、ライムに到着する。朝、アンカーレストを出発して1日の中の時間が流れ、西日に木々の葉が映え、それらのさざめきが聞こえる鄙びた町は、日暮れを迎えようとしていた。


「ぎりぎりまだ時間があるかな。この町のギルドで話を聞いてみようか? ウルフの尻尾の換金もしたいし」

「一石二鳥でいいんじゃない。旅にはお金がいるわよね。行ってみましょ」


 竹を割ったような性格で決めるのが、レイラの長所の一つだ。ハルは何か困りごとがあったとき、幼い頃から彼女を頼みにして相談することが多かった。恋人としても理想的な関係と言えるかもしれない。だが、それを小さい頃から見ていて、多少ふてくされているのが、傍にいるソフィアである。姉のことは大好きなのだ。しかし、ソフィアも幼い頃から遊んでくれた優しいハルを、異性として好く年頃だ。

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