第16話 瓢箪から駒
ガールフレンドを喜ばせるシャレた物を買うことは、ハルにとって滅多にない。そうなので、目の前に置かれた2つの髪飾りを見たレイラとソフィアは、アクセントとしてそれぞれに光る、赤と緑の小さな宝石の美しい輝きが、どういう意図の物であるか一瞬分からなかった。
「あげるよ、プレゼントだよ。赤の宝石のはレイラに、緑のはソフィア用に買ったんだ」
「えっ……本当にいいの? これ、けっこうしたんじゃない?」
「まあまあね。まあ値段は気にしないでよ。いつものお礼じゃないけど、あげたいんだ」
「ありがとう! ハル兄ちゃん! ずっと大切にするね」
「ありがとう。ふふっ、ハルがこういう物をくれると思わなかったから、ちょっと面食らっちゃった。とても嬉しいわ。早速つけてみるわね」
レイラの髪は緑であり、髪飾りの赤のアクセントがよく映え、彼女の美しさが際立っている。姉に倣い、銀髪のソフィアも嬉しそうに小さな髪飾りをつけてみた。美少女姉妹の可愛らしさが、何割か増しに見える。ハルのセンスはなかなか良い。
可憐な花が2輪風に優しく揺られていた。すっかり上機嫌になったレイラとソフィアは、ハルと目が合うたび笑顔である。
(思いっきって奮発してよかった)
500セレネ金貨をくれたシリルに感謝しつつ、プレゼントの大成功に手応えを感じ、ハルはカフェの席を立とうとしたが、幸運な偶然というものは続く時がある。
「……でな。見たことない青い鳥がいてな……」
(えっ! もしかして!)
隣席へハルたちと入れ替わりに座った、交易商人風の男たちが、なんと正に今、青い鳥の話を始めたではないか。ほとんど反射的に、
「すみません、その青い鳥の話を詳しく聞かせてくれませんか?」
と、ハルはずずっと身を乗り出して彼らに聞いてみた。
話は大当たりである。商人が話す中にも、ハルの夢に出てきた青い鳥の特徴が多く出ており、彼が描いた青い鳥の絵を見せると、
「間違いなくこの鳥だよ。へー、不思議なことがあるもんだな」
強い関心を持った商人たちは、太鼓判を押すような確証をハルに与えてくれた。夢と現実が繋がったのだ。
しかし、良い話もあれば、その裏には暗い影を落とす話もつきものである。紋章の青い鳥が実在することは確定といえるが、商人が詳しく続けてくれた話によると、追い求める鳥のいる場所までは多難で遠く、また、それに関連して、彼らが旅で感じたテラ全体を侵す何ものかの兆しも、熱が入った内容からハルたち3人に伝わった。
全てがうまくいくことは世の中にない。何かを成し遂げる時、その難度に比例する障害は越えていかなければならない。