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12話 35歳おっさん、帝都に着く


前回、サブタイが間違えておりました。申し訳ございません。

 小さな丘を登り切ると、俺たちは思わず足を止めた。


「あれが帝都……とっても、大きな街ですね。私の村の何倍でしょう……」


 レイナは目の前に現れた巨大な街を見て、口をぽかんとさせていた。


 驚くのも無理はない。


 あれは帝都メディラン。大陸で一番大きな都市といわれ、その人口は百万を超えるという。市街には、高さを競うように塔や鐘楼が林立していた。


「あと少しだな。着いたら、まずはギルドへ行こう。そこでまず、レイナは冒険者登録しないとな」

「はい!」


 俺たちは再び、帝都へ向け街道を歩き始めた。


 すると、レイナが俺に訊ねる。


「アトス様。とても初歩的な質問で恐縮なのですが、登録には何が必要なのでしょうか?」

「簡単な試験があるのと、魔物を倒した証拠として、魔物の遺体の一部をギルドに出す必要がある。まあ、シャドーイーグルの羽もあるから、レイナは試験だけだな」

「具体的に試験の内容などは?」

「何か得意なものを申告して、それをギルドに試験してもらう感じだ。レイナなら、剣がいいのかな。他に何か使えれば申告すればいい」

「なるほど……わかりました」

「なに、もともとレイナの剣の腕は、他の冒険者よりも優れている。試験は簡単さ」


 俺は緊張した様子のレイナにそういってあげた。


 そう、試験は簡単……そのはずだった。


 サイクロプスでも通れそうな巨大な門をくぐり、人でごった返す大通りを抜け、俺たちは帝都のギルドへと到着する。


 白壁の重厚な建物に入ると、そこは神殿のように天井が高く、広大な空間だった。今までのギルドとは、比べものにならないほどに大きい。


 その大きさに圧倒されながらも、俺は受付嬢に声をかけようとカウンターへ向かおうとした。


 が、後ろから突如声が響く。


「おお、なんたる美しさっ! 新人さんかい!?」

「え? あ、は、はい!」


 振り返ると、レイナが長い金髪の男に声をかけられていた。年は俺と同じ、三十代ぐらいの男だ。金色の重厚な鎧を身に着けている。


「僕はイルジェ・ファン・エーベルリット! 名誉ある帝国貴族エーベルリット伯爵家の三男さ!」

「あ、え、えっと、レイナです……」

「レイナ! ああ、なんと甘美な響き! レイナ、よろしければ私が冒険者としてのいろはを! ……うん、そこの男は?」


 イルジェは俺の存在に気が付いたらしい。


「アトスだ。王国で冒険者をやっていた」


 俺が答えると、イルジェは人を軽蔑するような視線を向けた。


「ふーん、王国のねえ……しっかし、なんとも寂しい装備だ。見たところ僕と年は変わらないみたいだが、なんともみすぼらしいな」


 その言葉に、レイナはむっとした顔を見せた。


 俺はそんなレイナの手を引く。こんなやつと言い争っても仕方がない。


「それはどうも。レイナ、登録を済ませよう」

「は、はい!」


 しかし、イルジェはレイナの方に手をかけた。


「ちょ、まてよ!! そんな冴えない男と一緒にいても、ずっと貧乏なままだぞ!」

「構いません。私は、アトスさまをお慕いして一緒にいるのですから。お金や剣のためだけに、一緒にいるのではありません。立派な冒険者になりたいのです」


 レイナははっきりと答えると、イルジェの手を振りほどく。


 立派な冒険者か……そんなふうに言われたのは初めてだな。


「ふんっ……見てくれはいいが、おつむは残念だな。まあ、ここで僕に逆らうとどうなるか……って聞けよ!!」


 俺たちは後ろで騒ぐイルジェを無視し、受付へと向かった。


「失礼。俺は王国で冒険者をやっていた者だ。こっちの子は新しく冒険者登録をしたい」


 冒険者バッジを見せると、受付嬢は答える。


「そうですか。それでしたら、二人とも新たに冒険者登録試験を受けていただくことになります」

「うん? 俺もか?」

「はい。つい一週間前、王国と帝国で交わされていた冒険者協定が破棄になったので」


 冒険者協定とは国が締結する条約で、互いに相手国の冒険者を、自国の冒険者としても認めるものだ。


 王国と帝国はこれを結んでいたはずなのだが、最近それが破棄されたと。


「またそれに合わせて冒険者認定試験も改定され、集団での試験となりました。一番すぐの試験は……今日の昼ですね。もう少しで始まりますから、ここで書類を書いてから、地図の場所に向かってください」


 受付嬢はぱぱっと書類を出すと、俺たちは言われた通りに記入していく。名前、年齢、生まれ、得意なことなど。


 それを提出すると、受付嬢は地図を手渡してきて。どうやら試験会場らしい。


 すると、すぐ俺の後ろから声がかかる。


「ほう、会場は……ふふっ、楽しみにしてるよ」


 振り返ると、にやにやとした顔のイルジェが。なんだかとても愉快そうだ。


「せいぜい、頑張れよ……ぶふぉっ!?」


 イルジェは背を向け、外に出ようとしたが、すぐ後ろにいたリヴィルにドンとぶつかり、尻をついてしまう。


 その光景に、周囲から小さな笑いが漏れた。


「お、お前! 人のすぐ後ろにくるなんて、どんな神経してるんだ!! 危ないぞ!!」


 いや、それはこっちのセリフだ……勝手に人の話を盗み聞きし、書類まで見てしまうのだから。


 イルジェがリヴィルに詰め寄ると、受付嬢がいった。


「イルジェさん……もう行かないと、間に合いませんよ」

「え? あ、ああ、そうだ、時間が! 覚えておけよ、無礼な新人ども!」


 そういって、イルジェはそそくさとギルドの外へ出ていくのであった。

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