村の騎士 ケイン
外伝にいたしました!
俺はケイン。この村に騎士として領主から派遣されて数年が経つ。派遣されている騎士の中では古参で、リーダーのような立ち位置に着いている。
ここの村人は基本的に自給自足の生活をしている穏やかな性格の人達が多く、仕事はそんなにない。
村の周辺の見回り、定期的な報告書の提出くらいだ。
だからそれ以外は村の手伝いばかりだ。
ある時、こんな村に若い夫婦が引っ越してきた。
平和な村だが都会からしたら辺鄙であることに変わりはなく、この村出身でもないらしいのになんで都会から越してきたのか不思議だった。都会で何か嫌なことでもあったのかね。
若い夫婦は旦那がユーグ、奥さんがエレーナというらしい。
俺はあまり気にしていなかったんだが、他の騎士たちが夫婦揃って顔立ちが整ってると話しているのを聞いていた。
その二人が来て数日経った頃、村の中でエレーナさんが薬草を採りに森に行って帰って来ないと騒ぎになった。
旦那曰く、妻は何処でも必ず迷子になる極度の方向音痴なんだとか。
それが分かっているなら目を離すなと怒鳴りそうになったが、旦那が村長とこれから仕事をどうするか相談している時に居なくなったらしく、怒鳴ることもできん。
とりあえず日が高いうちに俺達と旦那で手分けして森を探すことになった。
道中何故引っ越して来たのか話題になった。
どうもエレーナさんは妊娠しているらしい。そして産むなら空気の綺麗なところでのびのびと育てたい!と可愛く我儘を言われたんだとか。
どんな惚気だ、と呆れながら妊婦をいつまでも迷子にさせてはおけんと多少色めき立った。
すると少し道の外れに、淡い茶系の綺麗な髪を靡かせて植物の葉を観察している女性を見つけた。
旦那が名を呼んでいる。
その女性が驚いたようにこちらを振り向いた。
他の騎士達が話していた通り、とても綺麗な顔立ちをしていた。質素なワンピースを着ているはずなのに品があるような感じがして、俺は声をかけるのを少し躊躇った。
旦那が駆け寄って叱っているようだ。
妊婦が夫に何も言わずに森に入っていったのだから、さもありなん。
騎士達で取り成して村への帰路に着く。
エレーナさんは綺麗なだけでなく気の利く良い女性だった。俺達が粗野な話し方をしても動じることもなく、適度に質問をしてくれたり話が途切れることがなかった。
それが苦になることもなく、お互いに打ち解け、名前で呼び合うことに決まった。ただ、二人は歳上にさん付けされるのはむず痒いと言うので呼び捨てになった。
エレーナが話せばユーグが補足して、ユーグが話すとエレーナが補足する。息の合った良い夫婦だと思った。
そしてユーグは村で唯一の食堂を開くことになり、エレーナは薬草を薬師に卸すつもりだと聞いた。
そして村の見回りと、簡単な報告書の提出だけだった仕事に、数日おきに迷子になるエレーナの捜索が加わる事になった。
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