会議②
「ああ」
アルタイルは短くそう返事をすると、その場で立ち上がった。
「まずは俺の正体から、22枚あるタロットカードの内、最強と言われている「愚者」、それが俺だ」
「はっ、自分で自分を最強?笑わせるなよ」
グラハッドの煽りは無視して続ける、こんなやつ、相手にしてても意味が無い。
「俺たち22枚は互いに殺し合い力を奪い合い、そして残った一体が、ある存在を打ち倒す、この殺し合いをタロットゲームと俺たちは呼んでいる」
「その、ある存在っていうのが八罪悪っていう物なの?」
シンリの問いにアルタイルは頷く。
「前例もある、俺は過去に八罪悪の一つ、「怠惰」ノアと戦った、その結果、一つの国が滅んだよ」
「‥‥‥もしかしてそれ、インド大洪水のこと?」
アルタイルは再び頷く、シンリの顔が曇り、グラハッドは憤慨した。
「そんなバカなことがあってたまるか!インド大洪水はただの偶然、大体その「八罪悪」とやらがそれ程の力を持っているのならば、この連合国も……」
「話は最後まで聞け」
アルタイルの睨み、さざ波さえ無い湖面のような冷静さに、グラハッドは思わず席に座り直した。
「国が滅んだ後、力を消耗したところで「怠惰」は倒した、それと同時に俺は眠りについた」
でもな、そう言ってアルタイルは自分を指差した。
「そんな俺が再びここにいるってことは、分かるな?」
会議室が静まり返る、半信半疑で聞いていた中年とグラハッドの表情は、とても暗かった。




