村の騎士 ヤッコフ
俺はヤッコフ。普段からあまり話さない。いろいろ考えてはいるんだが上手く伝えられる気がしなくてな。
それに、考え込んでしまって答えるまでに時間がかかる。
無愛想な俺が黙り込んでいると相手は気まずくなるらしい。そして無口なんだねと言われ会話が終わる。つまり、俺は一言も発せずに大抵の会話が終わるのだ。
この村に派遣された当初は無愛想で無口な怖い騎士と言われていたらしい。後から聞いて俺の顔はそんなに怖いだろうかとショックを受けた。
ケインやジンがただの口下手だとみんなに説明してくれて誤解はとけ、今では村の人たちとは一言二言くらいなら会話ができる。
ユーグは人の話を聞くのが上手い。俺の考えがまとまって話始めるまでニコニコしたまま待ってくれる。
食堂で俺が長々と話しているのを目にした他の村人は驚きに目を見開いて固まっていたらしい。話すのが楽しくて周りを見ていなかったから、全く気付かなかった。
ケインやジンと森に迷子の捜索に行くと、二人が話して俺は聞き役だ。探し人のエレーナは毎度薬草抱えてキョロキョロしている。俺たちを視界に捉えると安心した顔で笑って駆けてくる。
二人にお小言を言われながら、今日はどんな薬草が採れたと話してくれる。食用になる物、傷に効くもの、熱に効くもの等特徴やどんな場所で採れるのかを説明するもんだから、俺たちは随分薬草に詳しくなった気がする。
エレーナは説明が終わると俺たちに薬草の質問をする。それも、きちんと最初から最後まで話を聞いていないと答えられないような難しい質問を。
二人は「そんな話出たか?」と毎度首を傾げているが、俺が答えると「あー、言ってた言ってた」と調子の良い事を言い、「すげぇな」と褒めてくれるのが嬉しくて森に来るのが楽しみになった。
きっとエレーナは俺が話を聞いている事を分かっていて、俺が会話に混ざれるように質問の形にしてくれたんだと思う。答えが明確なら余計な事を考える必要がない分話しやすい。
俺たちがわいわいと騒いでいるのを微笑んで見ているのだから、ユーグといい、エレーナといい、良い人達だと思う。
レンが産まれてからは、俺たちが森に探しに行くことは無くなった。
ただ、レンは俺たちにとても懐いてくれている。
俺は昔から無愛想で子供には怖がられていたが、レンはそんな事はなく、エレーナが薬師のところにいる間遊びに来る。
森で何をみた、どんなものがあった、と目をキラキラさせて話す様子がとても可愛いと思う。
なにより、俺が話そうと何か考えると、レンはピタリと話すのをやめて、にっこり笑って俺をじっと見ている。俺が口を開くまで待っているのだ。
子供がそんな事出来るとは思わなくて最初はユーグ達に何か言われているのだろうと思っていた。だか、そうではなくてレン自身の性格のようだった。さすがあの二人の息子だ。
それに気づいてからは、余計にレンが可愛く感じた。
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