第15話 雑踏の中の美少女
様々な都市の様々な人種が寄り付く港がある。度々述べているように、それがアンカーレストの町の特徴だ。その賑わしく雑多な往来を利用して、探しものなど情報を得ようとする者も少なくない。その中の一人として近頃のハルは雑踏に混じっていた。
「こういう鳥を見たことありませんか?」
「青い鳥なら色々見てきたが、うーん、こういうやつは見たことねえな」
レリーフとしてある紋章と、何度も見る戦女神の夢と相まって、ハルは青い鳥のことが気になってしょうがない。時間を見つけて交易商人など、世界各地で色々な珍しい物や風景を見てきたであろう人たちに聞き込んでいるが、雲をつかむように手がかりはなかった。
「今日もそれらしい話はなさそうね。これだけ色んな人に聞いてるのに」
「うーん、俺の絵が下手なわけじゃないんだけどなあ。間違いなくこの鳥なんだよ。紋章の鳥の形にも、同じ特徴があるだろう?」
「ふふっ、ハルは小さい頃から絵が上手かったし、疑ってるわけじゃないわ。確かに特徴が似てるしね。もうちょっと聞いてみましょ」
今日はレイラの手が空いていたようで、青い鳥探しを手伝ってもらっている。彼女だけでなくソフィアも今、可愛らしく愛嬌のある声で、雑踏のあちこちを回って粘っているが、やはり有用な情報は無く、少し疲れた様子でこちらに戻ってきた。
「疲れたよ~。ハル兄ちゃん~、あそこで休もうよ~」
かなり長い時間、頑張っていたのだろう。疲れのあまりその場にへたり込んで小さな手で指しているのは、ハルがレイラとよくデートに使うカフェである。ちょうど昼下がりのティータイムで、利用している客が多く見えた。
「よしよし、分かった。2人とも俺がおごるよ。今日は一日手伝ってくれてるしね」
「やったー! ありがとう、ハル兄ちゃん!」
「よかったね、ソフィア。ありがとう、ハル」
カフェの店内ではなく、屋外に設えてある席に座ると、程なくして店員が、コーヒーとカフェオレ、サンドイッチやクッキーなど、注文した飲み物と軽食を持ってきてくれた。疲れていたソフィアは、それらを見て「わー!」と歓声を上げ、目を輝かせている。三人とも体はまだ疲れているが、カフェでゆっくりくつろぎ、気力は十分回復してきた。
嬉しそうにクッキーを頬張るソフィアと、カフェオレを少しずつ飲み妹の様子を微笑みで見守るレイラ、二人の美少女の嬉しそうな顔を見て、両手に花のハルは幸せ者である。そして彼は、ハッと思い出したことがあり、上着のポケットから美少女姉妹にある物を差し出した。