第11話 父と娘の剣
多少の手傷を負う者もいたが、自警団の中の手練を集めただけはある。敵の数は多いものの、皆よく戦い、獰猛なウルフを斬り伏せていた。
(よし! 俺はサポートに徹しよう!)
戦況を見て、自分に直接の出番はないことを感じたハルは、討伐を早く有利に終わらせるため、補助魔法を唱える!
「アタック!」
微かに戦女神の腕が現れ、ハルの魔力を増幅させたように見える。赤く力強いその光りは前衛の仲間たちへ選択的に広がり、彼らの戦意は高揚した! 誰しも限界以上の力が漲っているようだ。戦況は大きく勝勢へ傾いている。後は一気呵成に攻めるだけだ。
「残ってるのはあの骨だけね! 私と父さんにまかせて!」
「大した相手ではないが、侮るなよ! レイラ!」
「わかってるわ!」
感情が希薄なスケルトン3匹は、圧倒的不利でも狼狽や怯えを見せない。得物をこちらに向け、見えているのかどうか疑わしいドクロの頭で様子を窺っているが、握っている錆びた剣は鈍くも輝かない。
「シッ!!」
「ハッ!!」
町を守るため研鑽を積んできた親子剣士のコンビネーションは、いとも簡単に2体のスケルトンを斬り飛ばした! 1体は胴から真っ二つにされ、もう1体は頭蓋骨を首からきれいに斬り落とされている。残るは1体。同族の仲間を失ったという意識も薄いのか、無感情に臆することなく向かってくる姿勢は、スケルトンながら勇敢とも言えた。
「まだ戦う気があるのは大したものね。すぐ成仏させてあげるわ!」
アタックで高揚しているレイラが負ける要素は無い。鈍い得物をスケルトンは振り下ろしたものの、いとも簡単にそれは弾き飛ばされ、そのまま間髪入れず、骨の体は両断された!
(終わったか。また戦女神に助けられたな)
今回の魔物掃討で、戦いの女神は右腕しか出現させなかった。ハルの心に語りかけることもない。しかしほの温かい守護は、彼の掌を通し、確かに感じ取られる。
ソフィアによる精霊の力を借り魔を封じる儀式で、古代遺跡の瘴気は消え去った。この世界では精霊崇拝が広く浸透しており、魔力が高く適性がある者が、その力を顕現させることもできる。封印の効力が弱まるまで、この遺跡に魔物が集まることはこれからない。
「終わったよ~。それで、探し物するんでしょ? 何があるかな~?」
「そうだな。遺跡とはいえ危険で、今まで探索されたことがないからな。みんな! 気をつけて探してくれ!」
『はい! お頭!』
アンカーレストが再び襲われないようにするのが主目的で、古代遺跡の探索は、魔物掃討の副産物だ。だが、ハルはここで、自分の運命を変える発見をすることになる。