襲撃2
連合国、西側。
緑豊かな街並みが特徴の、平和な地区。
そこにはすでに機神兵が侵入し、町を次々に破壊していた。
壊し方は各個様々、内蔵されている武器を使ったり、体が爆薬で埋め尽くされたモノはそのまま突っ込んだり。
住民はすでに避難し、安全な所に逃げている。
今頃、安全な場所で籠城している頃だろう。
だが、こういう集団が動く時、大抵一人や二人は逃げ遅れてしまうものだ。
(やばい・・・・・・・・やばい・・・・・・・あああ・・・・・・)
黒鞘聖刃もその一人、彼女は今、まだ破壊されていない民家の裏に隠れていた。
隠れている理由は言うまでもない、鉄の体を持つ襲撃者が突然連合国を襲ったからだ。
荒い息を押し殺し、その場にしゃがみ込む。
頭の中がおかしくなる。
自分がどうやって死ぬか、そんな少し先の未来予想ばかりが頭を巡り、少しでも気を抜けば、叫び出しそうになる。
ああ怖い、怖すぎる。
頭を抱え震える黒鞘、しかし現実は無情で残酷だ。
ぐちゃぐちゃの思考をまとめようとする頭の中に、右耳から妙な音が聞こえてきた。
がしゃん、がしゃん。
ききぃ、ききぃ。
始めは、空耳だと思いたかった。
少しずつ大きくなる音も、自分の頭が混乱しているからだと言い聞かせる。
でも音は鳴りやむことは無く、大きくなればなるほど地面から振動も伝わってきた。
鳴り響く音の中で、目を閉じる。
これは、夢だ。
きっとそうだ、そうに違いない。
次に目を開ければ、きっと自分の部屋の天井が見えるだろう。
そう考えていると、急に音は鳴り止んだ。
あれほど心を抉っていた地面の振動も消え失せた。
ああ、これはやっぱり夢だったんだ。
全身の緊張が解けるように消え、気持ちが楽になる。
ゆっくりと目を開ける。
もう朝だ、早く起きないと。
そして。
目の前にいたのは、朝日でも天井でもない、機神兵だった。
ぼんやりとした思考の中、理解できるものがあった。
自らの死。
それが目の前にあることを。
ただただ座り込むことしかできない黒鞘は、無言のまま涙を流した。
どうしようもない、こんな大きなのに勝てるはずがない。
絶対車一台分ぐらいの重さあるだろ、何だよその腕に付けた銃、馬鹿なの?。
ああ、これで終わりか。
機神兵は聖刃の細い腰をつかみ、ゆっくりと持ち上げた。
そして機関銃の銃口を眉間に向ける。
「・・・・・あぁ・・・・・・・・・・・・」
黒鞘が何かを察し、目を閉じた。
そして、次の瞬間には全部終わっていた。