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追憶の転生  作者: チャラン
第1章 聖母の守護
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第17話 啓示としての夢

 賑やかな交易都市に入ってくる情報は、多種多様で量も多い。テラの各地で、魔物による不穏な動きが見られているのは、アンカーレストの皆にとって周知のことである。なので、いつもどおり変わらぬ笑顔で語り合う時でも、町の皆は心のどこかで幾ばくかの不安を感じていた。


「この青い鳥がいたのはカルタリア大陸の北になるが、出くわす魔物が強くてな。腕に覚えがある傭兵を雇って進んだんだが、骨が折れるなんてもんじゃなかったよ。前はここまで苦労しなかったんだがなあ」


 カルタリアというのはテラにある大陸の一つで、アンカーレストの町もこの大陸に含まれる。相当な危険を冒してまで、話をしてくれている交易商人が、青い鳥がいる地域を探索したのは、高く売れる染料や、薬の原料がそこで手に入るかららしい。そして更によく話を聞くと、ハルが見た夢に出てくるような深い森で、それらの高級原料が取れるという。


(これはもう偶然じゃない!)


 戦女神の夢は啓示でもあるのだ。確かにハルがそう考える通り、現実にあることと夢の内容が、ここまで偶然重なるのはありえない。傍で軽食をつまみながら一連の話を聞いていたレイラとソフィアも、正直なところ半信半疑だったハルの夢が、正夢になったのに大きな驚きを持ち、関心を寄せていた。




 気がかりな用事に一日休みを使い切った翌日は、疲労困憊しているものである。体力的に、ハルは幾分そう感じていた。しかし心の引っ掛かりは、昨日得た非常に有力な情報ですっかり解消し、この上なく晴れやかで、気力は上々である。


「親方。この結び方でいいですか?」

「おう! このロープの結び目ならバッチリだ! 今日はなかなかいいじゃないか!」

「へへっ、ありがとうございます」


 バイロンにも息子のハルの顔に、どことなく吹っ切れた表情を、仕事の合間合間で見い出せていた。


(昨日、よっぽどいいことがあったんだな。レイラちゃんとソフィアちゃんのおかげだな)


 ニヤリとした顔をわざとハルに見せる。しかしながら、父バイロンの勘ぐりはやや外れている。家族ぐるみの長い付き合いが続く、シリル家の美少女姉妹、彼女たちの協力が大きく働き、デートもちゃんとした昨日ではあるが、


(ハルは一人前になったら、どっちを嫁に貰うんだろうな。レイラちゃんもソフィアちゃんも、ハルにはもったいないくらいだが)


 バイロンは外れた勘ぐりのまま、そんな未来予想図まで勝手に浮かべ始めた。息子思いの父として、ハルのことを考えているからであり、その予想図自体は、外れたものにならないかもしれない。

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