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消えた姫様

遅れました!

文量は前回とほぼ同じです。

「う、ここは…?」


瞼を開けると、そこは先ほどまでの場所とはまるで違うだだっ広い平原だった。

冒険者ギルドに行けとは言われたけど、そもそも町はおろか村っぽいものすら辺りに見えない。

現地の人もいないし、どうしたものか。

今後のことに頭を悩ませていると、ふと視界の中央にプレゼントボックスのアイコンがピカピカと点滅しているのに気づいた。

アイコンに指で触ってみると、プレゼントボックスが開かれて中から二つの文字列が飛びだした。

一つは『():頭痛』、もう一つは『千里眼』と書かれていた。

転生特典はたしか、呪いと器用さとバフデバフだったからどっちかがバフデバフなんだろうが、もう一つは呪いの効果か?

すると『千里眼』の文字列がはじけ、千里眼の詳しい発動方法が頭の中に送られてきた。

なるほど、視界を飛ばすだけならそんなに難しいことじゃないらしい。

千里眼、と念じるか口に出した後、目を凝らせばいいみたいだ。

それじゃあさっそく、


千里眼…!


視界が一瞬で別の場所に移動する。

移動した視界の先には大きな壁があり、その壁に門のようなものがみえる。

もしかして町や都の入り口だったりするのか?

とりあえず当面の目標はあそこに行くことに決めた。

しかし、先は長そうだ…。







こちらの世界に来た時よりも辺りはだいぶ暗くなってきた頃。

俺は歩き始めて何時間が経ったのかわからないが、足が悲鳴を上げる一歩手前くらいにまでは歩く続けていた。

いや、全然遠いじゃん。

確かに千里眼っていうくらいだし相当遠いのはわかってたけど、最大距離まで飛ばしてないから、そんな遠くないだろーってたかをくくっていたら、まじですか。

もう日没ですよ。

千里眼で飛ばした距離で考えると、今でようやく半分きた感じか。

ほんとに先が長い…。

野宿しようにもここに来るまでにいろんなモンスターがいるのを遠目で見てしまったし。

あんなのがここらをうろついてるなんて知ったら、落ち着いて寝てもいられない。

どうしたものかと思案しながら、痛みを発する足に鞭打ってただひたすらに歩く。

誰かいないか、他に何か建造物は無いかと千里眼を使って周囲を見回す。

すると、壁の方角からは少しそれるが、馬車を何台か引き連れた団体のようなものを見つけた。

頼る当てが他にあるわけでもないし、あの一団に向けて進む方向を変える。

知らない人でも話を聞いてくれる優しい人だといいなー。

そもそも良く考えればここ日本じゃないよね、別の世界なわけだし。

言葉通じるのか不安になってきた。

最悪ジェスチャーで乗り切るしかない。

一抹の不安を抱えながら重い歩みを進める。







「モンスターが来ないようしっかり見張っておけよ。姫様に何かあったら私だけでなく、お前たちの首まで飛ぶからな」


「大丈夫ですよ隊長。なんせあの王国で一線級の冒険者たちがいるのですから」


「まあそうだが念には念を…、ん?おい、何かこちらに来てるぞ」


「すみませーん、夜分遅くに失礼します。旅をしている者なんですけど、近くに村か町ってありますか?」


暗闇から気の抜けるような穏やかな声とともに現れたのは、私が生きてきた中で見たことのない異質な衣服を身に纏った中肉中背の男だった。

一瞬モンスターかと思い身構えたが、話のできる人間だとわかり、矛を収めた。

それでも今の護衛対象のことを考えると警戒心を緩めることはできない。


「旅の者といっていたな、どこからきた?」


彼は少し考える素振りをして、


「東の方からきました」


「東の方…、"ヒノト"か?」


「そ、そうです」


「ずいぶん遠いところから来たな。馬車もないようだし、もしかして徒歩でここまで来たのか?」


「は、はい」


「そうか、大変だったろう。近くに町はあるかと聞いていたな、ここからだと我々が向かおうとしている"ミドル"が一番近い。あと半日もあれば余裕で着くだろうし、もし姫様の許可が下りれば同行することを許可しよう」


