村の騎士 ジン
俺はジン。この村の騎士だ。リーダー格のケインとはこの村に派遣される前からの付き合いだ。所謂腐れ縁みたいなもんだな。
ユーグらがこの村に来て、食堂が開かれた。
あいつらが来る少し前にこの村唯一の食堂をやってた爺さんが、歳を理由に辞めちまってた。俺たちは昼間に駄弁りながら飯食う場所がなくて困ってたから、ユーグが飯屋をやるつもりだって言った時には大賛成したさ。
奥さんのエレーナはちょくちょく迷子になるが、良い薬草を採ってくる名人らしい。村の薬師の婆さんがいい眼をしてると褒めてた。
村の周辺の見回りがてら、森で迷子になってるエレーナを回収するのが騎士の仕事の一つに定着した頃、森からの帰りにエレーナが産気付いた。
直ぐにエレーナを抱えて家に運んで、ユーグと婆さんを呼びに走った。
婆さんだけがエレーナと寝室に入り、俺たちは部屋の外でオロオロしながら待った。エレーナの苦しそうな呻き声が聞こえてユーグが顔面蒼白になっているのを「大丈夫だ」と何度も宥めた。
暫くすると、元気な泣き声が聞こえて来た。少しして婆さんが出てきて
「安産でいがったなぁ。元気な男の子じゃ。エレーナもよぉ頑張っちょった。早よぉ顔見せにいき!」
そう言って笑いながら帰った。
ユーグが急いで寝室に入って行ったのを確認して、俺はお暇した。馬に蹴られたくないからな。
そうして産まれたのがレンだ。
暫くはエレーナがレンに付きっきりになって森に行くことも無くなった。ただ、婆さんに頼まれた時はユーグにレンを任せて森に行ってた。その時ユーグがレンを背負って食堂に立ってるのを見て笑っちまった。
子がデカくなるのは早いもんだよな。
エレーナが薬草採りにレンを連れて行くようになったのは、確かレンが2歳くらいの時だったか。
いつもみたいに俺たちがエレーナの回収に森に行こうとしたら、ちびっちゃいレンに手を引かれて森から出てくるエレーナが居た。
最初は驚いて偶々だろうと思っていたら、毎回必ずレンが手を引いて戻って来た。
なんでもエレーナが違う方向に進もうとするとレンが引っ張って止めるんだとか。それでレンに連れられて進むと普通に森から出れるようになったと言われて、方向音痴がレンに遺伝しなくて良かったと思ったよ。
レンが俺たちの事を「おじさん」と慕ってくれるのは嬉しいが、最近は森に迷子の捜索に行かなくて済んで、楽にはなったが少し寂しい気もしてた。
お読みいただきありがとうございます。
感想、評価お願いします。
今後の参考とさせていただきます!
よろしくお願いします