表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追憶の転生  作者: チャラン
第1章 聖母の守護
22/85

第22話 冒険の始まり

 故郷を離れ何かに挑戦する時、人は決意と希望を持つとともに、不安と寂しさも感じる。アンカーレストの大門の前に立つ、ハル()()は正にそういう心境であった。親としてその若者3人を見送る、バイロンやシリルなどは、旅の許可を出したとはいえ、笑顔の中に苦さがはっきりと表れている。


「困った男になったなあ、ハル君」

「すみません……シリルさん。レイラとソフィアもついてきてくれるとは考えていませんでした。本当にすみません」


 本当に好きな男を想う女というのは、こうしたものなのだろうか。シリル自慢の器量が素晴らしい娘たちは、2人とも、ハルの旅に同行すると言って聞かなかったらしい。彼のことをレイラもソフィアも好いているのは知っていたが、これほど離れたくない存在だったとは、父親としてシリルは見抜けていなかった。


「いいよ。それだけ君がいい男になったんだよ。あれこれ面倒をかけるかもしれないが、娘たちを頼んだよ」

「失礼ね! お父さん! 絶対に私たちの方が、ハルの面倒を見るようになるわ!」

「そうよ、お父さん。私たちがいないと、ハル兄ちゃん一人で、こんな旅できるわけないじゃない」

「レイラ、ソフィア。ありがとう。シリルさん、絶対に2人を守ります」


 ふくれっ面で父シリルに言い返していた美少女姉妹であるが、恋人であり想い人でもあるハルから「絶対に守る」という、身を賭した非常に心強い決意を聞き、2人とも頬を赤らめている。自分たちだけの騎士のように、彼を想えた。


「シリル、本当に申し訳ない。俺からも詫びさせてくれ。ハル、男に二言はない。絶対にレイラちゃんとソフィアちゃんを守り抜きなさい」

「はい! 父さん!」

「よし! 大門を開いてくれ!」


 バイロンが野太い大声で号令をかけると、機械仕掛けで太いロープが左右にある太鼓型の装置に巻き取られ、幾星霜も町を守ってきた大きな門が、ゆっくりと開いていった。一歩踏み出せば町の外、青い鳥と戦女神の謎を求める彼らの旅が始まることになる。


「ありがとう、父さん! みんな! じゃあ、行こう! レイラ! ソフィア!」

「ええ、行きましょう。私もハルを守ってあげるわ」

「お姉ちゃんだけじゃないよ~、私もだよ。どんな旅になるか楽しみだね」


 ハル、レイラ、それにソフィアは、互いに笑顔で確かめ合い、長い旅の第一歩を踏み出した。交易都市アンカーレストを出て見渡すカルタリアの地には、ハルたちが織り成す冒険を待っているかのように、明るい陽光がそそいでいる。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