「そうなんですか、ありがとうございます!お願いします!」


男は軽く涙目になりながら感謝の意を伝えてきた。

正直姫様の許可が下りなければこの話はご破算になるのだから、そんなに喜ばないでほしい。

あの姫様は少々気分屋の節があるため、これは一種の賭けになる。

私がただの旅人にここまでする道理などないが、今はとても気分がいいためいつもより人に優しく接している。

部下からは普段とのギャップで若干引かれているが、今そんなことはどうでもいい。


「姫様。少々ご相談したいことがございます」


あの男、名はユウマというらしい、から少し離れたところに止まっているひと際豪華な馬車に我らの主たるお方、姫様は休まれておられる。


「なにかしらエル、わたくしは今すごく眠いのだけれど…」


「実は…旅の者が我々とミドルまで同行したいと申しておられるのですが…、いかがいたしましょうか?」


「旅人?まあ脅威がなければいいんじゃないかしら。あなたの判断に任せるわ。」


「承知致しました。」


なんとか条件付きの許可はもらえたが、脅威か…とりあえずステータスをみて、あとは人柄で判断するとしよう。







ふー、なんとか乗り切ったな。

なぜか日本語は通じたけど、俺の設定全く考えてなかったよ。

どこから来たかなんて聞かれたときはもう心臓バクバクだったよ。

とっさに東の方って出まかせ言ったけど、何とかごまかせてよかった…。


「君、我々の安全を確保するためにもまずステータスを見せてくれ」


ス、ステータス??なんだそれ?!

そんなのあるなんて女神は一言もいってなかったぞ!?

いや、なんかものすごくさらっと言ってたような気がするような…。

もしかしてさらりと流したあれなのか…?

くっそ、もっと粘って聞いとけば良かった…。

あの時の自分の行動を悔やんでも悔やみきれない。

それ以上にあの女神マジで仕事しろや、とやり場のない怒りがふつふつと湧き上がってくる。


「あ、あのー、ステータスってどうやってみるんでしょうか?」


「え?もしかして冒険者カードを持っていないのか?」


「えーと、はい」


「ふむ、まあ旅人だしそういうことと運よく縁がなかったのか…?」


「あの…冒険者カード以外でステータスを見る方法ってないんですか?」


「あるにはあるが、冒険者カードを作った方が遥かに手っ取り早い」


いきなりステータス見せろってことは、大方俺が怪しいやつかどうかを確かめようとしているのだろう。

だが、そのステータスを見せることができないんじゃ俺が怪しくないことを証明する術がないな…。


「悪いがそうなると我々の馬車から少し離れたところで野宿してほしい」


「大丈夫です。道案内していただけるだけでもありがたいので」


若干の申し訳なさそうな顔をして彼女は去っていった。

現地の情報を知ってそうな人と知り合いになって事と、これから行くところの名前がミドルだと知れただけでも収穫だ。そう思おう。

危険を避けるため、なるべくモンスターに見つからないように背の高い草むらで寝ることにする。

一応辺りにモンスターがいないか千里眼も駆使して確認してから就寝する。

あ、明日筋肉痛にならないようにストレッチしたほうがいいか?、と考えたところで意識を手放した。




早朝、辺りの喧騒の音で目を覚ました。

まだ日が完全に出ていないため辺りは若干暗い。

なにやら馬車の一団が騒いでいるようだった。

寝惚け眼をこすりながら立ち上がり、軽く伸びをしてから服についていた土を払う。


「おい君!姫様を見なかったか!」


昨日見知らぬ俺に対して真摯に対応してくれた、隊長格っぽい女性が慌てた様子で話しかけてきた。


「いえ、見ていないですけど…。なにかあったんですか?」


「それが…姫様が忽然と消えてしまったのだ!」


「え?」


寝起きだったこともあり、あまりにも間抜けな声が出てしまった。


「見張りもいたし、消える寸前まで護衛と一緒にいたはずなのにだ!」


その姫様とやらがとても大事なんだなと思えるくらい隊長さんは熱くなっていた。

さっきまで寝ていた俺は何にも役に立てそうにないなと思いながら。


「すまん、熱くなりすぎた。とにかく、何か気づいたことがあったらなんでもいい、知らせてくれ」


そういって、未だ喧騒が収まる気配を見せぬ一団へと戻っていった。

今の俺には遠くの景色見るくらいしか取り柄がないんですよ。

しかもその千里眼もおそらくもう使えないと思います。

すみませんね。

すると、昨日と同じように視界中央にアイコンが出現した。

触ってみると、中から『()()』という文字列が飛び出してきた。

頭の中に説明が流れ込んでくる。

なんか呪いとか変身とかを見破れるみたいだ

しかも何もしなくても自動で常に発動しているらしい。

やり方はわかったが、あんまり使う場面無いんじゃ…。

一応の試運転ということで、看破を使用しながら回りを見てみる…と、真横に泣いている少女がいることに気づいた。

真後ろから急に不意打ちで驚かされたかのように肩をビクッとさせ、一歩後ずさる。

少女をよく見てみると、一団の中で見た人たちとは違い、ひと際豪華でフリフリなドレスを着ていた。


もしかして…あの人たちが探している姫様ってこの人?


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