第10話 古代遺跡での掃討
シリル率いる自警団と、危険を伴う魔物討伐に向かっているのだが、ハルはどことなく緊張感を持てず、調子が狂っていた。剣の強さを頼みにされた、レイラが討伐隊に加わっているのは当然なのだが、なぜか彼女の妹、ソフィアまでついて来ている。
「空気も美味しいし、いい天気だね~」
「あのなあ、ピクニックに来てるんじゃないんだぞ?」
超楽天家の彼女が同行している理由は、もちろんピクニック気分で楽しむためではなく、ちゃんとしたものがある。姉のレイラは剣の天才だが、ソフィアは回復魔法の才を非常に持つ。先日、悪魔の戦士たちを撃退した時も傷を負った自警団員などを、キュアヒールの魔法でよく治した。少女ながら、アンカーレストでは指折りの癒し手なのだ。
「あっ! 見て見て! 野ウサギがいるよ、かわいいな~」
「本当ね。ふふっ、ソフィアと一緒だと、討伐に来てるの忘れちゃうわ」
幾分、現実主義的なところがあるレイラにとって、ソフィアのいつでも明るいその性格は、大きな救いになることが多く、その面でも彼女は妹が大好きだった。
古く朽ちかけた石柱が数多く残っており、中には古代人が使っていたのであろう、ぼろぼろになったテーブルの残骸なども、辺りへ無造作に転がっている。魔物の気配が濃く、普段、誰も立ち寄ることなどない、危険な古代遺跡に辿り着いた。
「さてと、悪魔の戦士のような厄介なのはいないようだが」
「そうですね。だけど、かなりの魔物の数ですね」
瘴気に当てられた鋭い牙を持つウルフが2、30匹はうろついているだろうか。厄介なのはいないとシリルは言っているが比較的というわけで、与し易い魔物などいない。そしてウルフより戦い難い、多少の知性があり、武器を持つスケルトンも数体いる。敵の様子を窺うハルは緊張感を取り戻し、戦う構えができてきた。
「まあ、こちらも選りすぐりを揃えてきた。当たり前に戦えば勝てる。よし! 行くぞ!」
「町のために全部ぶった斬ってやるわ!」
「お姉ちゃんは相変わらずねえ」
大剣を抜き、シリルとレイラが先陣を切った! 先を駆ける我が大将とその娘に遅れを取るまいと、屈強な10数人の自警団員たちも、後に続き抜き身を構え走る!
「ソフィアはここで待つんだよ。戦うのがソフィアの仕事じゃないからね」
「うん、分かってる! 怪我したらすぐ治してあげるからね」
後衛の万が一があった時の切り札として、ハルは魔術師のロッドを持ち、魔物の群れの中へ走り始めた! 最前衛では、既にシリルとレイラが次々とウルフを斬り伏せており、不意を突かれた魔物たちは、怯えさえ起こしているものもいる。